《異世界スキルガチャラー》1分18秒間の攻防

「連続撃モード起、目標をロックしつつ撃ち続けろ!」

ミューズが指を鳴らしながら命じると、二の拳銃が凄い速さで弾丸を撃ちだし始めた。

「最新式強化手甲Ⅱ型……あの脳筋をそのまま現したみたいな男じゃないが、これが一番手っ取り早い!」

銃撃を嫌がるように鋏で弾きながら、怪はミューズに突進してくる。

がミューズの眼前まで迫ったその瞬間、その頭部と思わしき場所に音速の右フックを叩き込んだ。

「がじゅうぅぅ!?」

「遅い! もう一発だ!!」

右フックが命中した勢いに任せてをひねり、そのまま怪の腹部に左ボディブローをめり込ませた。

の腹は見るからに堅固な甲殻で守られていたのだが、それをぶち割って「」の部分に直接攻撃したのだ。

「ちょ、何よあの裝備! 失敗作とはいえ、ただの警の裝備じゃミ=ゴの甲殻を破壊なんてできないはずなのに!」

ローグが街中に張り巡らせている監視カメラと超小型ドローンから、ミリアはミューズ刑事と自が作り出した実験の失敗作である怪の戦いを観ていたのだが、この狀況を見るとノートパソコンが置いてある機をガンガン叩きながら歯ぎしりをしていた。

「あんのクソガキ警、調子に乗るんじゃねぇぞ……!!」

ミリアが1人でそんな大騒ぎをしているとき、ミューズは追加で右ボディを割れた甲殻の中に拳をぶち込んでいた。

「ぎしぇえええ……!!」

「さっさとくたばれ、腐れ怪!」

ダメージが通っているようで、怪きを止めた。

その瞬間にミューズは力いっぱい怪の頭部、つまり短い手がみっしりと生えた楕円形の部分を両手で鷲摑みにし、そのままねじり潰そうとした。

「あぎぎぎぎ……」

「殺、して、やる……!!」

ミューズはどこか憎悪というを思わせる形相で怪の頭部を潰しにいっているが、もちろん敵の方も黙ってやられているわけではない。

右腕の鋏を大きく開き、ミューズのを切斷しようと攻撃してきた。

「うがしゃああぁぁ!!!」

「ちっ、回避するか」

ミューズは巨大な鋏が自分のに到達する寸前に、つま先をかす。

すると、靴底から細い一本のワイヤーフックが出される。そのワイヤーは、數メートル下に浮遊している赤く発する小さな的のようなものに突き刺さった。

そのままワイヤーは怪の攻撃よりも遙かに高速で巻き取られる。

「あぐっ!?」

「回避しながらも攻めることを忘れてはならない、特に死闘の時は」

一瞬で怪の真下まで移しつつ、今度は自分で持って2の拳銃から弾丸を4発撃つ。

銃撃は、全て正確無比に甲殻が割れた腹部へと吸い込まれるようにして撃ち込まれていった。

「ぐがしゃあああ!!」

「……所詮、襲い掛かるしか能のないバケモノか。しがっかりしたよ」

軽いため息をつき、怪に向けてその足裏を向ける。

土踏まずの部分にあたる場所が再び開き、ワイヤーが出される。

ワイヤーは、怪の腕に突き刺さると、また凄い勢いで巻き取り出す。

「……経過時間は1分と2秒か。丁度いいな」

ミューズは、巻き取られるワイヤーと降下してくる怪の勢いの両方を利用してはるか上空へと飛び上がった。

「トドメだ……喰らえ!!!」

空中でを反らせ、両手のひらを頭上で組んで下方の敵を見據える。

そのまま、重力による加速にを任せて落下する。

は、まるで単純な構造の機械のようにミューズに向かって突進してくる。

「ぐあっしゃああぁぁ!!」

「いい加減耳障りなんだよ、死ね!」

差する直前、ミューズが敵の頭に向けて両腕を振り下ろす。

グチャリ、という気の悪い音を立てて怪の頭部は木っ端微塵に破壊された。

「……流石、特務課に配屬されるだけある。確実に仕事をこなした」

「でも、無駄なきありませんでした? 結局ド頭潰すんなら、わざわざい殻に守られてる腹部まで攻撃しなくてもいいじゃないんスかね?」

「いや、敢えて防力の高い部分を破ることによって危機を覚えさせたんだろう。そして続けてさらけ出された『弱點』への攻撃。あの単細胞の化けは、ついさっき頭を潰されそうになったのも忘れて腹を守っていた。そこを狙ったわけだ」

「……ほへー、なるほど。留めの一発のためにわざわざ!」

「まあ、私の推測だがな」

もはやへと変貌した「失敗作」の怪は、ゆっくりと街の広場へと落下していく。

「経過時間、1分18秒12。まあ、自分に及第點をやってもいいか」

軽く肩をすくめると、ミューズはそのままジャンクヤードへと向かっていった。

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