《異世界チートで友達づくり(仮)》前日②
鍛冶屋『ユンベット店』…姉妹である姉の武職人ヒルメ・ユンベットと妹の防職人リーシャ・ユンベットの2人で切り盛りしている。彼らの手にかかればどのような素材でも一流の裝備にしてしまうという。2人は全鍛冶師協會より“國技師こくぎし”の稱號を授かっている。店は完全予約制で今では5年後の客まで決まっているという。
「あの2人凄すぎる人だったんだね…」
「そんなに凄いんスか?」
私は『ユンベット店』に向かいながらダルが教えてくれたことを思いだして足取りが重くなった。
「凄すぎるよぉ、“國技師”って稱號はこの世界で今のところ15人しか與えられてない稱號なんだよ?」
「“國技師”ってどうやったらなれるんスか?」
あぁ、そこからなんだね…まぁフォックちゃんは世間のこと知らないのは當たり前だけどフォックちゃんはそれ以前にいろいろ知りたがりなようだ。
「“國技師”は技士協會に加する數千のの職人が満場一致でその技を認めて始めて手にできる稱號だよ」
「數千の満場一致っスか!?」
「そうそう、凄いよね」
「な…納得っス…」
フォックちゃんがちょっとだけ引いていた。それくらい凄くて驚いたのだろう。
「まぁ冒険者にも似たような稱號があるんだけどね」
「そうなんスか?」
フォックちゃんが意外そうなじで覗き込むように聞いてきた。
「うん、“十天聖じってんせい”っていって、こっちは冒険者の秩序維持のために定められた冒険者評議會で決められるらしいよ」
「冒険者…評議會?」
「各大陸の代表が集まる組織だよ。冒険者の決まり事とか裁判とかをやってるんだって〜。私も冒険者になってそこまで経ってないからあんまし詳しいことはわかんない」
ニッコリ笑いかけてみるとフォックちゃんは顎に手をやり「なるほど、なるほど」とコクコクしながら納得していた。
この子の仕草ひとつひとつが私の心を癒してくれる…。
そんなこんなしているうちに目的地である『ユンベット店』へと到著した。
中にると私たちが暴れて壊れていた場所はすっかり元通りに戻っていた。
中の様子を眺めているとあの日のことが頭の中で映像としてよみがえる。
グッとつくった拳に自然と力がはいる。
「アオイ……もうすぐ助けるからね…」
獨り言のように呟いたじだったがフォックちゃんの耳がピクリといてこちらを見上げるような視線を送ってきた。
━━━ダダダダダダダダダダダダダダ
「2人ともぉぉぉぉおおお!!!」
沈黙を破るように店の奧の部屋から飛びついてきたのはこの店の店主の1人である姉のヒルメ・ユンベットだった。
「ちょ、ヒルメさん!?」
私が呼びかけるもヒルメさんは抱きつくのを辭めずにいるとすぐ後から妹のリーシャ・ユンベットが駆けつけてきた。
「ヒルねェ、2人とも困ってるよ」
ビシッと指をさしながら注意するリーシャさんによってヒルメさんが正気に戻った。
犬人族ドワーフは種族的に力が強い。さっきまでの抱擁も絞め技みたくバッチリきまっていたのだ。
解放されてなおフォックちゃんは白目をむいてフラフラしていた。大丈夫かな…。
「ヒルメさん、リーシャさん、お店のことはすみませんでした」
「すみませんでした」
私たちは2人で店を壊した謝罪をして頭を下げた。事はどうであれ壊したのは私たちの責任なのだ。
「いいよいいよ、事が事だったしさ…仕方ないよ」
「そうですよ、それより……今回の事は本當に殘念でした」
そう言いながら2人は視線を下に下げた。
たぶんアオイのことを言っているのだろう…。
沈んだ空気を無理やり上げるように私はわざと明るく振舞った。
「アオイなら大丈夫ですよ、きっと…なんせ私の死の魔法でも死ななかった凄い人なんですから」
わざと笑いながら言う。こうでないと気持ちがどんどんマイナスの方向へいってしまうのだ。
必死に明るい自分を保った。『アオイが死んじゃった』っていうマイナスの思考にならないように。
気持ちがそこまでいったらきっとおかしくなりそうだったから…。
だけど、明るい自分はすぐに剝がれ落ちてトーンが暗くなる。
「きっと生きてます…絶対に……だから、明日助けに行くんです…そのための裝備を買いに來ました」
堪えろ、堪えろ、堪えろ、堪えろ、堪えろ、堪えろ!
そしてもう一度頭を深々と下げた。
「完全予約制だというのは承知しています…ですが、ひとつでいいので作ってもらえないでしょうか」
堪えろ、堪えろ、堪えろ、堪えろ!
そう何度も繰り返し念じて拳を強く握りしめて口をゆっくり開いた。
「お願いします」
最後の言葉は震えていた。
隣でフォックちゃんもし遅れて頭を下げた。
無理な頼みだということは充分に承知していた。他の店を選ぶこともできたかもしれない。
だけどこの2人に造ってもらいたいのだ。“國技師”であるこの2人に…。
「うん、いいよ」
「………………え?」
思わぬ言葉で反応がし遅れた。
ゆっくりと頭を上げると2人はニッコリと満面の笑みを私たちに向けていた。
「今、なんと…?」
「一流品の武を造ってあげるって言ったんだよ」
「私の防で良ければ最善を盡くしますよ」
それぞれが當たり前のように笑顔のまま答えてくれた。
「だだし!」
「「ッッ!?」」
その言葉にフォックちゃんも一瞬ビクつき固唾かたずを呑んだ。
「私たちのお願い事をそれぞれが合計2つずつきいてくれること」
「…………そんなことでいいんですか?」
「もちろんです、私たちもアオイさんを助けたいですからね」
「料金は後払いでお願いするよ」
あまりの狀況についていけないでいる私とフォックちゃんを置いて2人は店の奧の加工場へと行ってしまった。
しばらく立ち盡くすことしかできなかった。
しばらくしてフォックちゃんと目を合わせる。
「よかったのかなぁ…?」
「そうっスね…」
キョトンとする私たちに向かって加工場から聲がした。
「お二人さ〜ん、採寸とかするからこっち來てぇ〜!」
私たちはわけも分からないままなんとなくの意識で加工場の方へ向かった。
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