《異世界スキルガチャラー》帰還 ヴァーリュオン 上

「やあ、お帰り!……って、ケイト君、ルカさん!なんて格好してるんだ!?」

たった1日しか離れていなかったのだが、迎えに來たシーヴァとゼーテの顔が懐かしくじた。

だが、そんなしみじみとしたを持っているのはどうやら啓斗とルカ側だけで、雙子側はかなり驚いたようだ。

「ねぇ、自分で気づかないの? 服のじがかなりワイルドになってるけど」

ゼーテに言われて二人ともを見回す。

お互い、上下共に所々服が破れたりのシミが付著していたりした。

「何が起きたかは戻ってから風呂でじっくり聞こう。さあ、今すぐ王城に行くぞ」

雙子に先導されて啓斗とルカは王城へと向かった。

「……なるほどな。それはさぞ激闘だっただろう。僕もいればこの「眼」で助太刀したものを」

王城にある大浴場の湯船に浸かりながら啓斗は昨日の出來事を語って聞かせていた。

「いや、結局どうやっても奴らには勝てなかったと思う。正直、あの世送りにされずに済んでるのが今も信じられないくらいだ」

ズタボロにされたあの時の狀況を思い出しながら目を伏せる。

數秒そうした後、ふと顔を上げてシーヴァにこう聞いた。

「シーヴァ、これからな話があるんだが、誰にも言わないと約束できるか? 騎士団の人達はもちろん、ゼーテとルカにもだ」

突然の問いに、一瞬だけ目をパチクリさせたシーヴァだったが、自信たっぷりに答える。

「もちろんだ。この「暗黒の騎士」の名にかけて誓おう」

「よし、心強いよ。話というのは、例のルカの「龍化」のことなんだ」

啓斗は、社やしろで読んだ3冊の本のついて(特に「呪い」の部分を重點的に)話した。

「実も持ってきたから後で読んでもらえればいいんだが……何か心當たりは無いか?」

「ふむ、聖龍とは中々大層なレベルの存在が出てきたものだ。彼には何か特殊な才能があると思ってはいたが、僕の目に狂いはなかった訳だな。聖龍の生息地にまでは流石に分からないが、調べる方法なら1つアテがある」

天井を見上げながらそう言うと、シーヴァはニヤリと笑う。

「そういえば、この世界は5つの大陸に分かれていると知っていたか?」

啓斗は首を橫に振った。

「だろうと思ったよ。これから長い旅路になる可能は100%だ。説明しておこう」

「5つの大陸の名はそれぞれ、「リーデンフォン」「ユーレシオ」「北ベロネア」、「南ベロネア」そして「ジパーグ」だ」

「ここはユーレシオ大陸に屬している。因みに、この大陸に國は2つしかない。この「魔法王國ヴァーリュオン」と、隣國の「機械帝國マギクニカ」だ」

「大陸を二分して大國二つが隣接している。今は戦爭もしていないから平和なんだが、その代わりに魔の住処が至る所にできているという訳だ」

頭の上に乗せていたタオルで顔を拭きながら啓斗はシーヴァの説明を聞く。

「実はね! 二國間で相互支援の話が上がっているんだよ!」

「最近、魔きがここ數年で最も活発なんだ。あのベルフェゴールとかいう奴も最後に目撃されたのは100年は前だったんだが、君は3度も遭遇しただろう?」

「そういうことだから、マギクニカの機械技と我が國の魔法技を提供し合おうという話が持ち上がった」

「マギクニカは、世界中にかなりの影響力を持っている。例えば「洗濯機」や「冷蔵庫」といった電化製品の製造、販売まで全て一國でやってるからね」

「全く、あの國はよく働く人ばかりだ。正直ちょっと気持ち悪いくらいにね」

「しかぁし!あの國の「総合データベース」なら膨大な量の報を素早く検索できるんだよ!」

そこで勢いよくザパンと立ち上がってビシッとポーズを決めた。

大量の水しぶきを浴びながら啓斗はシーヴァを見ていた。

「ところで、お前の眼帯って防水なのか?」

「ん? もちろんさ! 毎朝防水と防刃と防魔の魔法を掛けているからね!」

「……ふーん」

そのまま浴場の床でターンしたりステップしたりしながらシーヴァは風呂から出ていった。

(よく転ばないよな、あいつ。まあ、取り敢えず次の目的地が決まったってことで良しとするか)

啓斗も風呂から上がると、シーヴァに続いて所へ向かった。

「くぅー!やはり風呂の後は強炭酸のドリンクに限る!!」

「俺は炭酸無くてもいいかな」

さすが王城の所と言ったところだろう。

超巨大冷蔵庫が壁一面に設置されていた。

「ちなみに、この冷蔵庫もマギクニカから買ったんだ。僕の1ヶ月の給料の半分くらいはしたよ。でも、買って正解だと冷蔵庫を開ける度に思う」

ジュース瓶をもう一本取り出して一気飲みし始めるシーヴァ。

(そうか、じゃあマギクニカは1つの國で中國とかアメリカとかの役割を全て果たしている訳だな)

啓斗は頭の中でマギクニカのイメージを固める。

「それで、どうする?行きたいのなら団長に掛け合ってみるが」

「ああ、ぜひとも頼むよ」

その言葉を聞くや否や、超高速で著替えを済ませてシーヴァは走り去っていった。

啓斗も新品のTシャツとズボンに著替えると、廊下をゆっくり歩き出した。

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