《戦力より戦略。》好きな者のために
「お集まりの方々、ここに、2人の花嫁がおる」
そこには息をのむほどのしさを備えたレインとプリンセ。
政略結婚と諦めていた者も、否が応にも期待が高まる。
「ここは、2人それぞれから言葉を貰うとするかの」
注目が一斉に2人に集まる。
「まず、私からいきましょうか」
レインが進み出る。
「私は、結婚する気はありませんでした。なぜなら、最の人を失っていたからです」
それは皆が承知の上である。
だからこそ、求婚していたのだから。
以前であれば、レインに求婚するという事は全くの無名から二つ名ダブル持ちとなり、現在では同盟國であるドルガバを相手取ってその力を見せつけたという男を敵に回すという事に他ならなかったからだ。
「ですが、最近になって狀況が一変しました。まだ心の整理がついているとは言い難いですが、結婚という事にも考えが及ぶことになりました」
レインがスッとプリンセに譲るように一歩下がる。
「……私も、同じようなじかな。……獣人族の姫として、強い人と結婚したいと思うのは當然。……そして私が結婚してもいい、いや、結婚してしいという人を見つけた」
「……その人は強くて、とてもやさしい。……私はお父さんに許してもらえなくても、その人と一緒にいたい」
「さぁ! その相手とは誰じゃ!」
王様が一層聲を張り上げ、候補者たちが一様に期待にを膨らませる中、2人の目の前に1人のタキシードを著た男が舞い降りた。
もちろん、俺だが。
「お嬢様方、お迎えに上がりました」
「待ってましたよ……」
「……ん」
なぜ、わざわざこんなややこしいことをして候補者たちを集結させたか。
誰のものに手を出したのかを理解させるためだ。
なぜ、王様にこの場を取り仕切ってもらったのか。
王の公認すらも、既に勝ち取っていると貴族共に理解させるためだ。
なぜ、本人たちの言葉が必要であったか。
これが、本人たちの意志によるものだと否応なく理解させるためだ。
そして、なにより。
今まで2人に言い寄っていたというのが気に食わなかったからだ!
「お、お前は……!」
勘のいい者、元の俺を覚えている者が反応し、それは伝播していく。
2人の手を取った俺は振り向き、皆にアピールする。
「2人は、俺のものだ。誰であろうと、奪おうとする者は許さん。もちろん、手を出した者もだ」
そう言って、黒紅を抜く。
「何を!?」
いきなり武を抜いた俺に、臨戦態勢になる者多數。
なにせ、貴族が多いのだ。
護衛の數も半端ではない。
しかし、それを覆せるのが二つ名持ちである。
「オーシリア、首尾は」
「上々じゃよ。あ奴らごときにばれるようなものじゃないからの」
既に、この會場はオーシリアによるステッド・ファストで覆われている。
唯一、抜ける道があるとすれば。
「さぁ、行こうか」
「はい!」
「……うん!」
2人をエスコートしながら、空への階段を登る。
その景に、誰もが目を見張る。
上空は、キラでさえ容易には到達できない俺の獨壇場だ。
誰にも、邪魔はさせない。
「あぁー、気持ち良いなぁー!」
「格悪いですよ、リブレさん?」
「いいんだよ。俺はもう遠慮しない。レインとプリンセのためなら、どんな手でも使ってやるさ」
これで、下にいる人たちには「自分が何も出來なかった」という意識が植え付けられる。
こ・れ・か・ら・ラ・ン・ガ・ル・を・出・る・俺たちにわざわざ追いかけて手を出そうとする者はいなくなるだろう。
「さぁ、旅の始まりだ」
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