《異世界スキルガチャラー》VS ランドグリーズ 1

「フン、何の力も持たない異世界人が何をしようが無駄なものは無駄だ」

「うるさいなぁ、やってみなきゃ分かんないだろに」

『ヴァルキリーをあまり舐めないで下さいね。ここからが勝負ですから』

ランドグリーズが改めて槍をこちらに構えるのを見て、啓斗も再び構える。

『啓斗様、見繕い終えました!こちらがリストです』

「サンキュサンキュ! うし、じゃあいっちょやりますかぁ!」

言いざま啓斗は両手に持った魔法のナイフに更に魔力を注する。

ナイフは淡い紫を放ち、その威力を増強させる。

Rスキル【マジックナイフ】

魔法で形されたナイフを創り出す。

威力は使用者の魔力に依存し、魔法的エンチャントを付與することもできる。

ナイフの威力を上げたのは【マジックエンチャント】である。

そして啓斗は、目にも止まらぬ速さでランドグリーズに斬りかかった。

二本のナイフを振りかざしてランドグリーズの首と肩を同時に狙うが、片方は槍に弾かれ、もう片方は甲冑を貫通することができずにダメージを與えられなかった。

そして、弾かれた右腕をランドグリーズの左手に摑まれる。

「げっ」

「貴様の命、斷たせてもらう!」

その槍が啓斗の腹を貫こうとしたとき、彼はURスキル【ジャストシールド】を行使した。

が、しかし。槍はシールドを易々と破ると啓斗の腹を貫通した。

「……げふっ!?」

『はぁぁ!? 噓です、有り得ない! ジャストシールドは防できる時間が一瞬故に、その一瞬は絶対に無敵のはずなのに!!』

「……そう貴様らが過信しているから、上様は私を派遣なされたのだろうな。私の天界での二つ名を教えてやろう」

「私は、〈楯を壊すもの〉と呼ばれている。どれほど強固な鎧であろうと、強靭なであろうと、能力の障壁であろうと、私の攻撃を阻むことはできない!!」

ランドグリーズは槍を引き抜くと、空中で啓斗の顔面を毆りつけた。

10mほど啓斗は空を飛び、舗裝道に落ちた。その際、「ベシャッ」という鈍い音を立てる。

『啓……斗、様?』

「……………………」

『冗談でしょう、啓斗様?こんなところで、あんな奴に殺されるわけありませんよね?』

「……………………」

『啓斗様、あまりふざけると私だって本気で怒りますよ!?』

「……………………」

ナビゲーターの聲に啓斗が反応する様子はない。

大の字で仰向けに倒れたまま、ピクリともかなくなってしまった。

「罪人〈イヴ・アズライール〉。貴様への罰も近々議會で決定されることになるだろう。覚悟して待て」

『……ざけんな』

『………ふっざけんじゃねぇぞ。畜生にも劣るゲス共の集まりのくせに何が「天界議會」だ。冗談も休み休み言いやがれ!』

『殺す!テメェら全員、一人殘らず、絶対に!』

「どうやってだ?貴様の唯一の駒は今、死んだ。この通信端末を破壊すれば貴様はまた孤立する。今度こそ、永遠に!」

憤怒をあらわにして吼えるナビゲーターを、鉄仮面の下でクックッと嘲笑うランドグリーズ。

しかしおもむろに嘲笑をやめると、槍を握ってツカツカと倒れたままの啓斗に歩み寄る。

『お前、啓斗様に何をする気だ!』

「決まっているだろう、とどめを刺すんだよ。萬が一仕留めそこないでもしたら、上様に褒を頂けないのでな」

ランドグリーズは槍を啓斗の頭に向ける。

「では完全に死ね。罪人の言葉に乗せられ、自の程を勘違いした愚かな異世界人よ!」

『やめろぉぉぉぉぉぉ!!!!!!』

顔面に、啓斗の命を完璧に貫く槍が振り下ろされた。

……ケイ?何してるの?

ケイ、誕生日にしいものはある?

ケイ、今日はどこ行こっか?

《…………懐かしい聲が聞こえた》

《…………大切なモノの欠片を取り戻した気がした》

ランドグリーズの槍は、地面に突き刺さっていた。

何故かは言うまでもない。啓斗が槍を避けて立ち上がり、素早く距離を取ったからである。

(……いい夢見たなー)

啓斗の目は今までにないほど爛々と輝いている。

腹からはドクドクとが流れ出ているが、気にしている様子はない。

『あのぉ、大丈夫ですか?  お腹から凄い大量出してますけど』

「え? ああ、ヘーキヘーキ。今アドレナリン出まくってるから何にもじないよ」

『いやそれ危ないヤツですから! まともな治癒魔法持ってないのにどうするんですかコレ!?』

「何とかなるって! それより今は攻めないといけない! さっさと倒せば問題ないでしょ!!」

そう言って啓斗は、槍を手元に戻して構え直しているランドグリーズに向かっていった。

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