《無能な俺がこんな主人公みたいなことあるわけがない。》四章 2 『貓耳娘』

遠くに見えた煙の原因を知るべく草原を駆け抜けその先にあった森も抜けたタクミ達。しかし森を抜ける頃には煙は消えてしまっていた。

「ちっ、もう見えねーな。なんの煙だったんだ?」

「たしか方角的にはあっちのほうだったと思うんだけど・・・」

ローゼが指をさす。その先を見たときアイズが何かに気付いた。

「あれは・・・?」

「どうしたアイズ?っておい!」

アイズがローゼの指さした方に向かいグリドラを走らせた。タクミ達もその後をついていく。

すぐにタクミ達も異変に気づいた。し走った先には地面に大きなクレーターが出來ていた。とてつもない衝撃で作られたと思われるクレーターはその中心を黒く焦がしていた。タクミ達が見た煙の正はおそらくこのクレーターが原因だったのだろう。

「なんだこのバカでかいは?隕石でも降ってきたのか?」

「微かに魔力をじる・・・これは誰かが故意的にしたものだろう」

アイズがクレーターを見下ろしながら呟いた。

「これを魔法でしたっていうのか!?何のためにだ?」

「目的まではわからないが相當な魔力の持ち主なのは間違いなさそうだ・・・」

「マジかよ・・・ローゼ、これと同じようなこと出來るか?」

「いや、さすがに私じゃここまでのものは作れないわよ。ラザリー姉さんならもしかしたらと思うけど・・・」

タクミはかつてアーバンカルで見たラザリーの魔法を思い出した。たしかにあれくらいと同じ魔法ならできるかもしれない。でもあれだけの魔法を扱える奴がそうそういるものなのか?

目の前のクレーターを見て考え込むタクミ。

「けどまぁ、無駄足じゃなかったみたいだね」

サリスがそういうとクレーターのさらに先の方を指さした。その方角を見ると先の方に町のような集落が見えた。

「あれは・・・町か!これで野宿は回避できそうだな!」

「ふぅーー・・・誰かさんの丸焼きを見ることもなさそうだね」

サリスは本気で俺を焼くつもりだったのか・・・?

町を見つけることが出來なかった時のことを考えて震いしたタクミ。

「まぁ、まずはあの町に行こうか?ここで考えていても答えは出ないだろうしな」

「ああ、そうだな」

タクミ達は大きなクレーターを迂回しながら遠くに見える町に向かった。迂回して改めて大きさを思い知った。

町の規模はアーバンカルの五分の一くらいといったところだろうか。そこまで大きい町ではないが、旅途中に休息をとるには十分なものだった。

人もそれなりにいるようで廃れている町ではないようで安心した。町に到著してタクミ達は二手に分かれた。ローゼとサリスが宿と食料の確保、タクミとアイズが報収集といった合に分かれて行することにした。

通行人に尋ねてわかったがこの町の名はシュナイズというらしい。このあたりではそこそこに栄えている町のようだ。

「なんか普通の町ってじだな」

「そうだな・・・しかしどうやら尾行されているようだ」

アイズがタクミにだけ聞こえるように呟いた。

「・・・っ!マジか?いつからだ?」

「ローゼ達と別れてからしたってからだ。ただ・・・どうやら悪意のある尾行ではないようなんだ。これはどうしたもんかな?」

「ん?どういうことだよ?尾行されてるならなにか手を打たないとまずいんじゃないのか?」

「まあそれもそうだな・・・タクミ、こっちだ!」

「え?って、うぉ!?」

アイズが突然タクミの手を摑み路地の方へ走り出した。しばらく走ってタクミとアイズはに隠れた。狹い隙間に向かい合うように隠れるタクミとアイズ。著していてアイズの顔が目の前にある。アイズの溫をじることが出來る距離だ。この狀況はタクミにはいろいろと刺激が強すぎる。

「ちょ・・・アイズ!近いんだが・・・」

「靜かに!來るぞ・・・」

それなりの年齢の男著しているのだがアイズは全く気にしていないようだった。一方でタクミは思わぬ狀況になんとか冷靜さを保とうとなるべくアイズの顔を直視しないように上を見上げていた。

それからしてタクミ達の走ってきた方から足音が近づいてくるのが分かった。そして聲も聞こえてきた。どうやらの聲のようだ。

「あれ・・・?確かこっちに來たはずだったんだけど・・・」

どうやらタクミ達を尾行していた張本人のようだ。見失ったタクミ達を探している様子だ。

「あれが私たちをつけていた者のようだ・・・どうするタクミ?」

あれって言われても上を見てるんだから何もわかんねーよ!!とりあえずこの狀況を長く続けるといろいろまずいとタクミは思った。

「と、とりあえず!直接話を聞くのがいいんじゃないか!?」

「そうだな・・・では行くとしようか」

アイズはそういうとから飛び出し、尾行してきた者の前に姿を現した。

「さてと、お前が私たちをつけていた者だな?一どういうつもりか聞かせてもらおうか?」

「きゃっ!」

突然現れたアイズの姿に驚いたように尾行をしていた者はもちをついた。その拍子で頭から被っていたフードがげた。

「ふうっ・・・いろいろやばかったぜ。って、この子が俺たちのあとをつけていたのか?」

タクミはあとをつけていた者の正を見て驚いた。フードの下から現れたのはの姿だった。赤い髪にパッチリした瞳。見た目から察するに年齢は10代前半くらいだろう。まだ全然子供のようだ。はタクミとアイズの姿を怯えたように見上げている。

ただ一つの姿に違和があった。

の頭には貓のような耳がついていたのだった。つまり貓耳だ。の貓耳はピクピクと恐怖からか小刻みに震えている。

「・・・貓耳?」

「どうやらこの子は亜人族のようだな」

「亜人族・・・?」

のどこかに獣と同じような的特徴のある民族だよ。まだ隨分いようだが・・・」

アイズがの方を見る。がそれを見て怯えたように固まる。何かを言いたそうに口をパクパクさせていた。

「お、おい・・・大丈夫か?」

見かねたタクミが優しく聲をかけた。それを聞いてハッと我に返ったようにが立ち上がった。

「あ、あの!お二人に私のお話を聞いてもらえないでしょうか!?」

はそういうと深々と頭を下げた。

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