《異世界スキルガチャラー》1200連目 エルフの森の悪夢
次の日、シーヴァ達に事を説明して(本當はシーヴァ達は昨日の會話を聞いていたため知っているのだが)、王國の南に位置する「地龍の森」へと2人を送る馬車を手配してもらった。
かなりあっさり済ませるが、今日の分のガチャは新URスキル【ソニックブースト】を排出した。
【ソニックブースト】
魔法によって、足元に高出力の圧された風の塊を作り出し、一気に解放することで一瞬で短距離を高速移できる。
そのスピードは、人間では認識不可能なほど。
こうポンポン毎日URが出ると、最初のSR確定ガチャが大分詐欺だったことが分かる。
試しにソニックブーストを使って50mを走ってみたところ、1秒かからなかった。
戦闘の補助能力として重寶しそうだ、という評価を啓斗は下した。
そんな啓斗は今、ルカと2人で馬車に揺られている。
シーヴァ達は、
「森の住人達は縄張り意識が強い。変によそ者が行ったら警戒されるだけさ」
と言って同行を拒否した。
「その代わり、マリーの世話はちゃんとやっとくから。あ、お土産よろしくね」
これはゼーテの言葉だ。
どこか趣旨を間違っている気はするが、それを指摘している暇はなかった。
結局、そのまま雙子に無理やり馬車に詰め込まれて王國を後にしたわけだが、最後に見た2人の顔が妙にニヤけていたのは気にしないようにした。
その後、馬車にゆらり揺られて數時間。
辺りが暗くなり始めた頃に森の口に到著した。
馬車が去り、2人きりになったところで、啓斗が確認を取る。
「エルフがいれば、問題なく里にはれるんだったな?」
「うん。口でエルフだっていう証明を見せれば無條件で開けてもらえるよ」
門番の、ディーラとは面識があるのでこの確認は本來必要ないのだが、念の為だ。
「よし、じゃあ後は……」
森の口を見つめる。
「どうやって口まで行くか……だな」
そう言って自分達の計畫の無さを2人で笑いあった後、
「まあ、大丈夫!奧の方まで進めば森の人達が見つけてくれるよ!」
結局、どうにかなるだろう神で森にっていった。
「……え?」
森の中は、濃い霧に覆われていた。
「おっかしいなぁ。今まで霧なんて出なかったのに」
ルカが頭を搔く。
「……? これは、何の匂いだ?」
森の様々な場所から鉄錆てつさびのような匂いがする。
これは、生なら全てがに流しているものの香り。
そう、つまり、の匂いだ。
森の木々の間や、地面の至る所からの匂いがする。
その正はすぐに分かった。
「おい、狼の死がそこら中にあるぞ」
フォレストウルフの死骸が大量に放置されていた。
「この矢……森の皆が使ってる木の素材だよ」
既に腐敗が進行している死から矢を抜き取ってルカが言う。
「ルカ、弓を構えておけ。この視界の悪さだ。何が出てくるか分からない」
そう言って魔法剣を出現させた啓斗を見て、ルカも弓に矢をつがえる。
3m先も見渡せないような濃さの霧の中、薄暗い森で2人は前に進み始める。
すると、すぐにモンスターが頭上から襲いかかってきた。
「クモ!?」
「で、でかい!!」
それは、長2mはあろうかという大グモだった。
[ジャイアントアラーネア  Lv59]
クモは口から糸を吐き出して攻撃してくる。
「ちっ!なんだこいつ!」
糸を斬り裂きながら素早く後ろに飛び退く。
「ケイト君!たくさんいる!」
見ると、四方八方からクモが降りてくる。
「ルカ!俺が分で倒す!援護を頼む!」
言いながら分を10作り出す。
視界が悪いので、変に多く出すよりも複雑なきができる人數の方が勝率が高いと考えたからだ。
分は各々個別にスキルを使ってクモを倒していく。
ルカも要所要所でクモの目を抜き、攻撃のサポートをする。
「よし、行けるぞ」
クモをあらかた倒し、道が空く。
急いで空いた道を走る啓斗とルカ。
數分全力疾走して、ようやくクモ達がいないところまで來た。
「ぜぇ、ぜぇ……どうにか逃げ切ったな」
肩で息をしながら、啓斗は言った。
「うん、でも、里への道が本格的に分からないから、またクモに見つかっちゃったら……」
その時、啓斗が咄嗟にルカのを突き飛ばす。
次の瞬間、木の上から網のようなものが落ちてきて、啓斗に覆い被さる。
「ケ、ケイトく……」
「逃げろ!俺に構うな!」
そのまま啓斗は樹上に連れ去られ、またクモが大量に落ちてくる。
「あ、うう……」
ルカは、啓斗が突然連れ去られたショックから立ち直る暇もなく、逃走を余儀なくされた。
「ふぅ……ふぅ……」
その後に數回襲われ、その度に逃げ回ったルカは、満創痍だ。
しかし、そこで「あの」看板を見つけた。
「迷い人→このまま進むべし  財寶求むもの→即刻立ち去るがいい」
と表記された、最初に啓斗が見つけた看板だ。
「もうすぐ里……」
ルカは、疲労しきったを引きずって進む。
そして、遂に見慣れた門の前に辿り著いた。
だが、門も様子がおかしい。何故か開け放しなのだ。門番もいない。
「一、何が?」
ルカは、言いようのない巨大な不安をじながら、里の中へっていった。
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