《無能な俺がこんな主人公みたいなことあるわけがない。》四章 6 『激突』
「さてと・・・」
徐々に見えなくなるローゼの姿を見送りながらタクミは呟いた。その直後背後の方で聲が聞こえてきた。
「はっ!付き人の野郎は囮おとりとして置いていかれたか!?なかなか非なお仲間たちじゃねーかよ?あぁ?」
そう吐き捨てるように狼人族のボルスが近づいてきた。もう一人は晝間ボルスと一緒にいた男だった。
「誰が囮だよ、この犬っころ。あいつ等は非な仲間じゃなんかじゃねーよ。むしろ俺がここに一人でいるのは信頼されてる証なんだからな!」
「い、犬っころだと!?この野郎・・・人間風が一度ならず二度も俺を犬呼ばわりしやがって!晝間忠告したはずだ!お前の元は俺が噛み千切ってやる!」
ボルスは興した様子で走った目で歯ぎしりをしている。
「落ち著けボルス・・・そんな安い挑発にのるな。そんなことでは勝てる戦いも落とすことになるぞ」
興しているボルスをもう一人の狼人族の男がなだめる。
「ふーん・・・もう一人のあんたはじないんだな。お前らの目的はなんだ?シャムミルがに著けていた首飾りが狙いなのか?」
「ふっ、どうやら事は聞いているようだな?確かに私たちの目的はあの首飾りだ」
「一何のために?」
「そこまで教えてやる義理はない・・・私たちは時間が惜しいのだ。ここで君と押し問答するつもりない。邪魔しなければ見逃してやるがどうするかね?」
「へっ!あほか・・・!ここで引くくらいなら始めっから首なんか突っ込まねーっての!お前らはこの先には一歩も行かせねーよ。」
「そうか・・・それは非常に殘念だ」
「もういいよな!?こいつは俺が殺す!あんたは手を出すなよ!」
「好きにするがいいさ・・・」
ボルスがもう我慢できないといった様子でじりじりとタクミの方へと近づいてきた。
「おいおい、せっかく2対1なんだから遠慮せず一緒にかかって來いよ?大勢で一人を襲うのはお前らの得意分野だろ?」
タクミが不敵な笑みを浮かべながら人差し指をちょいちょいとかし挑発する。
「貴様ぁああ!!もう許さねぇ!!元噛み千切るだけじゃ足りねぇ!!全を噛み砕いてバラバラにしてやる!!」
怒りが頂點に達したボルスは大きく口を開けながらタクミの方へと突進してきた。
タクミがもう一人の男の方をチラッと確認した。どうやら本當に手を出すつもりはないらしい。その場からこうとしない。
「よそ見してんじゃねぇ!死ねぇえ!」
勢いよく近づいてきたボルスが鋭い牙の生えた口を大きく開けてタクミを頭から喰ってやろうと迫ってきた。
「よそ見じゃねーよ、ただの余裕の現れだっつーの・・・ドラゴンフレイム!!」
「・・・っ!?」
タクミの呪文によって炎龍が現れた。噛みつこうとしたボルスだったがタクミの炎龍によって後方へと勢いよく飛ばされた。
「てめぇ・・・その力、何者だ?」
「さあな?そこまで教えてやる義理はないんじゃなかったか?違ったか?ん?」
「どこまでもむかつく野郎だ!だったらこっちも本気で行くだけだ!狼人族の力を舐めるなよ!魔獣化ビーストモード!!」
「魔獣化ビーストモード・・・?」
ボルスが力を溜めるような姿勢でんだ。 するとボルスの全を禍々しい紫のオーラが包み込んだ。
明らかに雰囲気が違う・・・人の姿から遠ざかりも一回り大きくなり、牙もさらに鋭くなっているようだった。亜人というよりは獣そのものといったじだ。
「これこそが俺の本気の姿だ!覚悟しやがれぇ!!」
「なるほど・・・パワーアップみたいなものか。だけどその程度だったら大したことねーぞ!!ぶっ飛ばせ!ゴーレム!!」
迫りくるボルスを地面から現れた大きな拳が毆り飛ばした。
「ぐぉおお!!」
毆られたボルスは數メートル吹き飛ばされた。口からはを流してうずくまっている。
「な、なにが起きたんだ・・・?今の力は一・・・」
突然の出來事に狀況が呑み込めないボルス。
「これでわかったか?これ以上痛い目見たくなかったらおとなしく帰れよ」
「炎の次はゴーレムの召喚だと!?てめぇ・・・本當に何者だ!?」
ボルスがを流しながら立ち上がりんだ。
「ああん?ただの通りがかりの旅人だよ。しいて言うなら元魔法騎士団に所屬してしたってことくらいかな」
「魔法騎士団だと・・・?お前のような奴がか!?笑わせるなよ!お前のようなふざけた奴がそんなわけないだろ!」
「はぁ・・・まあ別に信じなくてもいいけど。それでまだやるのか?」
「當たり前だ!お前の元を噛み千切ってやらねーと気が済まねーんだよ!」
ボルスは懲りずに再びタクミの方へと突進してきた。
「やれやれ・・・狼ってもっと賢いんじゃないのかよ?これじゃまるで豬だな。もう一度ぶっ飛ばせゴーレム!」
再び地面から巨大な拳が現れ迫りくるボルスを振りぬいた。
しかし今度は空振りに終わったようだった。ゴーレムの右手が降りぬいた跡には何もなかった。
「・・・消えた?っ!?」
すぐにタクミは気付いた。そこからし離れたところにボルスを肩に抱えるようにもう一人の狼人族の男が立っていた。どうやらボルスは完全に気を失っているようだった。
あの男・・・あの場所から一瞬で移してゴーレムの拳を避けながらボルスを助けたっていうのか?
タクミは最初にもう一人の男が立っていた場所を確認した。どうみても2、30メートルは離れていた。
「まったく・・・君も人が悪いな。そこまでの力を持っていながら隠しているとは・・・」
「・・・別に隠してなんかねーよ。それよりも次はあんたが俺の相手か?」
「晝間の騎士もなかなかの手練れだったようだが、こちらも悪くはないな・・・ボルスに任せるには荷が重すぎるようだ。よかろう、ここからは私・・・狼人族の戦士長であるザックがお相手することにしよう!」
自らをザックと名乗る狼人族の男は肩に抱えていたボルスを地面に寢かせるとに著けていたマントをぎ捨てた。
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