《異世界スキルガチャラー》A.M.1〜3時 呪いが消えた街で

「ああ……まだ痛むぞケイト!手を抜いてるんじゃないか!?」

シーヴァが顔をさすりながら言う。

「ギャーギャーうるさいぞ。俺はまだ他人をちゃんと治せる魔法は會得してないんだ。そんなに言うなら自分でやれ」

啓斗は床に座り込んだままぶっきらぼうに言った。

「むう、それもそうか。よし、苦手だがしやってみよう。この僕にできない訳が無い!」

そう言うとシーヴァは手に魔力を集中して治癒魔法を試し始めた。

「あ、いた!おーい!ケイトくーん!シーヴァさーん!」

廊下の向こうから、ルカの聲が聞こえた。

顔を向けると、ゼーテとルカが走って來るのが見えた。

しかし、一つだけ妙な點がある。

ルカが小さなの子を抱えていることだ。

「……ルカ、その子は、マリーだな?」

啓斗は直にマリーの顔を見てはいないが、2人の様子からそれを察知するのは簡単だった。

「うん、解呪したんだけど、実は生きてたみたいで」

はい、とマリーの顔を啓斗に見せる。

「……起きる前に家から連れ出そう。変に刺激するといけないかもいれない」

啓斗はその後、3人とマリーを屋敷から出して迎えの手配を頼んだ後、1人地下室へ向かった。

「……骨くらい、埋葬してやらないとな」

地下室に無殘に転がる骨を拾い集める。

いくつか集め、頭蓋骨を見つけた時、異変をじた。

頭蓋骨が淡くっているように見える。

「……これは?」

啓斗は、頭蓋骨にれる。すると、頭の中に映像が浮かび上がってきた。

「兄貴……もう、俺らにみはないんだな?」

ユーリが今まで見せたことのない悲しそうな笑顔で言う。

「ああ……後は、マリーに全部託すしかできない」

僕とユーリはもうすぐ殺されてしまうだろう。

両腕は綺麗に切斷され、魔力も使い切ってしまった。

それでも、最後の魔力の使い方は間違っていなかったと願いたい。

「兄貴、俺達、マリーになにしたんだっけ?死ぬ前にもう1回教えてくれ」

「はぁ、今から殺されるっていうのに隨分と余裕だな。

いいか? 僕達は、マリーにありったけの魔力を注ぎ込んで、それを変異させて呪いへの抗を作り出した」

「降霊が完した瞬間に、マリーの中の抗が働いて魔神の召喚を妨げる」

「その後にどうなるかは予想がつかない。暴走して街一帯を消し飛ばすかもしれないし、上手く行けばマリーのに呪いが封印されるかもしれない」

そこでユーリの顔がしだけ明るくなる。

「呪いが封印されたら、マリーは死なずに済むかな。それなら、あの「硫酸」を作った甲斐があるってもんだが」

「そうだな。マリーに呪いが封印されて、父様と母様に何かが起きるのが可能が高いと思う」

「そうか。じゃあ、俺らも幽霊になれたりしてな!」

ユーリは、これから死ぬというのに、本當に明るかった。

「……今のは、生前のジョンの最後の記憶、か」

啓斗は頭蓋骨2つを拾い上げ、近くにあった大きめの瓶にれる。

ふと、何故突然あんな映像が見えたのか気になった。

「ああ、スキルか?」

腕時計のスキル一覧畫面を呼び出す。

案の定、答えとなるスキルがあった。

URスキル  【追憶の目】

品に殘る殘留思念を読み取り、生前の最後の記憶を脳裏に呼び起こすことが出來る。

記憶の鮮明さは、殘留思念の強さに左右される。

「……そういえば、一度に2つのUR出たの初めてだな」

酷い目にあったがガチャ的にはラッキーか、なんて思いながら頭蓋骨と他數本の骨をれた瓶を持って地下室を出る。

「……中々TRは出てくれないな。まあ、チートって付いてるんだから滅多に出ないんだろうな」

啓斗はそのまま屋敷を後にした。

一方、ゼーテ、シーヴァ、ルカは、馬車を待ちがてら、マリーについて話し合っていた。

「それで、この子はどうするんだ?」

シーヴァの質問に、2人とも頭を捻る。

「んー、やっぱり保護するのが1番いいんじゃない?」

「そうね、解呪したとはいえまだ危険が無いと決まったわけじゃないし」

やはり、騎士団で保護する方針で行くようだ。

「……ん? そこにいるのは誰だ?」

シーヴァが後ろに気配をじて振り向く。

そこには、30歳前後であろう紳士と、同じくらいの年齢のが立っていた。

2人はマリーをじっと見つめている。

「………すまない」

それだけ言って紳士は消えていった。

の方は、月の形を象ったネックレスをシーヴァにそっと手渡し、マリーの方をもう一度見て消えた。

「……この子の両親だろう。コープスドラゴンを倒した直後に追ってきた怪がこれを著けていた」

ネックレスをマリーの首にかける。

「最後に、娘の顔を見たかったんだろう」

ネックレスは大人サイズなので、マリーのにはし大きかったが、地面に當たる程ではなかった。

「あ、ケイト君來た!」

その後、啓斗が高速で走ってきた。手には骨のった瓶を持っている。

「ふう、遅くなった。まだ迎えは來てないか」

啓斗は瓶を持ったまま座り込む。

「ああ、長い1日だった」

シーヴァが空を見上げながら言う。

「俺はまだこの世界に來てから1週間と2日しか生活してない。なのにここまでやられるとは思ってなかった……」

啓斗は疲れきった顔で言った。

「そうか……じゃあ、帰ったらしばらく休日をもらおう」

シーヴァの提案に、啓斗のみならず他2人も頷いた。

馬車はその數分後に到著。

4人とマリーはすぐに馬車に乗り込み(マリーは何故か啓斗が抱えさせられた)、街を後にした。

(あの聖水は、呪いを解くためのものじゃあなく、マリーのを呪いに適応させるものだったわけか)

(そういえば、結局マリー達の両親がに手を染めた理由は分からなかったな)

馬車に揺られ、眠気に襲われながら啓斗は最後にそう思った。

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