《異世界転移するような人が平凡な高校生だと思った?》41話 力
 目を開くと、そこには見慣れない天井があった。
「......あ....れ..? 私....なんで........」
 さっきまで自分はダンジョンにいたはずだ。
 だが見てみれば、ここは宿の一室だった。そこに、ベットに寢こんでいる自分が、立てかけてある鏡で分かる。
 「........」
 起きたばかりだからか、頭が回らず、ぼー っとしてしまう。
 そんな事をしているうちに、時間だけが進み、5、6分そうしていたところで、部屋のドアが開く音がした。
 部屋にってきた人は、私か起きている事に気づくと、驚いた顔をして、ドタバタと部屋を出ていった。
「......だれ..だろう」
 見知らぬ人だった。まぁ元より、知り合いなんてあまり多くはないほうだけど....
 ドタバタが遠のいたと思ったら、そのドタバタが2倍くらいの大きさになって、近づいてくる音が聞えてきた。
 バタンッ! という音を立ててってきた人は、さっきってきた人とは別人だった。
 今度は知っている人だった。私が冒険者になりたての頃、冷たい態度を取っても何かと面倒を掛けてくれた付の人。
「ティファ!」
 私の名前をぶと、システィは勢いよく抱きついてきた。
「いつ起きたの!? どこか痛い場所は!? 私の事わかる!?」
 いっぺんにんなことを聞かれて困するティファ。
「わ、分かるわ。システィ、大丈夫よ。まだ起きたばかりだからぼーっとしちゃってただけ」
 システィのこんな姿見るの初めてね....
「それより....システィ、し痛い」
 強く抱き締めていたことに気づいたシスティは、慌ててティファを解放する。
「あ、ごめん!」
 自分でも、今の取りし様に気づいたのか、顔を赤くして恥ずかしがっている。
「えっと....正直、まだし混してて....狀況がわからないんだけど.....」
 しだけ落ち著きを取り戻したシスティは、近くにある椅子を持ってきて、腰を落ち著かせると、ゆっくりと話し始めた。
「じゃあ、まず私の知ってることを話すね」
 仕事をしている時は、システィはいつも、誰に対しても敬語だが、プライベートの時は、仲のいい人とはタメ口で話す。
「ティファ達がクエストに出かけてからね、3日経ってからも全く帰ってくる様子がないから、ギルドに掛け合って調査をお願いしたの。そしたら2日後、ダンジョン45階層で、ティファが、意識を失った狀態で倒れていたそうなの」
「....そう......45階層ね.......」
「大変だったんだよ? 重癥だったんだから、しかも時間が経っていたから、治りも遅くて、1週間も寢てたもの」
「....まぁ、必死だったから......」
 必死...?何で........? そう言えば、ユウは...ユウは....ミノタウルスと......落ちて......
 狀況と頭が、ようやく追いついてきたところで、ティファにはじわじわと不安が溜まる。
「......システィ.......ユウは?」
 調査隊が出たなら、私と同行したユウも探したはずだ。私のように助かっているかもしれない。
 だが、その希はシスティの暗い顔を見ることにより、砕け散る。
「....ユウさんは、調査隊が50階層まで潛って、調査しても見つからなかったと....ティファを連れて戻ってきてから、ギルドでもっと実力のある人達で、再度ダンジョンに潛り、70階層まで調査に行ったのだけど、見つからなかったらしくて」
「......そう」
 ここのギルドの人たちは、結構な実力者ばかりだ。多分1番強い人達がダンジョンに潛れば、90階層のボス前までは行けるかもしれない。
 だが70階層で引き返したのは、流石にここからもっと下に行けば、初心冒険者が、1人で生き延びていて助かる確率は、息を潛めて隠れていたって0%だ。ダンジョンに奇跡はない。
 私は、ユウを助けることが出來なかった。
「「........」」
 お互い、思うところがあるのか、何も言えずに黙り込んでしまう。
 「....私、しだけ期待してたの」
 1分ほどの靜寂の後、システィが口を開いた。
「....期待?」
「....うん、佐野さんなら、もしかしたらずっと自分を塞ぎ込んでいる、ティファの事を変えてくれるんじゃないかな....って、自分勝手な話なんだけどね........でも、そんな余計なお節介のせいで佐野さんが........」
 どうやら、システィは私のことを思って、々と回ししていたらしい。
「....余計なお節介なんかじゃないわ。確かにあいつは....私を変えてくれた。知ってる? あいつ、弱そうな癖して戦いの時だけは、意味わかんないくらい強いのよ..? 教えてもいないのに、いつの間にか気配消せるようになってるし....」 
 絶え間なく話が続く。
「死ぬってわかってても、簡単に代わりになって....きたり........」
 「.....ティファ........」
「だから、システィは何も悪くない。悪いのは私、意地張って、なんでも1人で解決すれば良いなんて考えてた私のミス。人は1人じゃ生きていけない。なんて誰もが知ってることなのにね」
 私はベットから降りて、立ち上がると部屋の窓を開けて、空気をれ替える。
「ごめんね、システィ。々と気を使わせて」
「....がう」
「え?」
 システィが何か、言い返したが、聲が小さくて聞こえず、聞き返すティファ。
「....違うって言ってるの! ティファはなんでそんなに自分ばっかり攻めるの! 友達が困っていたら助けてあげたいって思うのは當たり前なんだよ!」
「と、とも....だち.......」
 長く付き合っていたから、システィはいつも、私のことをどこかほっとけない。と言っていた。
 けどその時の私は、出來るだけ人と接することを拒んでいたから....友達なんて言葉は思い浮かびもしなかった。
「それともなに!友達と思ってたのは私だけなの!?」
 そんなはずがない。私だって、長く付き合ってきて、しずつだけど、友達のようなが芽生えていた。
 それはシスティは付の人で、一緒に冒険に行く訳でもないから、仲良くしても危険はないと言うのも1つだった。
 けど、それだけではなくて、この子はとにかく優しいのだ。
 システィ以外の付嬢が、冒険者にクエストの斡旋するとき、普通なら、その人のランクに合ったクエストを見繕い、クエストの概要を説明して終わりなのだが、システィはまず、その人のランクを見てから、過去のクエストで、危険だった場面、逆に安全に進めた時のクエストについて聞く。
 それからどんな武を使うか、そもそも、どんなクエストが良いのか、聞けることは全て聞くのだ。
 だが、ギルドのほとんどが、せっかちな人や、自分の実力を教えたくない。という冒険者が多く、システィの斡旋所に行く人は、多くないのだが、システィの斡旋所の常連は、未だに死傷者がいないのだ。
 それもこれも、システィが、めげずにその斡旋方法を続けているからなのだ。
 私は最初の頃、システィに冷たい態度で「なんでもいいから、早く斡旋あっせんして。別にどんなに難しいクエストでもいいから」と言ったのだ。
 普通の人なら、そんな挑発的な態度で言われれば、腹が立ち、そんな奴のために何十分もかけて、クエストの斡旋なんてしないだろう。
 なのにシスティは誰になんと言われようと、「でも、しでも危険は減らした方が、貴方が傷つく可能が減りますから」
 そんなことを言ってきたのだ。おかしな人だな。と思いながら、話していくうちに私は、システィがどんな人かを知った。
 いつの間にかシスティへの態度はらかいものとなっていて、システィもプライベートの時は、タメ口で話すようになった。
 その時から私は、システィを友達だと、意識していたのだ。
「そんな....そんなことない! システィは私の友達!いいや、親友とだって思ってる。ごめんね。私、まだどこか、悩んでたみたい。人と接することに」
「....私もごめん、ついカッとなっちゃって........」
 自分達ののを話し合い、し正気に戻ると、急に恥ずかしくなったのか、黙り込む2人。
 いつしか窓からは、賑やかな聲が聞こえてくる。商店街で店を出し始める時間帯らしい。
「....私ね、システィ。 この國を出ようと思うの」
「.......ぇ?」
 急に言われた言葉が、全く予想できなかったもので、ろくな言葉を返せないシスティ。
「行先はもう決まってるんだけどね....」
「ちょ、ちょっと待って!」
 そのまま話し出すティファの會話を慌てて止める。
「どういう事なの....? まさかまた1人で抱え込むつもりじゃ........」
「え? あ、いやいや違うわよ? 別にまた1人になろうとか、そういうんじゃないの」
 1人で抱え込もうとしている訳では無いと知り、取り敢えず安心するシスティ。
「えっとね、このクレイアスからずっと南に行ったところに、海の國  マリンシエロ って國があるじゃない?」
「..えっと....うん、あるね。あそこは確か島國で、なんでも、その島の周り海水は、魔を通さない不思議な魔法がかけられていて、とても安全な國なんだとか」
 安全とは言ったものの、それは魔からは。という話だ。
 人と人との爭いに関しては、多の地の利はあっても、魔法があるこの世界では優位と言えるものでは無い。
 そのため、マリンシエロは平和ボケしないために、國の名前に反して、中々の戦力國家だ。外壁などは無いため、24時間制で國の外を見張る警備、海の中を見張る警備がおり、中々の厳重警戒だ。
 資源が富で、魔にも襲われない最高の土地だからといって、この國の戦力を知れば、そこに無斷で足を踏みる愚かな國は、そうそういない。
「だけど、なんでそんな所に....?」
「....あの國は戦力以外は、特別なものなどない。って言われてるじゃない?けど、最近あることを聞いたのよ。マリンシエロでダンジョンが発見された。って」
「....ダンジョン」
 
 ギルドの付嬢である、システィでさえ知っていなかったということは、本當に最近のことなだろう。
 だが、それだけでは、國だけでもすごく面倒なマリンシエロまで行く理由にはならない。
「そのダンジョンなんだけど、し特殊で、スキルが使えないらしいの」
「スキルが....?」
 スキルが使えない場所なんて聞いたことの無いシスティはその報がにわかには信じられない。
「信じられないと思うけど、多分これは信用が高いの。マリンシエロで、調査隊を送ったらしいんだけどね、....結果は全滅。マリンシエロの鋭部隊4人パーティの4組。16人で行って全滅....信用はあるでしょ?」
 マリンシエロの鋭部隊ともなれば、普通のダンジョンなら、単獨で行っても余裕を持って踏破できるほどの実力があるという。そんな化け集団が.....全滅?
「鋭部隊が全滅ってところの方が信じられないんだけど....? それにそんな所にティファが行ってどうするの...?」
「私は、強くなりたいの。でも、どうしてもこのスキルが私を邪魔をする。スキルが使えないって言うのは、今の私にとっては、絶好の修行場所なの」
 ユウが死んで、嫌という程思い知らされた。自分の無力さ、一生こんな思いをするのはごめんだ。けど1人になるのはもっと嫌だ。あんな、なんで生きているのかさえ、分からなくなる日々は。
「....ティファは、なんでそこまでして冒険者にこだわるの? 恩恵のせいで、そんな苦労をしてるなら、もっと安全な道だってあるんじゃない?」
 運がいいなら、商人になったり、お金を稼ぐだけであれば、カジノとかでもいいだろう。とにかく安全な生き方なんていくらでもある。
 わざわざ、常に命の危険のある冒険者になる理由なんてあるのだろうか?
「なんでって....そんなの決まってるじゃない」
 時計塔の鐘が鳴る。街はどんどん賑やかになり、小川では、子供たちが遊んでいるのが見える。
「───冒険が好きだからよ。新しい発見をして、んな國に行って、んな人と出會って、別れて....悲しいこともあるけど、やっぱり私は冒険が好きなの」
 ティファは苦笑いしながらそう言った。ユウの事はまだ吹っ切れていないんだう。苦笑いの理由は、そういうことだと思う。
 だが、その顔は一回り頼もしくなっていて───
「そっか........ティファの事本當に変えちゃったんだ。あの人。私から期待していたことだったけど、ちょっと悔しいな。」
 システィも、ほんのり笑顔を浮かべて、ティファ席を立つ。
「よし!じゃあ、しでもティファがマリンシエロに國しやすいように、ギルド側でアポを取っておかないとね! あっちのギルドは、ここより強い人ばかりだから、気負いしちゃダメだからね〜?」
 さっきまで、暗い顔だったシスティが、立ち上がるやいなや、そんなことを言い出した。
「ぇ? ちょっ!え!? いやいや、待って、そこまでお世話にはなれないわよ」
「何言ってるの! お世話じゃないよ!友達としてやるの! これだけは譲らないからね!」
 システィの気迫に押されて、一気に弱るティファ。
「わ、分かったわよ............ありがと」
「....え!? ティファ今ありがとうって言った!?」
 「....私がありがとうって言うのがそんなに驚くことなのかしら..?」
「へ?....あー........あはは、いや、そんなことないよ...?」
不穏なオーラを発しているティファに気づくと、システィの顔が引き攣る。
「じゃあどうして、後ずさってるのかしら........? ほら、何もしないからこっちに來なさい?」
「え、えっとぉ........あっ!し、仕事いっぱい殘してるんだった!ティファ後でねーー!!安靜にしてなくちゃダメだからねーー!!!!」
システィはそう言いながら、部屋を出て冒険者顔負けの走りで逃げた。
「ちょ!こら!待ちなさい!!! 」
ティファは走り出す。システィを追って。
その後、ティファは傷口が開いてまた寢込むことになるのだった。
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