《異世界スキルガチャラー》戦いを終えて
「……俺、こっちに來てからまともに「就寢」って形であんまり寢てない気がする」
ゼーテと引き分けた後、啓斗は病室で一人、目を覚ました。
脇腹の傷は治っておらず、ベッドから出ようとするとズキズキと痛んだので、再び橫になり、何となく腕時計を眺める。
腕時計は午前11時を指していた。ならば、啓斗は6時間気絶していたことになる。
それを確認すると、啓斗は再び目を閉じた。
まだ午前中ということは、晝食の時間にでも誰か來るだろうと思ったからだ。
かなり気絶していたはずだが、案外あっさりともう一度眠ることが出來た。
啓斗はその後、を激しく揺すられる覚で目を覚ました。
「……起きたね。お晝、持ってきといたから食べて。じゃ」
無理やり人を起こしてさっさと出ていこうとする。
「ちょっと待て。1つ聞きたいことがある」
しかし、啓斗は強い口調で強引に引き止めた。
「……なに?勝負は引き分けで良いわよ、何かある?」
明らかに不機嫌な態度でゼーテは啓斗に向き直る。
「すぐに済むから聞いてくれよ」
そうして啓斗はこう質問した。
「この國で1番強いのは本當にお前達雙子なのか?」
その質問にゼーテはしだけ右眉を上げながら答える。
「まぁ、そうね。戦闘能力的に言うなら私とシーヴァが2強。これは間違いないわ」
「……そうか、もう大丈夫だ。すまないな」
啓斗はを起こして頭を下げる。
「何が目的か分からなかったけど、まあいいわ」
「あ、シーヴァ達も後で來るって言ってた。それじゃ」
ゼーテはいつもの雰囲気を崩すことなく部屋を出ていった。
30分後、晝食を食べ終わった直後にシーヴァとルカが連れ立って部屋にってきた。
「ああ、ケイト!ゼーテがすまないことをしたようだ!あの馬鹿に代わって深く詫びる!」
シーヴァはって來るなりそう言って土下座に近い勢で座り込んで頭を下げる。
それに若干引きながらチラッとルカに目を向けると、啓斗は危うく聲を上げそうになった。
その姿がほんの一瞬だが何か人間とは違う別の生に見えたのだ。
一瞬すぎてよく分からなかったが、その両目はギラギラとこちらを見ていた。
(……ここ數日の疲れだな。長まで変わって見えたぞ)
啓斗はそういう風に納得することにした。
「実は、今日にでも君らの団式をしようと思っていたんだが、そのケガでは難しいだろう」
「だから、明日に延期することにした。じゃあ、明日にまた。僕は急用があるんでね」
シーヴァは早口に言い切ると、素早く部屋を後にした。
「私は、ここにいる。どうせ今日は何もする気起きなかったから」
ルカはそう言ってベッドの橫に腰掛け、ニッコリ笑った。
「ゼーテ、一何のつもりであんな事をしたんだ!特別団試験だなんて噓までついて!」
駆け出した勢いそのままゼーテの部屋に駆け込んだシーヴァは、ゼーテを問い詰めていた。
「………………」
ゼーテはシーヴァと目を合わせずに黙りこくっている。
「答えろ!僕に勝っていた時點で実力は十二分に分かっていただろう!それなのにお前は!!」
シーヴァの剣幕にも一切反応を示さずに橫を向いたままだ。
「おい!ゼーテ!聞いているのか!?ゼー……」
「聞いてるよ!いちいちうるさいのよアンタは!」
シーヴァの言葉を遮ってゼーテがぶ。
「理由!?そんなの、決まってるじゃない!」
その目には涙がっていた。
「アンタが…アンタが負けたからよ!アンタの強さは1番私がよく知ってる!」
「それに、魔力に枷がはまってる・・・・・・・・・・としても、アンタは私より……!」
だが、最後まで言い終わる前にシーヴァが口を塞いだ。
「ゼーテ!やめろ!お前の方が上なんだ!人前ではそういう風にする・・・・・・と約束しただろう!」
必死にそう言うが、ゼーテの目は悲しみと虛しさに満ちている。
「……この話は終わりだ。彼は僕に勝ち、お前とも引き分けた。それに人柄もいい」
「……そうね、分かった。確かに、彼は良い人だし、友人になりたいとも思ってる」
「なら良い!じゃあ、明日を楽しみにしようじゃないか!必ず素晴らしい式になる!」
つい數秒前までの言い爭いはどこへ行ったのか、シーヴァはいつもの調子を取り戻した。
「じゃあ、また後でな。さっきまでのことは忘れるんだ。いいな」
そのまま部屋を出ていき、ドアを靜かに閉める。
「……でも、私のせいでこんなことになったのに」
ゼーテは人前で絶対に見せない自の「素」で獨り言を言う。
「……お兄ちゃんに全部背負わせたままじゃダメなのに」
そのままゼーテはベッドに突っ伏して嗚咽おえつをらして泣き出した。
ドアの向こうでそれを聞いていたシーヴァも、両目を覆っていていた。
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