《最弱の村人である僕のステータスに裏の項目が存在した件。》第6話 村へと

ぽんっ。

肩を叩かれる。

後ろを振り向くとそこには覚悟を決めたと思われるセリアさんの姿が。

ガリガリとまた地面に何か書き始めた。

『ありがとう……ここまでしてくれただけで十分……でもこれ以上は巻き込めない、こいつらの目的は私よ。だから』

「ん? ああ、大丈夫だよこのくらいなら」

セリアさんが慌てて地面に何かを書く。

いや、敵の目の前でこんなやりとりしてるのって結構危険なんだけどな……

というかゴブリンたちもよく待ってくれてるよね。

……違うな。これは警戒してるのかな?

確かに僕は子供だけど武を持ってるなら彼らにとってはそれなりに脅威になるのかもしれない。

でもこれ木剣なんだよね。

殺傷能力は低い。

「ぐぎい!!」

と思ってたら切りかかってきた。

最初は剣持ちからか。

セリアさんが僕を庇おうと前に出る……けど、それよりもゴブリンの持った鉄の剣が屆く方が速い。

ゴブリンは知能は低いけど人間を真似て人が使っていた武を使うことがある。

あの鉄の剣もどこからか手にれたんだろう。

數がいるとそれなりに脅威だ。

後ろからセリアさんの切羽詰まった聲が聞こえてきた。

けど僕はゴブリンの上から下へ振り下ろす攻撃を普通に避けた。

「ぎ!?」

今のは當たる方が難しい。

木剣でけたら斬られるしね。

というわけで軽く魔力を纏わせて同じように振り下ろす。

脳天にった木剣の一撃はゴブリンの頭蓋を砕いてそのまま中をぶちまけさせた。

「ぎいい!」

「ぐぎ!」

殘った2匹は同時に切りかかってきた。

ゴブリンにしては賢い手だ。

最初から全員でかかってきていればまだ手こずった。

結果は変わらないけどね。

同じように魔力作をする。

剣筋を見極めながら手足を強化。

そのまま間合いにり裏拳で首の骨を折った。

そして、何が起こったのか分かっていない最後の1匹。

逃げ出そうとするけどもう遅い。

僕は背を見せたゴブリンの後ろから脳天への一撃を叩き込み即死させる。

「やー、強かった」

僕が振り返るとそこには唖然とした様子のセリアさんが。

聲をかけるとハッと今気づいたように慌てて枝を手に持ち地面へまたも文字を書いた。

『なんで村人で! しかも子供のあなたが魔力作を使えるの!?』

魔力作とはスキルじゃない。

だ。

スキルの有無に関係なく誰でも使える。

ただし戦闘用となるとそれなりの訓練が必要になってきたりするんだけど……

実はこれを村人が取得するのは難しいとされている。

なんせ魔力の総量がない。

扱える量がないと練習も困難だし、取得しても大して使えなかったりする。

村人の魔力は長してもろくに増えない。

そのためまだ子供の僕が戦闘で魔力作を使ったことに強い違和じたんだろう。

「ごめん、足がった」

僕はセリアさんの書いた文字の上を踏み荒らした。

セリアさんが不満そうにぐぎぐぎ言ってたけど何を言っているのか分からないのでスルーした。

分からないなら仕方ないよね。

「まあ、それは置いといて」

ぐぎー! と怒るセリアさんを無視して続ける。

「セリアさんを助けたのは回復系のポーションを持ってたんだ」

今さっき思いついた言い訳を伝える。

これなら違和はないだろう。

『……私、名前言ったかしら?』

あ、やべ。

『考えてみたら結構最初の段階で名前知られてたような? そもそも私が魔族だって何で分かったの? あとポーションを持ってたならもあるはずよね?』

おおぅ、意外と鋭い察力。

誤魔化すのが無理と判斷した僕は強引に話題を変えることにした。

「………それよりここからどうするか考えないと」

『……分かったわ。命の恩人にあれこれ詮索するのも野暮だしね』

それは助かる。

空気の読める人は嫌いじゃないよ。

「まず狀況を整理しよう。ここでの野営は危険だし、村へとそのままることもできない……ここまではいい?」

セリアさんがこくりと頷く。

「そこで考えた方法が一つある。まずここにトレーニング用に持ってきた縄がある」

『縄? それをどうするの?』

「セリアさんを縛る」

『は?』

「おーう、レン。どこに行ってたん……は?」

村の大人が話しかけてくる。

僕は笑ってやり過ごそうと、笑みを浮かべてそのまま橫を―――

「待て待て待て!」

チッ、駄目だったか。

そして、視線は僕の隣にいる彼へと向けられる。

「お前! 何でゴブリンなんて連れてるんだよ!?」

その聲に村の人間が何人か集まってくる。

「ご、ゴブリンだ! 魔だぞ!」

「お、おい! レンから離れろ!」

「勇者様! 勇者様を呼んで來い!」

僕は騒ぎ出す村のみんな。

ここまでは予想通りだ。

を村にれることに皆が反対するのは當然だと思う。

だから僕は予め考えていた言葉を微笑みと共に口にする。

「この子は僕のペットで名前はセリア。いい子ですよ?」

縄で縛っているため危険もないことをアピールする。

そして、靜寂。

え、何言ってるのこいつ? みたいな視線がいっぱい向けられる。

そっと縛られているセリアさんに耳打ちをする。

(やばいかも、なんか間違えたかもしれない)

『だから言ったでしょ!?』

ゴブリンの言葉は分からないけどそう言っている気がいた。

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