《無能な俺がこんな主人公みたいなことあるわけがない。》三章 9 「存在理由」

再び三日ほどの時間をかけてアーバンカルへと戻ってきたタクミ達。 アーバンカルに到著したのは夕方だった。

「皆の者今回の任務ご苦労であった。今日はこれにて解散とする。ゆっくりとを休めて明日から再び頑張ってくれ。」

魔法騎士団本部に到著してクリウスが任務で疲弊している皆に労いの言葉をかけて解散となった。

「あー今回の任務も疲れたぜ。魔法騎士団もなかなかハードな仕事だよな・・・」

疲れているタクミもこんな小言をこぼしながら帰ろうとしていた。

「タクミ。悪いが君は私の所に來てくれ。」

帰ろうとしていたタクミをクリウスが呼び止めた。

タクミは心、またかよ・・・と思ったが斷わるわけにもいかないのでおとなしく従うことにした。

タクミはクリウスに連れられ団長室へとった。

「疲れているところ悪いな。そこに座ってくれ。」

クリウスに座るように促され革製のソファーに向かい合うように腰かけたタクミ。

・・・え?俺また何かしたかな?

クリウスと二人っきりの中、妙に張してしまい何か怒られるんじゃないかと心當たりを探った。

「そんなに張しなくてもいいさ。別に君を怒るためにここに呼んだわけではないのだからね。」

そんなタクミの心を見かしたようにクリウスが優しく言った。

「さて君は、あの時神獣と何を話していたんだい?あの後からし君の様子がおかしおかったのでね。気になってここに呼んだわけなのだが。差支えなければ教えてもらえるかな?」

「・・・はぁ。まあそーすねっ。」

団長って本當は人の心が読めるんじゃね?

なんてことを思いながらも別に隠すことでもないので神獣から聞いた自分以外の異世界人の話などをそのままクリウスへと伝えた。

「・・・・ふむ。なるほど。」

タクミの話を聞いてからし間をおいてクリウスが口を開いた。

「つまり君と同じように以前にこの世界に異世界から來たそのケンジという者がこの世界で何十年か前に何かをし遂げてから元の世界に帰っていったと君は考えているわけだね?」

「まあ簡単に言うとそんなじっすね。団長はそのケンジって名前に聞き覚えとかないですか?」

「・・・悪いがそのような名前に心當たりはないな。」

タクミの問いかけにし考えこんでクリウスが答えた。

「しかしこれは・・・あまり確かな報ではないのだがこの世界にある魔裝武は君と同じような異世界人が作ったものだとされる説があるのだよ。」

「え!?それって一どういうことです?」

クリウスの思わぬ言葉に驚くタクミ。クリウスは続けた。

「君ももう知っていると思うが異世界から來たものというのは、その魔力の質が初めからこの世界に生まれてきたものとは異質なんだ。君の使う無能といったかな?それもあきらかにこの世界に純粋にある魔法とは違うものだ。そして魔裝武なんだが・・・」

そういうとクリウスはエスミル山から持って帰ってきた幻水の指をテーブルの上へと置いた。

テーブルに置かれた指には親指の爪くらいの大きさの青い魔石がついておりとても澄んでいるをしていた。

「この魔裝武と呼ばれるものなんだが、この魔裝武に込められている力というか、魔力もどうやって込められているのか理由はいまだに解明されていないのだよ。神が作ったとしか言えないほどの不思議な魔力を込めている。」

クリウスの言葉を聞いて再び指へと視線を送ったが、クリウスの言う通り不思議なじがするのはわかった。

ってみてもいいですか?」

思わず本能的に質問したタクミであった。

「ああ。構わないよ。ただし指にはめるのは遠慮してくれ。指の魔力が発しかねないからね。」

クリウスの許可を得てテーブルに指にそっとれてみた。

タクミがれた瞬間、指がタクミに共鳴しているかのように青くりはじめた。

「なっ・・・!?」

「これは・・・!?」

この狀況にはクリウスも驚いた様子だった。タクミも急に指り出したのでびっくりして手を離した。タクミが手を離すと指は輝きを失って元通りになった。

「今のって一・・・?」

「おそらくは魔裝武が君の中にある魔力に反応したのだろう。・・・あながち異世界人が魔裝武を造り出したというのもあり得ない話ではないのかもしれないな。」

目の前で起きた現象に興味を示すクリウスであった。

「・・・話を戻すとしよう。それで君はこの指と同じようにこの世界に散りばめてある魔裝武なからずそのかつての異世界人、ケンジという人の手掛かりがあると考えているのだね?」

「そうっすね。あの神獣の話では他の所にも魔裝武を預けてあるようなことをいっていたので、魔裝武について調べればそのケンジっていう人についてわかると思うし、ケンジについて調べていけば俺がこの世界にきた理由がしはわかるんじゃないかと思いました。」

タクミは自分の考えを正直に述べた。

「確かにな。そのケンジという男と魔裝武に何も関係が無いということはないであろう。その考えは間違っていないと思う。・・・タクミ。君は元の世界に帰りたいんだね?」

クリウスからの思わぬ問いに考え込むタクミ。そしてしばらくの沈黙の後に口を開いた。

「・・・正直帰りたいと思うことはないんすよね。俺は、この世界に來るまでは本當に何の取柄もなく何のために生きているのかもわからないような生活をしていました。今更元の世界に帰ったところで何になるのかと思うこともあります。この世界に來て俺の日々は大きく変わりました。正直死ぬような思いもしたけど、俺はこの世界で初めて人の役にたてた気がしたんです。だからこんな風に誰かの力になれるのならこのままこの世界にいてもいいのかと思っています。ただ・・・」

「ただ?」

「俺はこの世界に連れてこられたときに言われました。俺が選ばれたのに理由なんてない。なんの運命でもないって。ただ俺自そうは思わないんすよね・・・俺がこの世界に來たのは必ず理由があるんじゃないかって。この世界で何かをし遂げるために連れてこられたんじゃないかってね。だから俺は、俺と同じように違う世界から連れてこられた人が何をしたのか知りたいと思うんです!だから俺はケンジって人について調べたいと思ったわけです。・・・これって変ですかね?」

タクミは自分の思いを言葉にした後思わず恥ずかしくなってしまいクリウスに尋ねてしまった。

クリウスは優しく微笑んだ。

「変なんてことはないさ。自分の存在理由を探すなんてことはきっと誰だって思っていることさ。実際私もこうして魔法騎士団の団長としてここにいるが、私もなぜここに自分がいるかなんてはっきりとした答えはわからずにいる。今は邪神教徒というわかりやすい活目的があるから迷わずに行することができるがね。私が死ぬまでに何をし遂げるべきなんて答えはいまだわからずじまいだよ。だから君のその気持ちは當然なものだと私は思うよ。こうして異世界から來た君が私が団長を務める魔法騎士団に団してきたのもきっと何かの運命なのだろう。これも何かの縁だから魔法騎士団の団長として君のことを応援しているさ。・・・今日は疲れているところ引き留めて悪かったね。今日はゆっくり休むといいさ。」

クリウスの優しい言葉に何かがこみ上げてきたタクミ。生まれて初めて誰かに肯定してもらったような気がした。

「・・・はい。ありがとうございます。」

タクミは深く一禮して立ち上がった。立ち上がったタクミは部屋を後にした。

「ふぅ・・・。」

部屋から出たタクミは深く深呼吸をした。こんなに人に対して自分の思いを伝えたのは初めてだった。なんだかし興しているようだった。

なんだか食も出てこなっかったので今日は夜ご飯も食べずに魔法騎士団の本部にある宿舎で寢ることにしたタクミだった。

部屋には二つベッドがあった。しかし時間が早いせいもあってか誰もおらずに一人でベッドに倒れこむように橫になった。

存在理由か・・・そんなこと考えるようになるなんて思いもしなかったな。

自分の心境の変化に戸いながらも寢ることにしたタクミであった。

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