《異世界スキルガチャラー》第19階層 休めない休憩
ナビゲーターの言った通り、19階層は小さな部屋になっていた。
一人用のミニソファとミニテーブルも完備してあり、淡い緑のを放つがった瓶が1本置いてある。
『そのはどうやら魔力回復薬みたいですね。しかも完璧な調合がされたMP完全回復レベルの』
「なるほど。親切だな」
啓斗は躊躇ためらいなく瓶の蓋を開けると、一口飲んでみた。
が、強烈な苦味とエグ味をじてむせ込んでしまった。
「……ぐ、がはっ! うえっ、ゲホッゲホッ!」
『ああ、言い忘れてましたけど、それめっちゃ苦いですよ』
吐き出しそうになりながらもどうにか飲み込み、一息つく。
「ああ、「良薬口に苦し」って奴か……」
『ですね。まあ、一口で500MPも回復しましたし、全部飲まなくてもいいんじゃないですか?』
その後、吐き気を催しながらどうにか瓶の約半分を飲み干した。
「うおおおお………」
『啓斗様、無理しないで下さいね?6200まで回復したはしましたけど……見てられないです』
嗚咽をらして床に倒れそうになっている啓斗を上から心配そうに見下ろすナビゲーター。
『ほ、ほら。後でも使えますし、取っておいては?』
「……正直、もう飲みたくないな」
どうにか歩き出すとと、啓斗はソファにどっかり座り込んだ。
「し寢る。2時間経ったら起こしてくれ」
そう言い殘すと啓斗は腕を枕にし、テーブルに突っ伏して寢息を立て始めた。
『お疲れ様です、啓斗様。私も報告書まとめますか』
ナビゲーターも自のホログラムをフッと消した。
一方その頃、魔法王國ヴァーリュオンの王城の敷地にある練習場では、1人の青年と1人のが顔を向き合わせていた。
「すまないね、ルカさん。僕の検証に付き合ってもらって」
「ううん、大丈夫。私もこの能力がどういうものなのか詳しく知りたいし」
二人共、戦闘準備を萬端にしている。
シーヴァは刃を最高に磨いた長剣を持ち、ルカも矢を數十本収納した矢筒を背中に背負っている。
「まず、自分で自由自在に龍になることは出來るのかい?」
「んー……っと……んんんんん……ぷはぁ、無理!」
ルカは何やら念を込めていたのだが、どうにも何も起こらなかった。
「そうか、じゃあプランBで行こう。戦闘開始だ!」
「お手らかにお願いします!」
シーヴァの合図と同時にルカはバックステップしながら矢を連続で3発放つ。
「騒だね!いきなり怪我させる気かい?」
シーヴァは矢を剣の一振りで切り払う。
「うん、その気でやったんだけど簡単にガードされちゃった!」
「そうかい? なら、もっと本気で來ても大丈夫だよ?」
シーヴァの言葉をけ、ルカは俊敏に移しながら矢を次々に放つ。
シーヴァは右に左に剣を振り、矢を切斷して落としていく。
「ふっ!はっ!とうっ!」
「んん!中々だね!」
シーヴァは四方八方から飛んでくる矢を時には躱し、時には斬る。
彼の顔にはまだ余裕のが見える。
「では、こちらからも攻めさせてもらおうかな!」
「うひゃああ!!」
シーヴァがダッシュで一気に距離を詰める。
橫薙ぎに払った剣をしゃがんで回避し、また思い切り距離を取るルカ。
しかし、シーヴァの反速度も超人的だ。
すぐにもう一度ルカに詰め寄る。
「もっとスピードを鍛える必要があるね!」
「アドバイスするのか攻撃するのかどっちかにして下さい!」
斬られるギリギリで剣を避け、シーヴァの腹に蹴りをれて突き飛ばす。
「へぶっ!?」
「もっと防を意識した方がいいですよ!」
「……言ってくれるね。変な聲出たじゃないか」
服についた砂埃を払うと、何事も無かったかのように勢を立て直す。
「さて、僕に一撃れられる実力はあるみたいだね。じゃあ、し本気で行こうかな!」
瞬間、シーヴァの目のが変わった。
背筋の凍るような「殺気」を纏ったものになり、ルカの本能が「危険だ」と警報を鳴らす。
「ひぃっ!」
「行くぞ!」
すると、いきなり先ほどとは比べにならないスピードの刺突を繰り出す。
顔の數ミリ橫を通過した剣先を凝視しながら、ルカは本格的に命の危険をじた。
「次は外さないぞ?」
シーヴァはニヤリと笑うと、もう一度剣を構える。
ルカは恐怖から思考が停止してしまった。
剣が眼前に迫る。
そこでルカは、自分の心臓の音を聞いた。
ひどくゆっくりとした鼓だった。
「……やはり、僕の予想は當たっていたな」
シーヴァは、ルカの5メートルほど先に転がっていた。
剣がルカに突き刺さる寸前、突風が巻き起こってシーヴァを吹き飛ばしたのだ。
「変……できた……」
「どうやら、生命の危険をじると自的に変するらしいね」
シーヴァは、目の前に立つ龍人のに向かってこう言う。
「じゃあ、本番開始だ。君も能力を最大限使ってくれ」
「はい、よろしくお願いします!!」
龍人狀態になったルカと、どうやら本気で行くらしいシーヴァは、改めて一禮した。
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