《無能な俺がこんな主人公みたいなことあるわけがない。》二章 18 『ウルガンド攻防戦6 この世界で手にれたモノ』
「噓でしょう・・・」
ローゼが小さく呟く。ベルモンドによってられた土の刃がタクミのにその兇刃を突き立てた。
ローゼから見たらいくつもの刃がタクミに突きつけられているようだった。
しかしベルモンドの表は獲を仕留めたといったじではなかった。目を見開き信じられないといった表をしていた。
「貴様・・!いったい何をした!?」
「へへ・・これはあんまり使うなって爺さんに言われたけどこうなったらしょうがないよな。」
ベルモンドが突き立てた刃はタクミのに屆く前にまるで見えない壁に遮られたようになっていた。
「タクミ!大丈夫なの!?」
タクミが生きていたことに驚き聲をかけるローゼ。
「ああ!安心しろよ!まだ死んじゃいねーよ!」
「良かった・・・」
タクミの元気な聲を聞き安心した様子のローゼ。
「なぜ私の魔法を貴様ごときが防いでいるのだ!!」
目の前の狀況が信じられないといった様子のベルモンド。
「さっきまでの俺なら死んでただろうな・・・でも今お前の前にいる奴は魔法騎士団長クラスの魔力の持ち主だぜ?」
「なんだと!?」
「どういうことなの?」
ともにタクミの言葉が理解できていない様子のローゼとベルモンド。
「はあぁ!!」
タクミが聲を上げるとベルモンドがっていた刃が々に砕かれた。そしてタクミの全にり輝く線のようなものが浮き出てきた。
「くっ・・・!なんだお前のそれは!」
「言ったろ?今の俺は魔法騎士団長並みの魔力だって。」
「バカな!そんなことがあるわけがない!この魔力はまるでかつてのエドワード大魔導士のような・・・」
あきらかに揺しているベルモンド。
「そうさ!今のおれはあの爺さんの魔力を使ってるんだからな!」
「なに!?」
「俺は二年前にこの世界で魔力を得たけどそれを使いこなすことは出來なかった。だから魔法を使うためにエドワードの爺さんと一緒に修行することにしたんだ。その修行の中で爺さんは俺の中に眠っていた特別な力に気づいたんだ!」
「特別な力だと?」
「ああ・・・これがその力だよ!」
タクミは元をあらわにした。そこには手のひら大のタクミのに浮き出た線と同じようにり輝く刻印のようなものがあった。
「なんだその刻印は・・?紋章のものとは違うな?」
「これは俺の魔法回路を整えるための刻印だ。これのおかげで俺は魔法が使えるようになったんだ。あの爺さんがこれを俺に刻印した時、ただの霊だけではなくこの力が生まれたんだ。俺だけの魔、そうだな・・・俺が無能だったからこそ生まれた魔。無能とでも名付けとくか。」
「無能だと!?貴様ふざけるな!」
タクミの言葉に怒りをあらわにするベルモンド。
「ふざけてなんかねーよ。俺はなかつては無能の匠なんてふざけたあだ名までつけられていたんだよ。でもあの爺さんは言ったんだ。何も持っていなかったからこそこの魔が生まれたんだと。この無能は相手の魔力を自分の力に出來てしまうんだよ!」
「相手の魔力を奪うだと!?そんな魔は聞いたことないぞ!」
「だから言ったろ俺だけの魔だって!この魔力こそがその証拠だよ!」
タクミは魔力をそのにみなぎらせた。
「どうだ?何も持っていなかったからこそ、俺は何事にも縛られることなく自由に魔を使うことが出來るんだ。覚悟しろよベルモンド!お前の魔力もここで俺がもらってやるよ!」
「ふざけるな!!そんなことあってたまるか!!」
ベルモンドは怒りに任せてタクミを攻撃した。しかしその全てがタクミにれる前に砕かれた。
「バカな・・。こんなことがあってたまるか!」
「あきらめろよ。今は俺の方が魔力は上だ。くらえ!」
タクミがベルモンドに手をかざした。たちまち風でベルモンドを後ろの方に吹き飛ばす。レンガの壁に叩きつけられるベルモンド。
「ぐ・・・こんなやつに倒されるなどあるわけがないのだ!」
叩きつけられた衝撃で口からはが出ていた。ベルモンドに近づくタクミ。
「お前のような奴が魔力を手にするからこんなことなるんだ!二度とこんな真似ができないようにしてやるよ!」
タクミが合図すると空間から複數の鎖が現れベルモンド空中に拘束した。
「ぬおぉ!ぐっ!何だこの魔法は!」
手足を縛る鎖をほどこうと暴れるベルモンド。しかし鎖がベルモンドを離すことはない。
「今のお前にその鎖は壊せねーよ。さて、じゃあさっき言ったようにお前の魔力もらうぜ!」
タクミは右手を天に掲げた。
「我、無能ゆえにその全てをほっする!今ここで全てを我に捧げよ!マジックオブロスト!」
タクミが呪文を唱えると掲げた右手が白くり輝く。
「お前の異能もらうぜ。」
タクミがり輝く右手を縛られたベルモンドの心臓にあてる。
「やめろ!貴様覚えていろ!必ず・・ぐおぉ!!」
タクミの右手がゆっくりとベルモンドのにっていく。しかしそこからの類は出てこない。手がっていくとベルモンドの顔が苦痛にゆがむ。
「ぐっ!・・・・ぬお!ご・・・!」
「おとなしくしな。抵抗すればするほど痛みを伴うぜ。さてお前の魔法の核となるものは・・・」
タクミはみベルモンドのを探るように右手をかす。右手になにやら球のものがれた。
「お、あった!これだな?」
タクミは手にれた球を握りベルモンドのから引き出そうとした。
「やめろぉぉぉぉ!」
ベルモンドがび抵抗しようとする。しかしタクミはお構いなしに右手を引き出した。その手には黒く輝く球を握っていた。
「よく見ろ。これがお前の魔力の核となるものだ。ふーん・・・お前のは黒いんだな。」
「はぁ・・・はぁ・・・貴様ぁ!それを返せ!」
鎖が消え去り解放されたベルモンドが息を荒げ、フラフラとタクミに近寄る。
「嫌だね!言っただろ?これは俺がもらうってな!」
タクミは黒い球を右手に握りこんだ。次に右手を開いた時には何もなかった。
「ふざけるなぁ!魔力を奪うなどあってたまるか!死ね!」
ベルモンドは再び土の刃を造り出そうとした。しかしなにも起きなかった。
「なんだと!?なぜ何もおきない!いでよ!ゴーレム!」
巨神兵を呼び出そうとぶベルモンド。しかし聲だけがただ響いた。
「無駄だ。お前はもう魔力を持たないただの人間だ。あきらめろよ。そしてこんなことをしたことを後悔しな!」
タクミは右手に魔力をみなぎらせてベルモンドに迫る。その圧におされてベルモンドは後ずさりしながら倒れこんだ。
「やめろ!・・・やめてくれ!そんなものをくらえば今の私は死んでしまう!」
迫りくるタクミを見て命乞いのように助けをもとめるベルモンド。
「斷る。俺はこの世界でいまだにきちんとした勝利ってのをまだ味わってんないんだ。お前にはその第一號になってもらうぜ!」
タクミはこぶしを振り上げベルモンドの腹へと振り下ろした。
「ぐぉ!!・・・・・」
毆られたベルモンドは地面に白目で橫たわっている。
「ふぅ・・・」
ため息をつくとタクミのに現れていたり輝く線は消え去っていった。
「タクミ!!」
ローゼがタクミに駆け寄ってきた。
「大丈夫!?タクミ?」
「あぁ。大丈夫だよ。ちょっと魔力を使い過ぎたけどな。」
「・・・殺したの?」
白目をむいて倒れているベルモンドを見て心配そうにローゼが聞いてきた。
「まさか!ちゃんと手加減してやったさ。もうこいつはただの人間なんだからな。」
「そっか。よかった。こんな奴のせいでタクミ手を汚すことはないわ。」
「ああ。・・・さて、敵の親玉は倒したけどここからどうしようか?まだ雑魚とはいえかなりの數がいるんだろ?」
「そうね。・・・聞きなさい!邪神教徒共!ここにお前らの將軍は敗れたわ!おとなしく撤退しなさい!」
ローゼがベルモンドがやられたことによって茫然としている敵軍にんだ。
「・・・・ふざけるな!まだ我らが圧倒的に數では有利なのだ!將軍が敗れたとしても我らの勝利は揺るぎはしないのだ!」
敵兵がローゼのびに敵意を持って応えた。將軍が敗れたことにより士気は下がったようだったがこのままおとなしく帰る気はないようだった。
「くそ・・・こいつらなんぞ俺にまだ魔力があればなんでもないのに!」
「タクミは頑張ったわ。でもまずいわね・・・私もあまり多くの魔力は殘ってないわ。このままこの數で攻められたら持ちこたえるのは難しいわ。」
「ちっ!せっかくベルモンドを倒したのにこれじゃあ狀況はあまり良くなってねーじゃねーかよ!」
タクミとローゼがし後ずさりする。
「こいつらにもう魔力は殘ってないぞ!今こそ攻め時だ!」
「おぉぉぉぉ!」
敵軍が士気を上げた。前方にいた邪神教徒の兵達がタクミ達に襲いかかろうと迫ってきた。
「ここまでか・・・」
タクミが小さく呟いた。
「死ねぇ!」
邪神教徒軍に兵がタクミに剣を振り下ろした。
次の瞬間、タクミに斬りかかってきた兵は何かに吹き飛ばされた。
そこには見たことのある大男が立っていた。ジークである。
「・・・なんでお前がここにいるんだよ。」
タクミが驚いて聲をかける。
「言ったはずだ。私は私のすべきことをするとな。・・・それに私だけではないさ。」
今度は敵兵の前に雷が落とされた。この悪天候によるものではない。
「邪神教徒共!聞け!今ここに我らが魔法騎士団の軍が1萬はやってくるぞ!お前ら一人殘らず逃がさんぞ!覚悟しろ!」
聲の方を見るとドズールが立っていた。後ろにアトスもシュウもいる。
「大丈夫!?タクミ!」
後ろから聲をかけられた。振り返るとレミとエリーが近付いて來ていた。
「レミ!エリーさんも!?これはいったい・・・・?」
狀況が呑み込めないタクミ。目をキョトンとさせる。
「くそ!魔法騎士団か!一萬の軍だと!ふざけるなよ!そんなのやってられるか!撤退だ!撤退!」
敵兵の中の隊長のようなものが聲をあげた。その號令に従うように邪神教徒の軍は大広場から、そしてウルガンドから撤退していった。
「ふぅ・・・良かった。これでウルガンドもとりあえずは安心ね。」
ローゼが安堵から地面に座り込んだ。
「なんで皆ここにいるんだ?」
「どうやら今回の隊にはバカしかいなかったようだ。」
ドズール達ががタクミに近づいてきて言った。
「アトスからお前が一人でウルガンドにったと聞いてな。そしたら他の奴等も行くと言い出してな。まったく他の奴等もそうだがそれでここに來ちまう俺も大馬鹿だな!ガッハッハッ!」
高笑いするドズール。
「なんだよそれ!大軍を連れてくるには一週間はかかるんじゃなかったのかよ!?なんだよ一萬の兵って!」
「あん?さっきのか?・・・あれは噓だ。ここには俺らしかいないぞ。」
「噓だって!?」
「ああ。あれは敵を撤退させるための噓だ。イチかバチかだったが見事に信じてくれて助かったわ!」
「あの狀況で噓って・・・どうかしてるぜまったく。」
あきれた様子のタクミ。
「一人で大軍に挑んでいったタクミには言われたくないんだけど?まったく!タクミこそ無茶しすぎだよ!もう!」
レミが口をとがらせタクミに詰め寄る。
「ハハハ・・・まあそれはなんだ。勝手なことして悪かったよ。」
「謝っても許してあげないんだから!ねぇ隊長?」
「ああ。命令無視の罰は重いぞ?覚悟はいいかタクミ?」
指をならしながら今度はドズールがタクミに詰め寄った。
顔は笑っているが怒っているのが伝わってきた。
「悪かったって!今はもうヘトヘトなんだから勘弁してくれ!」
「アハハ。まあここで立ち話もなんですので皆さん私の屋敷にいらしてください。たいしたことは出來ませんがおもてなしさせていただきます。」
ローゼが立ちあがり皆に聲をかけた。そこには昔のような無邪気な笑顔があった。
こうしてタクミ達はウルガンドを邪神教徒の軍から守ることに功した。
さっきまで降りしきっていた雨もいつの間にかやんで雲の隙間からは日のが差し込んでいた。
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