《異世界スキルガチャラー》P.M.9~10時 幽霊屋敷への招待

「……カ、………カ!」

「ルカ!起きて!ルカ!」

ゼーテの聲で目を覚ます。

「ふぇ?あれ、私達、屋敷に著いて、それで……」

周りを見渡してみる。

玄関と思わしき大扉、カーペットが敷かれた階段は2階でいくつかの部屋に続いている。どうやらここはエントランスホールのようだ。

「え? なんで私たち屋敷の中にいるの?」

ルカはそこでようやく異変に気がついた。

「よかった、すぐに気がついて。何かの力で中に引きずり込まれたみたい。そこの玄関の扉は開かなかったわ。……閉じ込められたのよ、私達」

ゼーテの言葉に、ルカは冷や水を背中に流し込まれたような覚になった。

「え…ってことは、事件の當事者一家の家に監された…ってこと?」

「そういうことになるわね」

ゼーテの表もいつもより暗い。

そんな中で、2人の視界の端にくものが映った。

同時に、1階のドアのひとつがこちら側に開く。

「誰か……いるのかしら?」

「行くしか……ないよね?」

ルカも恐る恐る立ち上がり、2人でドアに近づいていく。

「私が先に行く。後ろを見張ってて」

ゼーテが開きっぱなしのドアの奧にしずつ進んでいくのを見つつ、背後を警戒するルカ。

だが、ここでも2人はミスを犯した。

こういう場合、室ならば二人一緒に行すべきなのだ。

だが、ゼーテは魔との戦闘経験から、「常に背後を警戒」という癖を刷り込まれてしまっていた。

つまりどうなったかと言うと、ゼーテがドアの奧の空間にった瞬間に勢いよくドアが閉じたのである。

「え!?」

「まずい、油斷した!」

すぐにルカがドアノブを回すが、案の定開かない。

「ルカ、どいて!ドアを斬り開く!」

ルカが大きくバックステップした瞬間、ゼーテがドアに斬りつける。

しかし、

っ!? 噓でしょ、どう見ても木製のドアなのに!」

ゼーテは相當の力を込めて斬りつけたのだが、ドアは剣を弾き返し、「カキィン!」という音を立てた。

「ゼーテさん、私は、だ……大丈夫だから、進んで。そ……それに、二手に別れたほうが効率いいよ?」

そうは言うが、ドア越しのルカの聲は震えている。

「ルカ、すぐにそっちに行くから!この、ただのドアなのに!」

ムキになって2度、3度と斬りつけるがドアには小さな傷1つ付かない。

すると突如、

「キャアアアアアアアア!!」

ルカの、耳をつんざくような悲鳴が響き渡った。

「……!? ルカ!? ルカ、大丈夫!? ルカ!?」

しかし、返事は無かった。確実に何か起こったのだろう。

ゼーテは最後に渾の一撃をドアに叩き込み、何も起こらないことを確認すると、振り向く。

そこは、廊下だった。かなりの長さ続いており、右側には窓が大量に付いている。

だが、窓は真っ黒に塗られており、外が一切見えない。

「外の狀況すら確認させてくれないわけね。ここの亡霊さんはかなり計畫的みたい」

恐怖からか、獨り言を繰り出しながら薄暗い廊下を歩く(確認していなかったが、し暗めの照明が點いているのだ)。

ドアを見つけ次第ノブを回すが、開くものがない。

焦りながら廊下を進んでいると、曲がり角に突き當たった。

慎重に曲がり角から顔を出す。何もいないことを確認し、もう一度歩き出そうとすると、

「お姉さん、僕の家で何してるの?」

背後から聲をかけられた。

振り向くと、ゼーテよりも2、3歳ほど年下であろう年が立っていた。

服裝は、普通の街人が著るようなものではなく、所々に細かい裝飾がわれた高価なもの、つまり貴族が著るような服だ。

(この子が、貴族の亡霊……?)

パッと見る限り、幽霊や亡霊に見られるようなの青白さもなく、腳もしっかりとある。

「分かった!道に迷って訪ねてきたんでしょう?外はすごい雨だし、ちょっと休んでいって下さい!」

その言葉を聞いて窓をもう一度見ると、窓に塗られた黒い何かは消え去り、土砂降りの雨が降る外の様子が見えた。

「著いて來て下さい。お客さん用のお部屋に案しますから」

そう言ってゼーテの橫を通り抜けて廊下を歩いていく。

「早く!気づきませんか?ずぶ濡れですよ!」

言われて、自分のを見ると、確かにビショビショに濡れていた。

(……!? さっきまでは全然濡れてなかった! しかも、雨だってあの子の言葉に呼応するように降り始めた……)

「一、どうなってるの?」

ゼーテは、あの年に著いて行くべきか悩んだが、結局行ってみることにした。

「ゼェ、ゼェ、何とか撒いたか……」

啓斗はあの後、謎の人影からどうにか逃げ切り、屋敷に辿り著いた。

「ここが、その呪いの屋敷か」

改めて屋敷を見上げる。街の中にあった他の家とは比べにならないレベルで大きい。

正門は開いていたので、中にってみる。

「庭からして広いな。屋敷の中もかなり広そうだから、ルカ達を探し出すのも一苦労か……」

そのまま玄関に近づくと、見覚えのある機械が発しているのに気づいた。

「……俺の腕時計だ。何故こんな所に?」

啓斗の腕時計が玄関の石畳の上に落ちていた。幸い壊れてはいないようだが、確かにルカに渡したはずのこれが落ちているということは………。

「確実に何かあったな。とにかく、2人を探そう」

啓斗は勢いよく玄関の扉を開け、中にる。った瞬間にまた勢いよく扉が勝手に閉まる。

窓の外に土砂降りの雨が降り出した。

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