《無能な俺がこんな主人公みたいなことあるわけがない。》四章 10 「生き殘り」

「何よその表?まるで信じてないって顔ね?」

「え?いやー・・・信じてないっていうか信じられないっていうか・・・いきなり自分は神だって名乗られたもよくわかんないんだけど」

「わかんないってどういう風に私も説明したらいいかわかんないわ。ただ私は事実を言っているだけなのだから。私は神よ!それ以上でもそれ以下でもないわ!」

ヴァルケリアは自慢げに言う。しかし説明が簡潔すぎてまったく理解が追い付かなかった。

「わ、わかった。ヴァルが神様なのはわかったよ。それでその神様がこんなところで何をしてるんだ?」

「それはイブリスを封印するために追っていたのよ。さっきもいったけどイブリスは神々の世界・・・天界を追放された存在なの。でもその危険から人間界でイブリスを放置しとくのは人間の絶滅に繋がるかもしれないからと天界から討伐軍が組織されたのよ。私はその一員なの」

「へぇ・・・討伐軍か。でもみたところヴァル一人みたいだけど、討伐軍ってことは他にもいるのか?」

「他は・・・もういないわ」

「え?」

ヴァルケリアは険しい表を見せた。

「私以外の討伐軍はもういないのよ・・・他の皆はイブリスによって殺されてしまったわ・・・」

「っ!?それってマジかよ!?」

「本當よ・・・私たちの読みが甘かったのよ。イブリスの力はあまりにも強大すぎだったわ。大勢の仲間が死んでしまったわ・・・なんとか生き殘った私はイブリスの向を探るためにバレないギリギリのラインであいつのことを監視していたのよ。でも、そしたら人間がイブリスに対抗してるじゃないのよ!あんまりのことに驚いて本當だったら他の人間の戦いに不用意に関與したくなかったけどこれは見殺しに出來ないと思って助けに行ったのよ」

「そうだったのか・・・」

「そうよ。でもこれでイブリスに私の存在がバレてしまったのは間違いないわ。正直今あいつに會っても勝てる可能はほとんどゼロに近いわ。だから今はあいつと會うことだけは絶対に避けないといけないわ・・・」

ヴァルケリアは怯えたように肩を押さえ小刻みに震えていた。それだけ前回のイブリスとの戦いによってヴァルケリアに恐怖を刻み込んでいたのだろう。

タクミは震えるヴァルケリアの肩に手をれた。

「そんなに危険なことなのに俺のこと助けてくれたありがとうな。イブリスの奴には俺も借りがある、このままやられっぱなしのまま終わるつもりはねぇからよ。次の戦いのときは俺もヴァルの力になるように頑張るからそんなに怯えんなよ」

「・・・っ!お、怯えてなんかないわよ!そんなの當たり前でしょ!じゃないと君を助けた意味が無駄になっちゃうじゃないのよ!」

ヴァルケリアは怒ったようにタクミの手を払った。それからし恥ずかしそうに顔を赤らめながら呟くように言った。

「でもまぁ・・・その一応禮は言っとくわ。その・・・ありがと」

「・・・ん?なんか言ったか?」

「な、なんでもないわよ!それでこれからどうするの!?君たしか旅の途中って言ってたよね?」

「ああ、たしかキャトルって村を仲間達と目指して向かっていたんだけど々あってはぐれちまったんだ」

「キャトル・・・?たしか貓人族の村だったかしら?それなら私知ってるわよ」

「マジか!?俺たち一刻も早くその村に行きたいんだよ!その村に行ってしなくちゃならないことがあるんだ!!」

タクミがヴァルケリアに勢いよく詰め寄った。イブリスとの戦いのあとヴァルケリアに連れ去られたおかげでキャトルの村がどこなのかタクミにはわからなくなっていた。

「わ、わかったわよ!どっちみち君をもうほっとくことは出來ないしね。私がキャトルの村まで連れて行ってあげるわ」

「助かるよ!!それじゃあさっそく頼むよ!」

「ええ、急ぎましょう。でも最短ルートではいけないわよ」

「なんでだ?」

「最短ルートで向かおうとするとさっきイブリスの方がいたところの方を通ることになるわ。悪いけどそれは出來ないから一杯迂回してキャトルの村を目指すことになるわ」

「そうか・・・それなら仕方ないな。でもなるだけ最速で頼むよ!」

「言われなくてもわかってるわよ・・・それじゃあ行くわよ?」

ヴァルケリアは立ち上がった。

「君、飛行魔法は使えるの?」

「使えるけど・・・正直ヴァルの速さには追い付ける気はしないぞ?」

「まぁそうでしょうね!私の飛行スピードは天界でも自慢できるほどだったのだから!人間である君が勝てないのは無理ないわ!」

よっぽど飛行に自信があるのかヴァルケリアは自慢げに言った。まああの速さは正直自慢しても良いレベルだとは思うが・・・こう言われるとちょっとムカッとする。

「それじゃあどうするんだ?」

「しょうがないから私が君を運ぶ形で飛ぶわ。別々に飛んではぐれても困るし!それじゃあ捕まって」

そう言ってヴァルケリアはタクミに背中を向けた。

「捕まるってどこに・・・?」

「はぁ?そんなの背中に決まってるでしょ?両手でしっか捕まってないと振り落とされるわよ?」

10代と思われるの子に背中に捕まるのは仕方ないとはいえ正直抵抗はあった。時と場合によっては犯罪になる可能だってある。タクミは躊躇していた。

「ちょっと?何してるのよ!?早くいかないといけないんでしょ!?」

苛立った様子のヴァルケリア。タクミは覚悟を決めてヴァルケリアに捕まった。

「・・・わかった!いくぞ!」

背中に捕まる予定だったタクミ・・・しかし勢いよく近づいたせいで躓き、背後からヴァルケリアに抱き著くようになってしまった。

小柄なヴァルケリアを後ろから抱きしめるような姿勢になってしまった。

「ひゃっ・・・!ちょっとどういう捕まり方してんのよ!!」

「す、すまん!間違えた!」

「ちょ、ちょっと変なところらないで!もう私の肩にしっかり捕まってよね!」

「わ、わかった!・・・これでいいか?」

「うん・・・もう驚かさないでよね?それじゃあ行くわよ!」

「ああ!頼む!」

しっくりくる姿勢になったところでヴァルケリアはタクミを乗せ空へと飛び立った。

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