《加速スキルの使い方!〜年は最速で最強を目指す〜》クズと才能の決闘
村には修練場があり、俺たちはそこに著いた。子供達も付いてくると言って聞かないので仕方なく連れてきた。
修練場は広い石のステージが中央にあり、周りには打ち込み用の木や的がある。
そして俺は今広いステージの上でゴーデンと向かい合っている。
お互いの距離は10メートル程度。直ぐに詰めることのできる距離だ。
「ははっ!俺のスキル知っていながら剣での勝負を挑むとか、お前の頭どうかしてんじゃねぇの?」
そんな安っぽい挑発をしながらゴーデンは手に持った俺のよりも大ぶりな木剣を肩でトントンと叩く。その目にはすでに勝負が見えているようだ。
剣を構えることもしなければ、自然のまま余裕の笑みでそこに突っ立っているだけ。ゴーデンは俺を完全に舐めている。
俺はゴーデンの挑発に応じず、腰を落とし木剣を顔の橫で構える。
【加速】と【剣】という絶対の差をしでも埋めるためには相手が油斷し切っているこの狀況でなければできない。
でも、俺は分かっている。
たかがこの程度で俺と奴のスキルの絶対的な差を詰めることはできれどーー
ーー決して覆すことができないということを。
「それじゃ始めるね。準備はいい?」
「ああ」
「いつでもかかってきな」
フィアの確認に俺とゴーデンは頷く。一瞬フィアが不安そうにこちらを見たが、今は目の前に集中。
フィアが手を上げ、そして振り降ろすと同時に試合開始の幕が上がった。
「開始!」
「ーーふっ」
開幕と同時に俺が仕掛ける。相変わらずゴードンは余裕の態度を崩さないが、俺は気にせずそのまま姿勢を低くして地を這うように駆ける。
「はっ!しゃらくせぇ!!」
一直線に目掛けて走ってくる俺にゴーデンは大きく振りかぶって剣を叩きつけてくる。
だが予備作からその攻撃を読んでいた俺は、直前で右前に前から転がるようにして避ける。
攻撃は作をいかに読まれず、相手の作をいかに読み切るかが重要と父さんに教わった。達人になるほどその作はほとんどなく、逆にこちらの些細な行からその攻撃を読み切るのだという。
だからゴーデンの攻撃など簡単に読み切れた。いくらAランクの【剣】スキルとはいえ、今のゴーデンは慣れないスキルに完全に頼りきっているだけのもの。今までスキルなしで父さんと修行してきた俺にその大ぶりな攻撃は効かない!
「ちっ!外したか!」
「はぁあああっ!!」
直ぐに起き上がった俺は剣を構え、振り切った後の無防備な脇腹へ右から鋭く剣を振る。
完全にった一撃。これを避けるなど同い年のやつにはいない。
だが、それはスキルがなければの話だ。
ガキッ!と衝突する音。それはゴーデンの脇腹の一歩手前で、俺の剣とゴーデンの剣が錯した音だった。
ゴーデンは振り切った後、直ぐに剣を逆手に持って俺の剣と脇腹の間に剣の腹をり込ませたのだ。
(この一撃を防ぐのかっ!!)
「はんっ!危ねぇ、なっ!!」
「ぐっ!」
そこからまるで流れるような作で俺の剣が弾かれる。
そう、これが【剣】スキル。剣を持っている間は自分の剣の間合いの把握が敏になり、考えるよりも先にまるで見えない手にアシストされたかのように、最短最善の行でが剣を振るうのだ。
ランクが高ければその度は更に上がり、常人では辿り著けない領域に至す。
スキルーー《才能》ーーは理不盡であり、決して屆かぬ差を與える。
「おら!おらっ!!」
「ッ!!」
怯んだ俺に向けて、ゴーデンが鋭い風切り音とともに、剣を振るう。何も考えずデタラメに振るおうが、スキルが補正し、結果それは最善の軌跡となって俺に容赦なく襲い掛かる。
俺はなんとかその剣をいなし、いなし続ける。ゴーデンの剣は剣で相手を叩き潰すタイプのパワー型だ。それがスキルで強化されてるとあって、まともにけ止めようものならこちらが押し負ける。なのでひたすらいなすのだ。
スキルとスキルなしではいなすのも難しいのだが、俺には父さん直伝のスキルに頼らない剣がある。父さんに鍛えられた剣技、甘く見るんじゃねぇぞ!
「ちっ!いい加減倒れやがれ!」
再び大ぶりの一撃。
それを俺はを右に傾け、同時に剣を逆さにしてその下にばした左腕を置く。そうすることで俺の頭上で剣の坂ができ、そこを打ったゴーデンの剣は坂をなぞるように流される。
「なにっ!」
流れた剣を見屆けることなく、俺は全を一歩前に出す。それだけで簡単にゴーデンの懐にれた。
あとはそのがら空きのに一撃を叩き込むだけ。そう思って俺は剣を突き出しーー
ーー上からのゴーデンの剣で叩き落とされた。
そんなバカな!
ゴーデンは先ほどの超反のように流されるすぐに、その流された剣を次のきに繋げて俺の剣の腹を柄で叩き落としたんだ。
防がれると思っていなかった俺は一瞬目を疑い、次の瞬間にはゴーデンの重い蹴りが俺の腹を打っていた。
「がはっ!」
打たれた場所は鳩尾で、響く痛みに肺の空気を吐き出した俺は蹴りの衝撃を耐えれずそのまま後ろにゴロゴロと転がる。
「イクスっ!!」
「大丈夫か!イクス!!」
ゲホゲホっ、っまさかあの一撃を防ぐどころか、そこから反撃してくるなんて。
フィアとコーサが俺を呼ぶ。俺は二人に大丈夫だという意味を込めて手をあげる。たしかに痛いけど、だからってフィアそんな心配そうな顔するんじゃねぇよ。
「おいおいしっかりしろよイクス。まだ決著はついてねぇぞ?」
「......あぁ、そうだ、なっ!」
気合いをれて俺は立ち上がる。この勝負は剣で一撃れた方が勝ち。拳なんかの攻撃はカウントされない。
それにこんなところであっさり負けてたまるか。フィアが見てる前で無様にやられるわけにはいかねぇ!
「ほら!イクス!俺はスキル使ってるだぜ?それじゃ不公平だろ?お前も使ってみろよ!」
「言われなくても、そのつもりだっ!!」
俺はここに來てようやく【加速】を使う。
ぐっとをめ、地面を蹴ると同時に【加速】を発。
「【加速】ッ!!」
剎那、まるで見えない手に押されたようにぐんっとが加速する。
長時間の加速はまだ制できないが、瞬間的に加速をすることならできる!
吹き飛ばされて離れたゴーデンとの距離が、あっという間にまる。
「ーーッ!!」
流石の加速にゴーデンはし目を見開いて驚くが、すぐに剣を構えて迎え撃つ。
俺は剣を引き戻し橫に構えて槍のように構える。そのままゴーデンと衝突する寸前に、剣を鋭く突き出す。
「シッ!!」
「オラァッ!!」
短く吐いた息と共に繰り出された俺の突きと、荒げた聲と共に繰り出されたゴーデンの斬撃がお互いの中間地點で衝突した。
俺は柄のを空いた片手でさらに押し込み、を前に倒す事で俺の全重を剣にかける。
一點集中の俺の全力と、ゴーデンの重い一撃は互角。でも、押し切る!
「ぬぁあああああああああああ!!」
俺は全力でび力を振り絞る。そして、ゴーデンの剣がグッと下がった。
押し切った!
そう思ったが、次の瞬間にはそれが間違えであった事に気がつく。
ゴーデンは俺の力にさかわらわず、そのまま剣を後ろに引く•••••と半一歩右に避け、剣をすくうように上に上げ剣を上段で構えた。
その際俺の剣は衝突地點をずらされ、大きくバランスを崩してしまった。
強力な一撃をいなす技。それはさっき散々俺が使った技。
ゴーデンはそれを見て真似したのだ。いや、
これがAランクスキル【剣】の本気か!!
「もらったぁあああああああ!!」
バランスを崩した俺は隙だらけのところをゴーデンに狙われる。
俺は上から迫り來る剣を見ながら思った。
ーーデタラメだ。俺が必死に磨いてきた技を、才能スキルは簡単に超えていく。
ーーんだスキルを得たコーサ。んでいなくても圧倒的なスキルを得たフィア。俺が憧れたスキルを得たゴーデン。
ーーだったらなんで俺はこんなスキルなんだ。
ーーんだスキルでもなく。圧倒的なスキルでもなく。誰かが憧れたスキルでもなく。
俺はこんなスキル、しくはなかった。
「...........くそっ」
迫り來る剣の中、俺はそう呟いて次の瞬間、を打つ衝撃に意識を手放した。
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