《異世界スキルガチャラー》弍の本 「龍の巫について」

「………………」

啓斗は黙ったまま壱の本を本棚に戻し、弍の本を取り出す。

では、「巫」について話そう。

「旅立ち」と稱して追放されたは、小さな里を作ってそこで生活し始めた。

今まで一緒に生活していた友人や、親代わりになって育ててくれた大僧正と引き離されたことで最初は塞ぎ込んでいた彼だったが、共に旅立った年の盡力によって再び心を開き、小さな里で楽しく暮らし始めた。

神殿の建設は、が自由自在にる植が至る所から建築に必要な材料を集めて、建てるところまでやってしまった。

それから10年は平和な日々が続いた。

初代「魔王」の脅威は未だ薄れていなかったが、場所が割れていないこの里は襲撃されなかったのである。

10年が経ち、しい長した。

その時には、上述の年とを育み、の子を出産していた。

そうしてそのまま平和に一生を終えた………………訳では無い。

その年、後に「第4ケース」と呼ばれる事例が発生した。

今までに來訪者などほとんどいなかった里に、見たこともないような重厚な裝備をにつけた若い青年が姿を見せたのである。

青年は一切の記憶を失っており、どうやってここにたどり著いたのかすらも覚えていなかった。

彼について様々な意見が出たが、結局巫の判斷に任せることになった。

は、青年と共に神殿に行き、地龍の骨が眠る地下まで案した。

骨にれた青年は、數十分気絶した後に全ての記憶を取り戻していた。

青年が言うには、

「見渡す限りの大草原の中央に巨大な樹が生えており、そこに男が座っていた」

「彼は、自分を「伝達人」と名乗っており、會話をするうちに自然と記憶が蘇ってきた」

ということらしい。

更に、

「あなたにも骨にれてほしいと言っていた」

と伝えた。

それに従い、巫はもう一度骨に直接れた。

そうして何が起きたかは詳しく殘っていない。

だが、地龍がの姿を形作って會いに來た、という言葉だけ伝わっている。

青年の正は、依然世界を掌握しようとする魔王を倒さんと旅を続けていた「勇者」であった。

確かな実力を持った仲間數名と共に魔王の城に乗り込んで戦ったが、1歩及ばず敗北。

仲間の魔法使いの力でどうにか撤退に功したのだが、その際に仲間と散り散りになった挙句、ワープの副作用で記憶を失ってしまったのだという。

その後、地龍の力を持つ巫だということで、仲間を再び探すのに同行してくれないかと勇者に土下座で頼まれた。

家族や里の仲間のことを考えて1度は斷ったのだが、夫や娘を含めた里の全員に「行くべきだ」と言われたため、勇者と同行することを決意。

後世(つまり現在)の様々な文獻に殘る偉業をし遂げ、再集結した勇者一行の一員として魔王と戦った。

伝承を読めば分かると思うが、魔王討伐にも大きな役目を果たした。

そして、勇者の仲間として讃えられながら生き、天壽を全うしたと伝えられている。

そして、ここからが「力」の「伝」の話になる。

初代の巫が死した次の日、その娘に母親と同じような能力が発現したのだ。

だが、娘の力は母親とはまたし違った。

中に緑の鱗が生え、「龍人」になってしまったのだ。

この事態に、父親は龍の姿になってしまった娘を連れて地龍の神殿に行き、娘を地龍の骨にれさせた。

またその會話の詳しい容は記録されていないが、恐らく龍の姿になった理由を説明されたと思われる。

そして騒は収まったらしいが、どうやら娘は力を使いこなせなかったようだ。

娘が龍の力で里をどうこうしたという記録がないためである。

そして、その娘が結婚して子供が産まれ、母親が死ぬと、地龍の能力が子にけ継がれる、というサイクルが數百年続いた。

サイクルの中には2つ特徴があった。

1つ目の特徴は、「子」しか産まれないという所。

これに関しては何故かは分かっていない。

だが、そのおで「巫」という名稱を変えずに済んでいるのは他のエルフにはし嬉しい部分でもある。

2つ目は、巫が娘を産むと、その後10年以に母親が必ず死亡すること。

こちらも明確な理由は分かっていないが、どうやら龍の力が1人にしか継承されないことと関係があるようだ。

……さて、ここまで私の拙つたない文章に付き合ってもらっている訳だが、ここで現在の里の様子も伝えておく。

実は、近代に近づくにつれ龍の力をり切れない巫が増え、酷い時には暴走してしまう場合まで現れた。

これは、代を重ねるごとに龍のが薄くなってきたためだと思われる。

なので、ある代の巫が地龍に直々に提案をし、巫が産まれる周期を遅くするようにしてもらった。

よって現在、「巫」は100年に1人、里に産まれた娘が無作為に選ばれて龍の力を持つようになっている。

その代わり、神殿の祭壇に祈りを捧げて、それ相応の代償を払うことで地龍の力が森に発現するようになった。

地龍の力を借りる場合は、祭壇に向かって祈りの姿勢を取り、語りかけて來る言葉に返答する。

私も2度ほど儀式を行ったが、厳粛な男の聲だった。

私達は彼を「伝達人」と呼んでいる。

彼を通じて地龍に力を借りていると考えているからだ。

何故地龍の力を借りるのに代償が必要かと言うと、どうやら地龍は力を使う時に「」が必要らしい。

今までは「巫」というがあったが、それが無いために必要なを代償として払わなければならなくなった。

代償は様々で、森の木の実や薬草の場合もあったが、ごく稀にエルフのうち1人の命を代償としたこともあった。

これで里の構造の大まかな部分や、巫についてしは知ってもらえたと思う。

最後の「參」では、儀式の詳しい容や代償、巫の使える力を説明しようと思う。

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