《異世界転移するような人が平凡な高校生だと思った?》49話 絶の洗禮 IV
 気づけば、白龍が出現した時のように、刻印がっていた。
「....これは」
 ただ、白龍の時と違うところがあるとすればそれは......
「まさか....でも、そんな.....!」
 刻印から溢れ出るは.....黒。
 白龍が出現した時と同じように黒いは集まり、生を形作る。
 そうして現れたものは────黒い龍。白龍と完全に逆。広がる翼は悪魔のように禍々しく、全黒で染ったからは、るだけで溶けてしまいそうなほど幽々たる紫煙を放っている。
 黒龍のまるでアメジストのような目が淡くり、その視線を祐へ向けた。
「....もう一.....かよ」
 見てみれば、部屋全描かれていた刻印が消えていた。最悪の狀況ではあるが、これ以上召喚され事は無いと分かっただけでも終焉から絶くらいには変わる。
 取り敢えず今は慌てず、冷靜に。ここで判斷を間違えれば、あっという間に全滅だ。
 不意に、ミスラが言っていたことを思い出す。
─────あの龍、多分段階を踏んでいます。
 段階。その言葉が初めはよく分からなくて、仮定として思ってたのが、俺らが攻撃らしい攻撃を與えることが出來るまで、敵とも思っておらず、ただの雑魚と認識しているから、一回目の攻撃はデカいのを。ということを言っているのかと思っていた。
 事実、白龍は俺が魔法を詠唱している間、全くかなかった。だからそれは正解だと思っていたが、今思ってみれば変だ。でかい攻撃をしてしいなら、段階なんて言う言葉を使わずに、直接的に言えば良かったはず。更にいえば、もしそれを頼むなら俺ではなくシュナのはずなのだ。
 段階....そんな曖昧で機械的な言葉を使う理由はなんだ?
 ミスラに聞こうにもまぁまぁ距離が離れているし、大聲で話し合う暇もない。何故なら、黒龍が紫煙を集め始めているから。
 白龍はいつの間にか、黒竜の隣に移していた。だが、は溜めずに、まるで黒龍が紫煙を放つのを待っているのように、佇んでいる。
 気になるが、かないというのなら今は見ないことにし、黒龍に視線を向ける。
 どう見ても集まっているのはではなく煙。一見、ただの目くらましかと思うが、その案をすぐさま捨てる。龍の溜め技がろくなもんじゃないのは経験済みだからだ。
 煙なら一瞬で消し去ることは無いと願うが、攻撃である以上、最低でも俺らを行不能にさせるくらいのものではあるはず。
 ならば被弾は確実に避けた方がいい。った時のように、魔が実験になってくれれば良かったんだが、仕方な...............ん?いや、待て有るじゃないか、最高の実験が。
 「『求めるは風、全てを律し、全てを束ねよ
 ─────天風グランドブラスト!!』」
風屬上級魔法。天風(グランドブラスト)。祐が魔法名を唱えると共に、祐の足元から巨大な魔法陣が発生する。そこから溢れ出るは、もちろん風。
 止まることなく出てくる風をって敵に攻撃をする魔法。だが、しだけ違うのは、者本人の技量によって、風は様々な形に出來ると言うのがこの魔法の本質でもあり、1番使い勝手が悪いとも言える魔法。ついでに消費魔力は闇魔法の次に大きいというのだから中々使うものはいない。
 祐がこの場面でこの魔法を使った最大の理由は、1番規模の大きい風魔法でないと防げない可能があったから。
「お、おいおい!ちょっと規模デカすぎてりきれないんですが!!!」
 どうにかミスラたちには被害が行かないように務めていると、いつの間にか部屋の半分くらいが嵐の狀態になっていた。
「祐!なにやって.....か! はや.....して...さい!」
 ミスラの聲は風の風切り音によって、ほとんど聞えないが、言いたいことは何となく分かる為、今は目の前の敵を忘れ、風に集中する。
「....ハァ.....ハァ.......くそ!全く....言う事聞かねぇじゃねぇか......」
 思えば、魔法をる技なんて、そもそも俺にはないんだ。あるのはあいつ・・・の力だけ。俺にこれを使いこなすだけの力はない。
 力がない。でもミスラ達は死なせたくない。どうしても。ならどうするべきか。そんなの決まってるじゃないか。しだけ....ほんのしだけ、俺が...........俺・のことを認めればいい。
「だからっ....! いい加減!俺のいうことを聞けぇぇっ!」
 すると次の瞬間───ほんの一瞬だけ、風が止まった。この気を見逃さず、祐は一つのことだけを念じ、集中した。
 黒龍は、今にも口から溢れ出てきそうな紫煙を、俺らに向けて........ではなく、地面に向けて、勢いよく吐き出した。
恐らくそれは全に煙を充満させるため、祐の賭けは當たっていたようだ。やはり前方にでは無く、全的に放つ戦法を選んできた。
 どんどん広がる紫煙だったが、祐の目の前まで來て、何かの壁にぶつかったように上へ上がって行った。
 下を向いている黒龍がどんな顔をしているのかし見てみたかったが、隣で巻き込まれているはずの白龍が、紫煙が俺らに屆いていないのを見て、なんのリアクションも起こさなかった。
 祐は風をコントロール出來ていた。一瞬風が止まってからずっとある一點に絞ったこと。それは圧。悪くいえばゴリ押しだ。上手く風をかして、紫煙だけを取り除いてそれを利用して武にする。なんて技はあるはずがない為、ゴリ押すことにした。
 結果、紫煙はルームの真ん中に、堂々とドーム狀に殘ってしまってる訳だが、二つ目の実験は出來てるわけだし、今生きてるだけで良しとしよう。
「さて、問題の相方さんがやられてくれてると..助かるんだが」
 わざわざ黒龍の隣に行ったくらいだから、耐があるんだろうとは思ったが、白龍はシュナの攻撃で鱗が剝がれている。あの紫煙の効果は分からないが、多傷を負ってくれてればこちらとしては萬々歳だ。
 未だに圧した風は、紫煙と龍2匹を閉じ込めている。
「───無茶しないでください」
 「ミスラか。いや、ごめん。風のコントロールってこんなにきついと思ってなかったんだ」
 実際、維持するだけでも指一本かせない。
「そりゃそうですよ。祐が使った魔法は追加詠唱を必要とするなんですから」
 「...........ちょっと?初耳っすよ?それ」
 俺の言葉に何を言ってるのわかないと言った風の顔をするミスラ。
「だってそもそもそんな魔法、私は教えた記憶ありませんよ....?」
 教えてない....?でもなんでじゃあこんな魔法俺が知って.........あぁ、いや知っててもおかしくないか。
 これも前世の記憶を取り戻してきてるって事なのかな。そのでごっちゃになってたとか笑えないが。
「そもそも、なんでもっと私たちを頼らないんですか」
「え?」
 十分すぎるほど頼ってると思うんですが....?
「いーえ!全く頼っていません、頼られていません。さっきだって、風魔法なら私に任せてくれればよかったんですよ!私は神ですよ?技ならその名の通り神ってるんですから!」
 なんか口調が雑になってないか....?
 けれど、ミスラの言い分は最もだ。頼れていないのは、信頼しきれていない証。ミスラからすれば、頼ってくるだけの存在より、そっちの方が不愉快なのだろう。そして息を吸うように俺の心を読まないでくださいミスラさん。
「本當にもう!いっつもそうです。流石の私も分かってきましたとも!えぇそれはもう痛烈に!私やシュナは守られるだけの存在じゃないんです!分かってるんですか!?」
「あ、あぁうんわかっ──」
「いいえ!分かっていません!その顔は全くわかっていません!そもそも祐は──」
「ちょ、ストップ!ストーップ!!確かに、今流れで分かったって言おうとしちゃったことは謝る!ごめん!後で幾らでも聞くし、改めるように専念するから!今は目の前のを片付けようぜ?な?」
 流石にこの狀況下で説教をけてる時間は本當に無い。まだあの紫煙も殘留してる訳だし、あれを何とかしないと俺の殘りない魔力はどんどん削られるばかりだ。だから別に、ミスラの説教から逃げようとか、そんなことはもちろん思ってない。
「........むぅ、まぁいいです。その代わり地上に戻ったら説教24時間も追加ですからね」
 全力で聞かなかったことにしよう。
「あの紫煙をどうするかですが....もう魔法を解除していいですよ」
 そんな事をしたら紫煙がこのルーム一に蔓延する。そんな言葉はミスラの信じてしいと言うような顔を見ると。言葉に出すことは出來なかった。
「......分かった。策はあるんだよな?」
「えぇ、もちろん」
 そう自信満々言ってみせるミスラ。そんな姿を、ちゃんと信じて頼ることにした。
「じゃあせーので行くぞ」
 「はい、いつでもどうぞ」
 俺の今の魔力は殘り3割程度。中級魔法を5、6発打てるか打てないかってところだ。だから、魔法はミスラに任せよう。この世界に來て、魔法に頼りすぎてて、視野が狹くなっていたかもしれない。魔法を使い始めてまだ何週間程度の付け焼き刃で挑んだツケがここにきて一気に押し寄せたんだ。逆に、ここに來るまで、技量不足で魔法が発しなかった。なんて事が起こらなかったのが不思議なくらいだ。
「いくぞ......せぇーのっ!」
 風の魔法を解く。すると中に溜まっていた紫煙が一気に広がり始めた。だがミスラは臆すること無く、言葉を発した。
「〝────神権発:神威カムイ〟」
 
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 いつもこの作品を読んでくださり、ありがとうございます。最近、投稿頻度が落ちてしまっていてすいません....
 ただいま、しリアルの方が忙しく、23日まで更新をストップさせようと思っています。
 24日からはまたいつも通り投稿していこうと思っていますので、これからもこの作品をよろしくお願いします。
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