「……すまねぇ、助かった」

「勘違いするな。私から見れば貴様はあの狂人どもと同じテロリストなのだからな」

ミューズに落下から救われた啓斗は禮を述べるが、向こうは彼の方を向きもしないで言葉を返してきた。

「私はただ、容疑者に勝手に死んでもらっては困るから命を助けただけだ。この騒が収まったら全員逮捕してやる」

「……怖いねぇ。じゃ、その警としてのアンタの考えを尊重して、俺もあの赤髪貓は殺さないように戦ってやるよ。なるべくな」

「勝手にしろ」

そう言うとミューズは、ルカを攻撃しているレイラとヴェローナに向かって走っていく。

啓斗からは、ミューズの履いている靴の踵のあたりから風が噴されているのが覚として分かった。

「ニャハ！ ラッキーで生きてたのにはびっくりしたけど、アタシと戦うのには力不足なんじゃないかニャ？」

「アイツ、【熱拳バーニングフィスト】を顔面に直撃されて無傷で笑ってやがる……」

『この前あそこまでダメージを與えられたのは、MPを大量に使って【エクスプロージョン】を唱えたからだ。おい、ちょっと【解析アナライズ】をベネットに使ってみろ』

「俺に命令すんなって言ってんだろ！」

『いいから黙って使え！！ 確実に勝つためには絶対に必要なことなんだよ！！！』

普段冷靜な啓斗が本気で出した大聲に、常に聲を荒げているこの青年も一瞬怯んだ。

「……くそっ、ここまで本気で命令されたら今・の・狀・態・じゃ逆らえねぇ。【解析アナライズ】発！」

目の前の敵を解析し、ベネットの報を得る。

型番No.79022

種族  違法改造済アンドロイド

Lv(該當無し)

HP(エネルギー殘量):98%

MP:無

P・ATK:A

M・ATK:無

DEF(裝甲耐久力):S

DEX:B+

SPD:S－

LUK:無

魔法屬適正

機械のため該當無し

狀態

裝甲破損度:0%

『一言でいえば「異常」だな。生半可な攻撃じゃまともにダメージを與えられなさそうだ』

「それでもアイツは倒して報を聞き出さなきゃならねぇ。絶対に勝つ！」

『殘りMPに注意して戦え。MPが切れたら俺たちはただの非力な高校生のガキなんだから』

「ああ、だったら全開で潰すだけだ！！」

「ミューズ・ブルーワース、警としての任期は未だ短いものの、その執念深さと判斷力の早さで期待の新人と呼ばれている。最新式の裝備の扱いにも長け、新人たちの中では頭一つ分以上抜き出た才覚を持つ」

「……レイラ、とかいったか。ジャンクヤードの住人がなぜ私の素を知っている？」

「私たちはあなた達より何倍も多くこの國で起きている事柄を知できます。法でがんじがらめにされていないが故に、街中に〈網〉を張れるのです」

「どういう意味だ？」

「私の仲間は、表の世界で生きている奴らでは到底太刀打ちできない天才だけです。たった1人の警が首を突っ込んで生き殘れるほど、甘くないのですよ？」

「私に脅しは通用しない。私は、必ず貴様らを刑務所に叩き込んでやる！」

拳銃を構えて威嚇するミューズと、ガスマスク越しゆえにそのが読み取れないレイラは、まだどちらもいていない。

「ヒャヒヒヒヒヒヒ！ バンバンバンバンバンバーン！！」

「くうっ！？」

超至近距離で半龍化狀態のルカと互角の能力で渡り合いながら、蹴りや肘鉄に混じってメチャクチャに銃を撃ちまくるヴェローナ。

ルカも確実に反撃しているはずなのだが、その華奢な格に見合わないほどの防力も持っており、ルカの方が防戦一方にされている。

未だ終わりの見えない、燃え盛るホテルの屋上での戦いは、遂に3対3の様相を呈して局面がき出そうとしていた。