《神様との賭けに勝ったので異世界で無雙したいと思います。》第35話 必勝
「そ、そういえばあの変な形の扉ってなんて名前なんですかね? たまにテレビとかで見ますけど……」
「ウエスタンドア……だったかな」
普通の扉とは違うからこそ人の賑わいが良く聞こえてくる。
そうして酒場で待つことしばらく。
軽く飲や食べを摘まむ。
そうしてお皿の上のものがなくなってきたあたりで、ガラン……っ、と扉が開く音が聞こえてきた。
「あれ? 奇遇ですね」
僕がわざとらしくそう言うとフードを被った男は眉間に皺を寄せて苦々しい表を作った。
「お前……絶対格悪いだろ」
それは否定しないけどさ、何で後ろにいる君たちも頷いてるの?
え、君たち敵なの?
僕がかにショックをけていると相手がし警戒しつつ聞いてくる。
「で? 何が目的だ? 金か?」
「いや、ちょっと報でも聞きたいなーって」
報? と、聞き返してくる。
僕たちは旅の目的を話した。
勇者であることは念のため伏せておいたけど職業柄戦うことが多いから強い人をパーティに加えたいと。
心當たりがないか聞いてみたところ賭博師の……って、呼びづらいな。
「僕は佐山悠斗って言います。こっちは姫木さんに栗田さんに秋山さんです。あなたは?」
「ん? ああ、ガリウスだ」
「どうも、それでガリウスさん、知りませんかね?」
「強い奴か……そうだな。グラントニオのギルドマスターが相當な実力者らしいが」
んー……そこは目的地だったので微妙な報だ。
元々行く予定だったからね。
すると、ガリウスさんがいいことを閃いたとばかりにんまりと笑みを浮かべる。
「賭博師から報を聞き出したいってんならよ、ゲームで決めないか?」
「えー……」
「まあ待て待て、何もタダでってわけじゃない。俺が負けたらとっておきの報を教えてやるよ」
「やります」
即答した。
神眼で見たところ本當にとっておきらしいから。
噓じゃないことは分かった。
僕が負けた時に支払う金額に関しては石拾いゲームのタネを誰にも言わないことを條件に無しにしてもらった。
「ゲームだが……」
「あ、僕が決めてもいいですか?」
「ふむ……」
考え込む。
「いいじゃないですか。ゲームするのはそっちが決めたんですから容くらいは決めさせてくださいよ」
「容次第だな」
ごもっとも。
「そうですね……あ、サイコロは持ってます?」
「ん? ああ」
そう言って出してきたのは石のサイコロ。
この世界では木のサイコロもあるけど石のサイコロもそれなりに普及しているらしい。
木のモノよりは珍しいらしいけどね。
そして、振る。
3だ。
もう一度振る。
4だ。
三度振る。
6だった。
「それで? どうするんだ?」
僕は食べ終わったお皿を拭く。
3枚のお皿。
酒場の店員さんに頼んで炒り豆を持ってきてもらう。
それぞれのお皿の上に炒り豆の數が3、4、6になるように置いた。
「この中から炒り豆を取っていくってのはどうです? 合わせて何個でも取っていいですけど必ず1つ以上は取らないと駄目。
最後のを取った人が勝ちということでどうでしょう? 一度に一つのお皿からしか取れないってルールで」
「ふむ、即興にしては面白そうだな……」
し考え込む。
考えて考えて……頷いた。
「いいだろう。どっちから始める?」
この時點で僕の勝ちが確定した。
◇
「……なあ、もしかしてこれも必勝法あったのか?」
「あれ、気付いてたんですか?」
塩気のある炒り豆をポリポリ摘まみながらガリウスさんに目を向ける。
「一応最初から予はあった。確信したのは途中からだけどな。だけどいくら考えてもさっぱりわかんねえ。どうやったんだ?」
男の人はフードの上から頭をガリガリと掻く。
悔しそうにしているのは負けたからか、それとも僕の勝ったやり方が理解できなかったからなのか。
両方だろうね。
「あの、私にも教えてほしいんですけど」
と、聞いてきたのは秋山さん。
うん、わかるわかる。
こういうゲームの必勝法とかって誰でも興味出るよね。
「まあ石拾いゲームと似たような原理だね」
「似てるとは思ったけどよ……これは無理じゃないか?」
んー確かに説明するのはややこしいな。
「二進法って知ってます?」
「にしんほう?」
ガリウスさんが疑問符を浮かべた。
やっぱり知らなかったか。
まあこの世界に二進法を知ってる人がいたら驚きだよ。
「0と1だけで數えるあれですか?」
秋山さんが言ってくる。
「うん、それそれ。0は0。1は1だけど2は10。3は11で4は100ってじだね」
まずサイコロを振って出た數は3と4と6だった。
それを二進數に直すと11と100と110になる。
その數を十進數とみなして全部足すと221。
あとはこの作業の結果それぞれの桁が偶數になるように豆を取っていけば勝ち、というわけだ。
「……すいません、説明聞いてもよく分からないんですけど」
「俺はそのにしんほう? すらよく分かってねえぞ……偶數くらいまでなら分かるけどよ」
僕は苦笑いを浮かべる。
確かにちょっと複雑だろう。
だからこそこの世界の人は絶対……とは言い切れないけどほとんどの人が分からないと思う。
ニム、あるいは三山崩しとも呼ばれているゲームだ。
何度かこのゲームでジュースを奢らされているから詳しく調べたことがある。
こんなところで役立つとは思わなかったけど。
「いや、ちょっと待て。理屈は分からねーから偉そうなことは言えねーけどよ。もし俺がそのゲームを知ってたらどうしてたんだ? お前が勝ち方を知ってることに気付いて違うゲーム容にしろって言う場合も考えられただろ?」
「先手後手譲ってくれた時點で知らないのは分かりましたからね。もし違うゲームって言われたら……そうですね、例えば……ほら、あそこに銅貨落ちてません?」
皆がそちらを見る。
すると酒場の隅に確かに貨らしきものが落ちていた。
「あれの裏表當てたり」
「確かにそれらしいものはありますけど……でもそれ必勝法あるんですか?」
秋山さんの疑問。
「うん、裏だよ」
「なんで分かるんだ?」
ガリウスさんがを乗り出してくる。
賭け事をして資金稼ぎをする人としては気になるんだろう。
「僕が置いた銅貨なので」
「え?」
皆がポカンとする。
姫木さんも、栗田さんも、秋山さんも。
ガリウスさんに至っては目を點にしていた。
「そういえばガリウスさんが來る前から何かごそごそしてましたね……」
まあ他にも々仕込んでおいたけどね。
あちこちにタネはある。
だから僕は向こうの提案を待った。
ゲームをすることを僕から言いだしてたら怪しまれただろうからね。
なくとも心でも読まれない限りはゲームを決める時點で僕の勝ちはほとんど決まっていた。
するとガリウスさんが「ち、ちょっと待て!」と立ち上がった。
「お前分かってたのか!? 俺がゲームを持ちかけるって!」
「もしかしたら程度でしたけどね。使うことにはならなかったですけど用意しておいて正解だったみたいですね」
するとガリウスさんががっくりと椅子に座り込んだ。
「ッカー! 負けた負けた! こんだけ完敗だとグゥの音も出ねえよ!」
「じゃあ教えてください。とっておきってやつを」
ああ、分かった分かった。とガリウスさんは頷く。
手招きしてきたので僕たちは近くに寄った。
よほどマズい報なのだろうか?
「アルテナ……って知ってるか?」
ん? 聞いたことない。
誰だ?
僕はみんなに確認の意味を込めて視線を向ける。
皆は知ってるけど? みたいな顔をしていた。
え、僕だけ?
「佐山先輩は本當に人の名前を覚えませんね」
栗田さんがジト目で言ってくる。
面目ない……それで、結局誰なんだ?
先ほどとは立場が逆転した僕に秋山さんがやれやれみたいな呆れ顔で教えてくれる。
「エルフの真祖アルテナ……『』スキルの所有者ですよ」
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