時間は々前後し、ルカがマモンを追った直後まで遡さかのぼる。

「さて、ルカにああは言ったものの……」

啓斗はクモ達に完全に追い詰められていた。

「このまま行くと100%死ぬな、俺」

眼前にジリジリ迫る巨大なクモは、6匹。

天井、両サイドの壁、正面の通路と、出口の全てを封鎖するように配置されている。

標的を追い詰めて確実に仕留める際に使われる陣形なのだと啓斗は直的に悟った。

そんな絶絶命の狀況で打開策を探し続けていた啓斗だが、視界の奧に見覚えのある人が現れたのを発見した。

ただし、希が見えた訳ではなく、啓斗の脳計算での致死率が100%から150%に上がっただけだ。

「ベルフェゴール……！！」

跡の石床を素足でペタペタと音を立てながら歩いてくる寢間著姿の年。

その年が、実際にはヴァーリュオン王國騎士団の副団長すらあっさりとあしらうほどの強さを持つ悪魔であることを、啓斗は知っている。

「やぁ、2日ぶり。あれ、3日ぶりだった？時間の覚が曖昧あいまいだからよく分かんないや」

ベルフェゴールは変わらない笑顔を浮かべながら啓斗に近づいてくる。

「いやさ、ここまでするのに苦労したよ。マモンに協力してもらうのに々骨を折ったしさ」

言いながらクモ達に目を向けると、6匹全てがそそくさとベルフェゴールの後ろに移し、出口を固める陣形に変わった。

「さて、今日は君を殺しに來たわけじゃない。そんなに警戒しないでよ？ ね？」

張のピークに達している啓斗に、ベルフェゴールはあくまでも笑顔で話し続ける。

「さて、早速本題だ。君もマモンを追いたいだろ？彼、多分ルカちゃんの神をボロボロにするつもりだろうからね」

それを聞き、啓斗は思わずベルフェゴールに毆りかかった。

しかし、やはり簡単に避けられ、逆に足払いをされてしまう。

「まあまあ、まずは僕の話を聞きなよ。場合によっちゃあ、しばらく君達を狙うのをやめてやってもいい」

転倒して痛めたを起こしながら、啓斗はベルフェゴールに向き直る。

「どういうことだ？」

「お、食いついたね。もちろん條件がある。今から僕が君に質問する。その回答しだいで決めるんだ」

そこまで言うと、ベルフェゴールは床にあぐらをかいて座った。

「君も座りなよ。ずっと立ってたら疲れるよ？」

言われるままに啓斗も腰を下ろす。

「じゃ、始めよう。正直に答えてね？」

こうして、ベルフェゴールによる問答が始まった。

「第1問。君はこの世界の人間じゃないね？」

「……ああ、そうだ」

「うん、裏が取れた。第2問。僕は自分のことを「魔王」の部下だって言ったけど、魔王がどういうのか的に知ってる？」

「いや、知らない」

「へぇ、これは意外だな。じゃあ第3問。君がこの世界に來て最初に會ったのは？」

ここで啓斗は一瞬考える。

「………ナビゲーターと名乗る謎のだった」

「ふーん。第4問。そのと會った場所はどこ？」

「名稱は知らない。ただ、どこまでも真っ白だった」

「ふんふん。第5問。君にとって「仲間」とは？」

「……？いきなり的じゃなくなったが、一どういう……」

「さっさと答えろ。意図なんて君に関係あるかい？」

ベルフェゴールは疑問を呈しようとした啓斗の言葉を遮る。

「……心を許せる頼もしい存在だという認識だ」

「ほお。じゃ、第6問。君にとって「敵」とは？」

「……俺自や仲間への脅威。倒すべきもの」

「良いね。敵は全員皆殺しっていうの、僕は好きだよ。

第7問。その手につけてるキカイはなに？」

「……これは、俺に一番重必要ものだ。それ以上は言えない」

「んー、まあいいや。第8問。今すぐにでもあのエルフのの子を助けたい？」

「當たり前だ！」

この質問には、啓斗は一瞬も間を開けずに答えた。

「いい返事だね。じゃあ、最後の質問」

「僕の計畫に協力してくれたら々手を貸してあげるけど、乗る？」

そう言ってベルフェゴールは右手を差し出す。

「僕の手を取れば、今すぐ魔法をまた使えるようにしてあげるし、ほんのしだけオマケもつけよう」

「ただし、後々それ相応の協力はしてもらう。どう？」

その手のひらは啓斗のものより小さかったが、何か重いオーラを纏っているように見える。

だが、今の啓斗には、時間と選択肢が無かった。

數秒の揺のあと、ベルフェゴールの手を取った。

「うん、追い詰められた時の思い切りの良さも良いね。気にった。僕の魔力を分けてあげるよ」

握った右手からどんどん何かがに流れ込んでくる。

「へぇ、魔力の蔵できるリミットは多いみたいだね。そこも予想外だ」

ベルフェゴールから魔力を注ぎ込まれ終わった啓斗は、試しに魔法剣を出してみる。

何やら今までより輝きが増したようにも見えた。

「ほら行きなよ。僕は後からのんびり行くから。急がないと、彼の神が壊れちゃうかも」

「マモンはここからこっちにまっすぐ行った広間にいるはずさ」

そう言って後ろのある方向を指さした。

啓斗は【過パーコレイション】と【ダッシュアップ】を併用して全力で駆け出した。

「もしもし、こちらベルフェゴールです。魔王様、いかがでしょうか？」

ベルフェゴールは啓斗を見送ったあと、魔王と連絡をとっていた。

『ふん、確かにまだその時ではないな。実力も完全に不足している。

良いだろう、貴様の提案を飲もうではないか』

魔王の表は通話であるため分からないが、その聲は不機嫌ではない。

『マモンにも撤退を知らせろ。ただし……』

「はい、承知しております。魔王様や我々に憎しみを覚えるように導すればいいのですね？」

『ああ、貴様なら最も上手くやれるだろう。エルフを使えば容易い』

「魔王様の仰せのままに」

そう言って通話は途切れた。

「……あの異世界人くんも馬鹿だねー。悪魔と握手なんてもう破滅フラグ建っちゃうのにさー」

「まあ、馬鹿な方が利用しやすいし良いけどね」

ベルフェゴールは、壁を破壊しながら広間に向かった。