《無能な俺がこんな主人公みたいなことあるわけがない。》四章 9 『神を名乗る

凄まじい速さで空を引っ張られているタクミ。タクミの腕を引っ張っているのは後ろ姿から察するにどうやらのようだった。長い黒髪を風になびかせながらタクミの方を振り返ることもなくどこを目指しているかはわからないがさっきの白髪男から離れようとしているのはなんとなくわかった。

「おいっ!ちょっと!なにがどうなってるんだよ!?」

「・・・」

タクミの呼びかけにもは反応しなかった。

無視かよ・・・それにしてもなんて速さで飛ぶんだこの。この速さ普通じゃないよな・・・

タクミはの飛行魔法の速さに驚いていた。タクミも飛行魔法は使えるがここまでの速さを出せる気はしなかった。このと空中鬼ごっこしたら絶対負けるな・・・タクミはそう思った。

しかしいつまでも荷のように引っ張られるわけにはいかないのでタクミの腕を摑んでいるの腕をタクミも握り返した。

「おい!いつまでこうしてるつもりだよ!どこまで連れて行くんだ!?」

「ひゃっ・・・!もういきなり摑まないでよね!ビックリするじゃない!」

は驚いたような表でタクミのほうを振り返った。

振り向いたの顔は大きな瞳に顔で見たところ10代前半かと思うような見た目だった。腰くらいまでびている黒髪がタクミの前をなびいて鬱陶しかった。

「いや先にいきなり摑んできたのはそっちだから・・・それでどこまで行くんだ?」

「もうし待って。そうすれば安全圏のはずだから・・・そこまでいけば説明してあげるから」

「そうか・・・わかったよ」

とりあえずはこのの言うことを聞くことにした。それからし飛び続けたところでは適當な巖の上にタクミと共に著地した。

「ふうっ・・・ここまで來れば大丈夫でしょ。君、怪我はない?」

「ああ。俺は大丈夫だ、それで約束通り説明してもらおうか?」

「君・・・まずはお禮を言うのが先じゃないかなぁ?私が助けなきゃ間違いなく死んでたんだよ!?」

は不機嫌そうなじでタクミに詰め寄った。確かにの言うとおりだ・・・あのまま戦いを続けていたら間違いなくタクミは死んでいただろう。それはタクミ自にも理解できていた。

「あ、ああ・・・そうだったな。確かにアンタが來てくれなかったらどうなっていたかわからなかった。その・・・助けてくれてありがとな」

「いえいえ、どういたしまして!しかし私も驚いたわ!まさかあいつに対抗できる人間がいたなんて!わずかでもあいつの力に耐えたのは凄いわよ!君一何者なの!?」

それはこっちが聞きたいんだが・・・タクミはそう思ったがまた機嫌を損ねても面倒なのでとりあえずは言われたことに答えようと決めた。

「俺は・・・ただの旅の途中だった男だよ。ちょっといざこざに巻き込まれて仲間とはぐれちまったんだ」

「ふーん・・・旅の途中ね。それで名前はなんて言うの?」

「名前はタクミだ。そういうアンタはなんて言うんだ?」

「タクミか・・・聞いたことない名前ね。私はヴァルケリア。呼びにくいならヴァルって呼んでくれたも良いわよ?」

「じゃあヴァルって呼ばせてもらうわ。それでヴァル、さっきのあの白髪男・・・あいつは一何だったんだ?」

「君が會ったさっきの男は・・・出會った全てに絶を與える存在。その名をイブリスと言うわ」

ヴァルケリアは深刻そうな表で言った。

「イブリス・・・俺はあいつから今までじたことないような力をじたんだが、あいつは一何だったんだ?」

「まぁそうでしょうね・・・あんなのが他にもいたらたまったもんじゃないわ。あいつはその危険から神の世界を追い出された存在なのよ」

「・・・神?」

聞きなれたような聞きなれないような単語が出てきて呆気にとられるタクミ。

「そう・・・あのイブリスは元は神だったのよ。しかしあまりの危険さに天界を追放された墮天の存在なの」

「ちょっと・・・何言ってるかわからんのだが。え?宗教の話かなんかなのか?」

「違うわよ!紛れもない本當の話なの!神よ!神!聞いたことない!?」

「いや神様は聞いたことあるんだが・・・実在するのか?」

「するわよっ!なんなら今君の目の前にいる私もその神の一人なのよ!?」

「・・・ハイ?」

いきなり話が飛躍しすぎてタクミの理解力が追い付かなくなっていた。

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