「う……あが……」

「まだまだ飲んで飲んで飲んで！！ 真っ二つにはまだ足りないからニャー！」

啓斗の口から食道を通ってに無數の配線がり込んでくる。ベネットは啓斗のを部から引き裂いて殺す気らしいが、先に窒息するのが早そうだ。

いや、を無理やり開いて侵してくる配線どもの覚とそれに伴う激痛だけで既に啓斗は瀕死になっている。

「もーちょっと！ もーちょっと！ 大人しくあの世へ逝ってチョーダイニャ！」

「…………ううっ」

もう死にかけになってしまっている啓斗をさらに追い詰めるようにしてに配線を送り込む。なぜベネットのからここまでの長さの配線が無數に出てきているのかは謎だが、とにかくこのままでは啓斗は確実に死んでしまう。

「ニャハヒヒヒヒヒ！ いいカオしてるネ！ もがき苦しむその顔、アタシはダーイスキだニャ！」

その時だった。突然、ベネットの視界の端から何かが飛んできた。彼のレーダーはそれをとらえてはいたのだが、勢と狀況的に回避のしようがなかった。

「ひぎゃぶーっ！？」

いきなり飛んできたのは、まるで巨木からボキリと折られたかのような巨大な木の枝だった。枝はベネットの橫腹に突き刺さり、勢い良くそのを吹き飛ばした。

やはり機械なのだというのをじさせるガシャンガシャンという音を立てながら、巨木の枝が突き刺さったベネットは屋上を派手に転がった。

「う……くっ、ゲホッゲホッ……この、力は……！」

床に落ちた衝撃でダメージを負いはしたが、にり込んでいた無數の異の覚が消えただけでかなり余裕ができる。

むせ込みつつもよろよろと立ち上がった啓斗は、先程の現象を引き起こした張本人……ルカに目を向けた。

「龍……じゃ、ない……？」

ルカは「地龍」の姿になってはいなかった。だが、また別の形で異形の姿とり果ててしまっていた。

まず、彼の周囲の床(コンクリート製と思われる非常にい床だということを覚えておいてほしい)からは、どこから出現したのか木の幹が數本生えてきている。

その數本の木のは出しており、その先端は全てルカの両腕に吸著していくかのように吸い寄せられて行っている。

そして木のはルカの全に上っていき、まるで彼を守る鎧のようになってそのを覆い盡くした。

「……？」

『…………て』

頭の中に聲が響く。途切れ途切れの音聲だが、それがルカの聲であることは容易に理解できた。

『逃…て……私が……私…………うちに』

(くそっ、ダメだ。よく聞こえない。しかし、『逃げて』と言ったか？ どうするか……)

啓斗は一瞬思案したが、ルカがここまで切羽詰まった狀況で、殘る理を総員して伝えてきたメッセージなら、従うべきだと判斷した。

と言えば聞こえはいいが、半分は暴走して見境がなくなったルカに襲われたくないという無意識化の恐怖もあった。

「ルカ、必ず迎えに來る。絶対に死なずに待ってろよ！」

痛む全を僅かに殘った気合いで立て直すと、ミューズら3人が向かった方向へとジャンプした。

「……くっそ痛ぇぇぇ！！ テメーなにさらしとんじゃコラァ！ フシャー！！」

「………」

全を覆う木のの隙間から、鋭い眼だけがベネットを捉えている。

ベネットの方も怒りをあらわにした様子で、腕の丸鋸で刺さっていた枝を切り飛ばした。

「アタシのお楽しみを邪魔ぁしやがって……許さないニャ！」

「……！！」

次の瞬間、ガラスが割れる凄い音とメキメキという音で聴覚が占領される。

ベネットが驚いて構えた時には既に遅かった。突如足元から出現した、まるで蔓のように変幻自在にく巨木の枝に、ガッチリと捕まってしまったからだ。

「ニャンと！？ どーなってんだニャ！？」

「……神…樹、の……裁きを………」

木のを鎧としたルカは、ジリジリと眼前の敵に向かって歩みを進めていた。