《異世界転移するような人が平凡な高校生だと思った?》38話 覚醒 III
「......なぁ、ミスラ。 今俺らがいる場所ってどこだっけ....?」
「ダンジョン..ですが....」
ダンジョン90階層のボス部屋、そこには妙な會話を繰り広げる2人の男の姿があった。
「....だよな......」
 そんな中、祐に抱かれているは、今はミスラのローブを著せられて眠っていた。
「実を言うとですね。私はもうこの狀況、殆ど察しています。 」
「え!? 一どこに察せる要素があった!? 」
 正直、何が何だか全く変わらない....どうしたら數時間前まで、戦爭でも起きてたような部屋にが倒れていることを理解できるんだ....
「考えてみてください。 このはミノタウロスが灰になった場所の中から出ていたんですよ? しかも普通のではないのは見ればわかるでしょう。」
 言われてみれば、確かにこのは、人間とは自信を持って言えないほどのが頭にあった。
「確かにこの角は、人間と言えるものではないけど....そういう問題じゃなくて....」
 そう、この際人間か、そうでないかはどうでもいい。一番大事なのは、こんなか弱いがここに倒れていたことが問題なのだ。
「まだ気づかないんですか....? 貴方が倒したミノタウロスの角はどんなじだったか、よく思い出してください」
 ミノタウロス? なんで今その名前がでるんだ? 
 ん? 角..? 角って....まさか
 「このが....ミノタウロス....?」
 よく見てみれば、の角は、大きさは違えど、ミノタウロスのものと全く同じものだった。
「えぇ、まぁそういう事です。 分かったなら取り敢えず、暴れられたら困るので束縛しておいて下さい。 さして意味は無いでしょうが私たちが逃げる時間くらいは稼げます」
「束縛って....」
「恐らく、今このはミノタウロスの姿だった頃より強いですよ?」
 「....マジで?」
「マジです」
 祐は青ざめ、直ぐに行する。
『絡み、捉えよ』
『アーススナッチ』
 土初級魔法・アーススナッチ。これは風の応用の魔法だが、ミスラに教わって初級までは使えるようになっていた。
 この魔法は、束縛と言うには心もとない。主に手錠代わりくらいの役割しか持たない魔法だが、祐であれば、それは上半を包み込むほどの土で、束縛させることが出來る。
「よし、これでいいか?」
「はい、十分です。」
「じゃあ説明してもらっていいか?」
 「........」
ん? どうしたんだ? なんかミスラがジト目でこちらを見てくる。
「それはいいですけど....なんでそのを、抱き抱えたままなんですか..?」
「? だって地面に寢っ転がらせてちゃ痛いだろ?」
 そう答えるとミスラは、 「はぁ....殺されかけた相手に何を....」と呟いている。
「そこの灰にでも置いとけばいいんじゃないですか?」
 呆れながらそう提案するミスラに、祐は「あぁ、その手があったか」などと言って、を優しく灰の上へ寢かせる。
(今度地面で寢たフリでもしてみましょうかね)
 祐が聞く準備は出來たという風に、座り込み、ミスラを見ていた。
「じゃあ、説明しますが....祐、魔にもレベルがあるのは..?」
「知ってるよ」
「なら話が早いですね。魔にも私たちと同じでレベルがあります。 そしてステータスのレベル100までの數値は、あまり知られてはいませんが、実は神の恩恵なのです。」
「え、じゃあ自の力ではないってことか...?」
「それはし違いますね。恩恵と言っても、私たち神が與えたものは貴方達の本來持つ力を目覚めさせただけなのですよ」
 なるほど。全くわからん。
「分かってないようですね。 まぁ無理もないですが」
「んー、いやまぁ何となーくは分かるよ? ミスラが々省いて言ってるから分からないだけで。だけど、その人類が持ってる本來の力? ってのは自力じゃ発現出來ないのか?」
 そう、元々自分が持っている力ならば、自力で発現させることも出來るはずなのだ。だが、発現させることが出來るなら、神がわざわざそんな無駄なことをするはずがない。
 神がその恩恵を與えているって事は、出來ないという事なのではないか? または極小數しかという意味かもしれない。
「いい質問ですね。 えぇ、貴方の思ってるとおりですよ。自力で発現させることの出來る人間もいます。ですがそれは極小數。どころか、ひとつの世界に1人か2人くらいの確率なのですよ」
 あーなるほど..そりゃ神も恩恵を與えるわ。 いや、待てよ?だけどそれは本に疑問が出來る。
「そもそも神はなんで恩恵を與えたんだ?」
俺がそう口にすると、ミスラは若干渋った顔をして答えた。
「邪神が魔族に恩恵を與えたからですよ。 人類にも恩恵を與えなければ直ぐに絶滅してしまうと危機しての事です。あ、安心してください。祐の住んでた世界では、そもそも魔力がないため、誰も恩恵なんて與えられませんから」
 俺がその心配事を言う前に、ミスラが察して答えてくれた。
「なるほどな。 まぁ恩恵については理解出來たんだけど、結局このとなんの関係があるんだ?」
「先程、レベル100までは神の恩恵と言いましたね?」
「言ってたな」
「なら、レベル100を越える者は、なんなんだと思いますか?」
「話の流れ的に言えば....自力で自の可能を発言させた者....か?」
「そうです。 そしてその壁を超えた者をこの世界では、超越者と呼ばれるそうです。人類では勇者、魔族では魔王と呼ばれる様な者達がこれに該當します」
「なるほどなぁ......ぇ? ま、魔王?」
 おかしいな..今俺の耳に魔王って言葉がってきた気がするんだけど....?
「....そうですよ。魔王です。....もう私が言いたいことは分かりましたね?」
「い、いや。でもあのミノタウロスがレベル100を超えたとはまだ分かっていないんだろ....?」
「レベル1から100になったとて、見た目では分かりません。ですけどレベル100を超えたなら、知ってる者からすれば一目見ただけで分かります。それと魔族はある一定の所まで強くなると、何故かは知りませんが人の姿になるらしいですよ? 個人差はありますが」
 目の前で魔王が誕生したとか勘弁してくれよ....
 しかも、ミスラが神として行するなら何をするかは決まりきっている。
 別に殺す覚悟が出來ていないとかではない。こちらに危害を加えて來るのなら迷わず殺す。出來るかは分からないけど。
 でも、魔王だからって、殺すのは間違っているだろう。魔王は悪い者しかいないと誰が決めた。ミスラもそれを知っているからこそ、険しい顔になっているのだろう。
「もう分かっているのでしょう? これからやらなくてはならないことを。 ならばさっさと済ませましょう」
 苦渋の決斷。をしたと言うよりは、やるべき事を全うするべく、を捨てたようだ。初めてあった時のように。
「待ってくれ。 事が起きてからでは手遅れなのは分かってる....けど俺は──」
 お前にそんな、悲しい生き方をしてしくない....   そう言おうとする祐があることに気づく。
「....ミノタウロスがいない......?」
「ぇ? そんな...」
 を寢かせておいたはずの灰の山には、肝心のがいなくなっていた。
「一どこに行って....」
 考えられることとすれば、束縛を解いて逃げたか、だがもしそうだとすれば、大変な事になる。もし地上に出ようものなら、何が起こるかわからない。
「取り敢えず..急いで戻ろう! 今ならまだ間に合う!」
 ミスラの手を引いて、上層へ走り出そうとしたが、それは予想外の方向から遮られる。
「うぉっ!?」
 
 服を引っ張られる覚。それを結構な力で。
「ミスラ....ふざけてる場合じゃ!......え?」
 服を引っ張られている方を向くと、そこに居たのはミスラ..ではなく、今探しに行こうとしていただった。
「ドコ....イク? 」
「え....いや、あの........」
 すぐ近くにいた事にもビックリしたが、それ以上に會話出來ることに驚いた。ミスラも同じく驚いている。
「ソノカンジョウハ ナンダ?」
 い聲でそう言ってくる。
「えっと....俺らは驚いてるんだ。お前が、いきなり人間の姿になって」
 通じるか分からないが、一応意思疎通を図ってみた。
「オドロク? ソレハ シラナイ。ナンダ?ナンダ? 」
 どうやらある程度話ができるようだ。疑問を持つことまではしてくれている。
「ァ、デモ ヒトツダケ ワカッタ」
「ん? 何がだ?」
「シニソウニナッテ....ブルル っテナッタ」
 俺がミノタウロスのから魔法をぶっぱなした時のことを言ってるのだろうか。
「えっと....その時はごめんな? こっちもそうしなきゃ死....ブルルってなったんだ」
「ソウナノカ ワカッタ....ユルス」
 やはり結構話が通じる。それどころか割と仲良くできてないか?
「あ、そう言えば名前はあるか?」
「ナマエ..?シラナイ....」
「やっぱり無いかー。でもミノタウロスって呼ぶのもなー。  なぁ、良ければ俺が名前つけてやろうか?」
「ウン ツケロ」
「付けさせていただきます」
 なんだか、親戚の子供を相手してる気分だ。
「んー....そうだなぁ..見た目に合ったやつの方が良いよな」
 そう言って俺はを観察する。
 
 綺麗な赤い髪、そしてそれとは逆の寶石のようにキラキラしている蒼い瞳。
「シュナ....なんて........どうかな?」
「シュナ.........シュナ......シュナ!」
 どうやら気にったみたいだ。頬には若干赤みを帯びて、嬉しそうにピョンピョンしている。
「オマエ」
「ん? あぁ、俺の名前か? 俺は祐。佐野祐だ。んでこっちがミスラ。あれ?おーいミスラー?」
 ぼーっと立ち盡くして呆然としている、ミスラの目の前に手を翳し、気づかせる。
「はっ! ....ぁ、なんですか?」
 どうやら全く聞いていたかったらしい。
俺は取り敢えず今起こったことを、そのまま伝えた。
「名前....付けたんですか?」
「あぁ、俺はやっぱり、レベル100を超えた魔だからって、それが魔王と決めつけるのは違うと思うんだ。しっかりと教育すれば、きっと殘な奴になんてならないよ。だからまずは名前をつけた」
 俺はてっきり、殺さなければならない相手に何名前なんか付けてるんだ。みたいな事を考えてるのかと思ってそう口にしたが、ミスラが渋った點は他にあったらしい。
「いえ..それはいいんですが....魔にとって名前を付けて、それをお互いが承諾すると、名前を付けられた魔は、付けたものの配下になる....と言いますか..どちらかと言うと、戦友よりなので隷屬では無いですが」
「へ?」
 待ってくれ。聞いてない。そんなの聞いてないぞ..? ってかそういう事もっと早く知りたかったよ? なんか毎回手遅れなのは気のせいですかね?
「ユウ ミスラ オボエタ..」
 そして、シュナは周囲を明るく照らすほどの、明るい笑顔で....いや、普通にってね?
 シュナから発しているはいつしか、流れのように、シュナの周囲を回り、俺の中へってきた。
 その景はまるで、ゲームで言うところ契約完了。みたいなのであって....
〔契約完了〕
そんなアナウンスが脳に響いた時、裕は頭を抱えて蹲った。
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