《異世界スキルガチャラー》社の
「あ、ケイト君、おかえ……」
結局寢付けなかったルカは玄関で待っていたのだが、戻ってきた啓斗がディーラを抱えていることに言葉を失った。
「……ルカ。とても言い難いことではあるんだが……」
「ううん、大丈夫。マモンに捕まってる皆の中にいなかったからもしかしたら、なんて希は持ってたけど」
「ディーラお姉さんも…死んじゃったんでしょ……?」
その両目からはボタボタと大粒の涙が流れる。
「ああ、俺たちを…助けるために…命を落としてしまった」
そう言った啓斗も顔を伏せている。
ルカは痛む足に耐えながら啓斗に近づき、ディーラの顔を見る。
その顔は酷く穏やかで、眠っているようだった。
だが、その皮の冷たさが、ディーラの命が既に潰ついえていることを嫌でも分からせる。
「ねぇ、私ちょっとディーラお姉さんと一緒にいていい?」
「…分かった。俺はまだし用事がある。待っててくれ」
ディーラをベッドに下ろし、啓斗は社やしろに向かう。
ルカはベッドの橫に腰掛け、啓斗が出ていくのを見ると、ディーラにすがり付いて泣き出し始めた。
「ハァ…ハァ……スキル無しでこの階段上るのはやっぱキツいな……」
啓斗は、社に続く階段を上りきって息を切らしていた。
ようやく立ち上がり、社の前に立つ。
社の扉は開いたままになっていた。
中にると、大僧正の亡骸が靜かに座っていた。
「大僧正さん……」
そのまま近づくと、大僧正から【追憶の目】が反応する際の淡いが発せられた。
大僧正の死に際の記憶が浮かび上がる。
「……さて、こんな所かのう」
「まさか、あれほどの強さを持つ悪魔が現れるとは思わなかった」
大僧正は機に向かうと、何か手紙を書き始めた。
容はこうだ。
ルカへ
お主が旅立ってから儂わしはずっとお主を見守っておった。
だが、今日戻ってきたのは災難だったな。お主は絶の景を見たかもしれない。
しかし、里の皆はまだ生きておる。
まだ間に合う。里の皆を攫った奴は森の「域」におる。
奴は、域におった神から護符を奪い、域を城にして妙なことをしている。
お主なら奴を倒せるかもしれない。
だが、域にるには護符が必要だ。
儂のものを持っていけ。首にかけてある。
それとは別にもう1枚手紙を書いて引き出しにれる。
そしてルカ宛の手紙を2つ折りにして手に持つと、部屋の中心に座る。
(まさか、儂が中から出ることも出來ないほど強力な封印の陣を扉に敷きおるとは……)
(司祭達も思い切りがいいと言えばいいのか、無謀と言うべきなのか)
そう、エルフの司祭たちは悪魔達からこの場所と大僧正を守るために社の扉を封印したのだ。
「さて、それでは最後の仕事をしようかの」
「護符を跡の鍵に変える。儂ももう歳だからのう。命を落とすじゃろうな」
そんな言葉を他人事のように呟き、神を集中させる。
首にかけた護符がり始める。
大僧正が目を閉じるのと同時に、記憶の景も暗転した。
「…………………」
無言で正座して大僧正に手を合わせた後、啓斗は隅にある機に向かう。
引き出しを開けると、1枚の手紙がっていた。
この手紙を見つけるとは大したものだ。
見つけたのがルカか啓斗君かは分からぬが、萬が一のためにここに隠しておいた。
儂の背後にある壁を押せ。
そこは書庫になっている。
その最奧の本棚にある「他と違う本」を読むのだ。
そこに記されている報は必ず役に立つだろう。
読み終わると、啓斗は書いてあった通りの壁を押してみる。
壁の一部がドアのように開いた。
場所を知らなければ壁と一切見分けがつかないほど巧妙な細工である。
奧には、巨大な本棚に本が所狹しと並んでいた。
その更に奧の奧まで行く。
最奧には、一面青い背表紙の本で埋まっていたが、三冊だけ緑の背表紙の本があった。
本には、「壱 」、「弍」、「參」とある。
保存狀態が良かったのか、かなり古そうだがページが痛んだりはしていないようだ。
啓斗は、まず「壱」の最初のページをめくった。
まず、最初に言っておかなければならないのは、この本は限られた者しか読んではいけないものだということだ。
私はこの森で大僧正をしている者だが、恐らくこの本は私が命を落とすまで読まれることはないだろう。
この本を手に取るということは、遠い遠い昔、本當に遠い昔。
まだ地龍が生存していた頃のを垣間見るということだ。
君にその覚悟があるのなら、ページをめくりたまえ。
「……!?」
そこで背後に気配をじて振り返る。
そこには、跡の中(詳しく言うと跡で見た謎の風景)で出會った男が立っていた。
「そんなに警戒するな。後ろから刺そうって訳じゃない」
そう言って男は、啓斗が持っている本を見やる。
「それを読めば、この里の真実が分かるだろう」
「「巫」という肩書きの意味、儀式であの門番のが命を落とした理由も分かる……が、読めばお前も後戻り出來なくなるぞ? それでも真実が知りたいのなら、読むがいい」
その言葉を聞き、啓斗は目を閉じて考え込む。
だが、すぐに意を決した。
啓斗は、「壱」の本の2ページ目を開いた。
「よほど、巫が気にったらしいな。ま、そうするだろうと思っていたが」
男はため息混じりにそう言うと、本棚の影に混じって消えた。
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