《異世界チートで友達づくり(仮)》ベル VS ブリュード③
「フゥ………やれやれ」
そう言って一瞬でその場から姿が消えた。けれど慌てはしない。
すかさず右足を外に広げながらしゃがみこんだ。ほぼ同タイミングでさっきまで私の頭があった場所をブリュードの左手のなぎ払いが空を切った。
さすがに何度も背後を取られたら予想はできるようになるけど、相変わらず馬鹿げた威力だ…。
ブリュードのたった一振りで地下深くにも関わらず突風が吹き荒れていた。
突風が吹き終わる前に右手で腰に備えた鞘さやから«リョークナイフ»を取り出して思いっきり後ろに半円を描くようにして切りつけた。
ブリュードはそれを半歩下がってかわした。
當然、私のスピードではブリュードを捉えることは難しい。だが、これでいいのだ。
そのまま«リョークナイフ»を鞘に収めて、後ろを向き弓を構え、[の矢ライトニングアロー]を3本同時に打ち込んだ。その際«魔力紐»でブリュードの腳を膝下辺りまで拘束していたため避けることができずに3本とも直撃した。
だが、その程度のダメージではブリュードは意に介さず私が«魔力紐»を解いて距離を取る一瞬のスキをついて私の足首を摑み橫へと放り投げた。
とてつもない威力で放り投げられたためそれに伴う風圧も計り知れないほど強かったが壁に當たる數秒前に辛うじて自分のの向きをブリュードに向けることができた。
空中の不安定な狀態で右手を大きくかして空中に魔法陣を描きれて発させた。
「[大地の怒りフォースインパクト]!!!」
魔法を唱え終わると同時に私のは壁に叩きつけられた。
同タイミングでブリュードの立っていた地面が赤く溶け始め巨大な火柱がブリュードのを一瞬で飲み込んだ。
火屬と土屬の合魔法だ。
合魔法…別屬の魔法を同時に行える魔法の高等技。一般的に式を用いる。
式魔法…魔法陣を描くことによって生み出せるより高度な魔法。
これでしはダメージがったでしょ…。
そう思いながらゆっくりと立ち上がった。
魔法陣を描くのに夢中で壁にぶつかること全然考えてなかったな…結構痛いけど防のおかげか致命傷にはなってないみたい。ヒルメ達に謝しないと…。
火柱はまだ勢いを失わずにある。私が魔法の解除をしない限りは消えないのだ。
しばらくその火柱をみる。
が使えないため、ブリュードの気配を察知することができないがこの程度では倒せないことは直で分かっている。
ダルはまだ杖を構えてブツブツと詠唱を唱え続けていた。結界は何重にも重ねられているのが一般的で解除にはひとつずつ解いていかないといけないのだ。
結界は張るにも解くにも大量の魔力を消費する。それを1人でこなすのだから私と同等以上の魔力を持っているのだろう。
凄まじいと思わずにはいられない…同年代に私以上の魔力を持っている人がいたなんて…。
「まったく驚きました…まさか式魔法が使えるなんて」
ブリュードがまだそびえ立つ火柱の中から歩いて來るのが分かった。
火柱から出て來るタイミングで私は魔法を解いた。一瞬にして火柱が消え去り、地面が割れ、所々赤く溶け始めていた。
服は所々焼け焦げていたが、ブリュード本人はほぼ無傷といっていいほどだった。
私は無言のまま新たに弓を構える。
恐らく…いや、確実に私1人だけでは勝てないだろう…。
せめて、ダルが結界を解くまでの間は私ひとりで持ち堪えないといけない。
私は一度構えた弓を下ろして力して深く深呼吸をした。
━━私の目的はアオイをこの男から取り戻してスサラちゃんを助け出すこと…。
その事を改めて自分のに深く刻み込んだ。
━━絶対にし遂げる!!!
そして私はそのままブリュードの方へと走った。ブリュードは私を見ても微だにせずその場に立ったままだった。
私は走りながら弓を構えてからブリュードの右腳めがけて放った。なんの魔法もかかっていない普通の矢だ。
それを見てもブリュードは避けることはせずにただ立ったまま布を著ているだけのブリュードの腳に私の放った矢は弾かれた。
そのことが視認できた時には私は弓をしまい«リョークナイフ»を抜き、ブリュードとの距離は私の間合いにっていた。
一撃目は刃を逆に持ち橫払い、それをブリュードは上をし反らすことで避けた。
その後通常に持ち替えて斜め上に切り上げ、振り下ろすが、それも距離を取られて簡単に避けられてしまう。
その距離を詰めようとした時にブリュードが開けた距離を一瞬で詰め拳を私のお腹に叩き込んできた。
「うグッ…!」
吹き飛ばされたが直後ブリュードの足に«魔力紐»を巻き付けてその毆られた威力を遠心力を使いブリュードに伝え、壁に思いっきり叩きつけた。
直後左手をブリュードの方へ向けた。
「[の弾丸ライトニングバレット]!」
いくつものの玉が弾丸のように放たれて音と砂煙が舞った。
「がハッ!………はァ…はァ…はァ」
口からが溢れる。腹部を押さえてを丸めた。
尋常ではない痛み…アオイが連れ去られた時と同じくらいの痛みだった。
視界がかすみ、息が整う気配がない。
何度も何度も吐を繰り返しいつの間にか足下に溜まりができていた。
━━アオイ!アオイ!アオイ!!!
頭の中ではアオイの名を何度も何度も呼び、頭に思い浮かべた。辛い時にはいつもアオイの事が頭に浮かんだ。それは私の心の弱さでもあった。
アオイに助けてもらいたいという単純な人頼りの甘い考えから來るものだった…。
━━そんな自分に心底腹が立つ!!!
私は痛みを無理やり呑み込んで、かすむ視界の中ブリュードの方へと視線を向けた。
「自分を自らを囮に使ってき寄せてからその力を利用する…なるほど、いい案ですね…」
何事もなかったかのように気だるげな雰囲気で土煙の中を歩いて出てきた。
自分のを呈して尚、ブリュードに大きなダメージを與えることができなかった。
ホント……嫌になる………。
そう思っているとブリュードは続けた。
「ですが、貴方のそのダメージ量…同じ方法はさほど使えませんね…」
不気味な笑みだった。
気がついた時にはブリュードは先程の場所から姿を消していた。
「ッッ!!?」
咄嗟に後ろへ振り返ろうとする。が、振り返る直前先程の腹部の痛みが襲った。
吐し、その場にしゃがみこむ。
地面に頭を垂れた私の視界の端にはブリュードの足があった。
逃げようにも痛みでピクリともがかない。
「貴方もアオイという者の元へと送って差し上げましょう」
その聲が最後に聞こえた。
ブリュードが右手を振り上げて振り下ろすような気配、、がした。
その時ふと思ったのだ。
走馬燈でも今までお世話になってきた人への謝の気持ちでも、ましてや顔もろくに知らない両親のことでもなかった。
ただひとつの覚…。
━━気配、、がした…。
ブリュードの手が私に屆く直前に漆黒の砲撃がブリュードを襲い、壁の方まで叩きつけた。
痛みがしだけ和らぎ砲撃の飛んできた方向に視線を向ける。
「[漆黒の砲撃ブラックカノン]だ」
そこには杖を向けている混魔族ディーマンの男がいた。
結界の解除が終わったダルだった。
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