《異世界転移するような人が平凡な高校生だと思った?》56話 ボーナスステージ

はっ!  あー気絶してたわ。危ない危ない。

 自稱気絶マスターの俺くらいになると、目を開ける前に気絶してたことに気づけるのだ。みんなも目指さない?.....あ、はいそうですよね。

 さて、じゃあそろそろ目を開けようかな。

「........んと...........」

 目を開けると、ミスラの顔が、いや、があった。

「久しぶりですね。膝枕というのも、ダンジョンではあなたに止されてましたからね」

「........なんか、膝枕するとミスラって聖になるよな」

「...一応言っておきますが、私は神ですからね?褒めてるようでランクさげてますからね?」

 前にもしたような會話。

「はははっ」

「ふふふ」

 それが何故かおかしくなって笑い合う二人。

「いつまでそれ、してるノ?」

 そんな2人をジト目で指摘するシュナ。

「あ、あぁそうだな。ずっとここにいてもな」

「で、ですね。早く行きましょう」

 悪いことなどしてないのに、何となく恥ずかしくなる二人。

 祐は立ち上がると、改めて周りを見渡す。

「ここ、ダンジョン前じゃないな」

 確かダンジョンは森の中にあったはずだから、こんなに開けた場所じゃなかった。

「祐、あそこに、人」

「え?あ、ほんとだ」

 見てみれば、1臺の馬車が通っていた。

「あれについてけば前にいた街に著くかな」

「元々どこの街にいたんですか?」

「んー、確かクレイアスとかクレイレスとか言うところだったかな」

「じゃあもう、直接聞いて見ましょう」

 まぁ、それのほうがいいか。

「すいませぇぇぇん!!」

 馬車に乗ってる人達は、俺たちに気づくとし距離を置いて止まった。すると

「そ、そこに誰かいるのかっ!お願いだ!!助けてくれぇ!!」

「ん?」

 馬車の中から、老人と思しき聲が聞こえてくる。すると

「黙れくそジジィ!殺されてぇのか!!」

 そう帰ってくる聲だけで、馬車の中はあまり良くないことになってるようだと分かる。

「ミスラ、中が見えるように出來ないか?」

「助けるんですか?」

「いや、そもそも本當に助けが必要なのかも分かんないし」

「はぁ..?まぁいいですけど」

 よく理解できないまま、ミスラは魔法を詠唱する。

「早くっ!早く助けてくれぇ!!殺されるぅ!!」

「〝風ウィンドブラスト〟」

 魔法名を口にすると、馬車の荷臺に被せてあった布が、どんどん膨らんでいき。弾け飛んだ。

 見てみると荷臺にはガラが悪く、武を持った男が4人。そして、後ろには老人が何にも縛られずにクロスボウを握っていた。

「助け───.....え?」

「やっぱり老人もグルだったか」

 他4人が、誰一人老人の方をにを向けていないのが何よりの証拠だ。心配してり込んできた、哀れな冒険者を嵌めようとしていたのだと容易に考えられる。

「チッ バレちまってるじゃねぇかよ」

「まぁいいだろ別に、相手は丸腰の3人、しかもそのうちの2人はだ。捕まえて楽しんでから金にでもしろ」

ぎゃははと下品に笑う賊。

「テンプレだなぁ」

「テンプレですねぇ」

 そして、その景をまるで劇を見るような目で見守るのが約2名。そして何を考えたのか、その場に寢っ転がったのが1名。

「これが草むら、気持ちぃ......」

「....なんだあいつら、怖くてを無くしたのか?の方は反応が良くなくっちゃつまんないんだがなぁ.......」

「隊長!俺あのちっちゃいのがいいっす!」

「ぁあ?お前ガキ好きも大概にしとけよ....まぁお前以外にガキ犯すのが好きなやつなんざいねぇから好きにしろ」

 なんかもう盛り上がってる賊達。

「ミスラ」

「なんです?」

「これってさ、いわゆるボーナスステージってことでいいんだよな?」

「....いいんじゃないんですか?知りませんけど」

「またまた〜ゲーム好きならみんな大好きボーナスステージだぞ?ミスラが知らない訳─────」

「し り ま せ ん け ど ?」

「すみません勘違いでした」

 傍から見ればまるで賊など忘れ、談笑に花を咲かせる男の姿。それを見る賊達も唖然とするが、いつまでもそうするわけがなく、後方にいる老人が祐に向けてクロスボウを放つ。

 祐は完全によそ見して、余裕を見せるように會話している。賊達は絶対に仕留めたと思った。結果を見るまでは。

「ふーん、矢に毒まで塗り込んでたのか。これはちょっと予想外だったな」

 祐の手には今まさにクロスボウで飛んできた矢を摑んでいた。

「なっ!?」

 その景を見て賊達は、ギョッとして固まる。

「これで確実にそこの老人も敵....って事かな」

 そして、人質がいないとわかった途端、先程の暖かい空気とは一変。鋭い殺気が賊達に降りかかる。

「ぐっ....な、なんだっ!?かねぇ!」

かないどころか重いぞ!」

 未知の現象に、ぶるりとを震わせる賊達。その狀況はまるで、殺気だけで敵が怯んでいるように見える。

 だが実際はそんなことは無く、ただ単に〝重力作:増幅グラビティブースト〟で殺気に圧があるように見せているだけ。

 龍でさえも押さえ込んだスキルだ。常人であればあっという間に地に手をついてしまう。

 「さーてと、漁るか〜」

 賊達全員がその場で這いつくばった格好になる。

「...お、おまえ.......何をするつもりだ」

 恐らく賊の頭だと思われる男が、震えながら質問する。

「んー、取り敢えずお前らのぐるみ全部剝がす」

 今まさに自分たちがしようとしてたことを、そのまんまやり返される形となって、賊達はまたも唖然となって押し黙る。

 それに対し、腐っても頭である男は威厳のある聲でこう言った。

「マジすいやせんでした!慈悲を!慈悲をください!!」

 威厳、ねぇ〜.....

「ぼ、ボス!やめてくださいよ!めっちゃダサいっすよ!」

「うるせぇ!人のもん盜んでる時點でダサいんだよ!淺いプライドなんか捨てやがれ!!」

 ふむ.....

「仕方ないな。じゃあクレイアスとかクレイレスとかいう街の道のりを教えてくれれば───」

 どういう訳か、急に優しくなった俺に期待の眼差しを向ける賊達。

「命だけは助けてやる」

「「「「「殺す気だったのっ!?」」」」」

 ぐるみを剝がすのが最上級だと思っていた賊達の考えは間違っていたようだ。

「はぁぁ..當たり前だろ?お前ら俺の仲間に何をしようとしてたのか、今ここで言ってみろよ。あ?」

「うぐっ.......」

「.........まぁ分かるさ。お前らにも生活がかかってるんだろ?」

「...っ!そ、そうなんですよ!最近じゃも捕まえられなくて.....あ、いや、そのというのは───」

 どんどん乗っかってくる賊の頭。

「そんな怖い顔をするな、全て冗談だ」

「え?」

「あんまり舐められるとお前らまた襲ってくるだろ?」

 俺のその言葉に安堵の顔をする頭とその他。

「お前らも苦労してるみたいだな。良ければ手助けさせてくれないか?」

「な、なんだって?」

 狀況が全くわからず、聞き返すことしか出來ない。

「金なら十分に持ってる。その金で、今から真っ當に働くってのは、どうだ?」

 「......あ、あんたになんの利益がある?」

 急な俺の優しい態度も相まって、警戒を隠せない頭。盜賊にとって、利害関係はやはり大事らしい。

「俺は聖職者でな。お前らは信じられないかもしれないが、人を助けることが生き甲斐なんだよ」

 俺は優しく頬笑み、手を差しべる。

「.......分かった。その金をけ取って、俺らは真っ當に働く」

「よし、立だな。じゃあまずはお前らの仲間の人數も知りたいしアジトに連れてってくれ」

「え.......あぁ、分かった」

 半信半疑の賊達。どうして信じきれないのはあるだろうが、1番は─────

「ほら、これだろ?」

 俺は次元水晶から金貨を手に乗るだけ出す。

「お、おぉ.....」

 その後、あっさりと信じた賊達と共に、馬車を引いてアジトへと向かった。

***

「ここか」

「はい、そうでやんす」

 あからさまに頭の口調が変わってるのは今はいいとして、こんなに簡単に連れてくるとは思わなかった。俺、ミスラ、シュナは馬車から降りると、僅かにカチャ。という音がした。

「ギャハハハハハハ!!本當にアジトまで來るとはなぁ!えぇ?やっぱガキはガキだな!規模はそんな大きくないだろうとか、勝手に思い込んでたのか!?ほんっとうにバカだなぁ!!」

 アジトの中から、數にして50人ほどの賊が出てきた。

「お前らこそ、馬鹿にも程がある」

「...は?なんだなんだ、この狀況でまだ勝てるとか思っちゃいないだろうなぁ?お前らはもう終わりなんだよぉ!は辱めた後に売っぱらう!男はぐるみ剝いで殺して終わり!殘念だったなぁ〜!」

「....ここまで下衆だと、初めての人殺しも気負いなく出來そうだわ」

 頭は手を挙げ、戦闘開始の合図のように、振り下げる。

 合図はした。だが、聲が聞こえない。いつまでも頭の聲がしない事に、賊の1人が痺れを切らして、目を向けると。

「え.....」

 頭に目を向けたはずなのに、顔が見えない。それもそのはず、なんたって、首から上が無くなっていたのだから。

***

「慈悲はない。死にたいやつからかかってこい」

「てめぇ!よくも──」

 仇討ちを使用も立ち上がった一人の男は、何かを言い終える前に頭が落ちた。

 先程から、祐は一歩もいていない。なのに、瞬殺される。その様は賊達にとっては圧倒的な強さだと思った。

「なんだ?もう終わりか?流石の俺も、50人いっぺんに來たらヤバいかなーと思ってたんだがな」

 その言葉に乗っかって、賊の中でも馬鹿な者達がいた。

「ならやってやろうじゃ────」

「てめぇ!ふざけ───」

「くらいやが────」

 その言葉に乗せられて、どんどん數を減らしていく。

「ど、どうなってやがる....あいつ、指一本かしてねぇってのに....」

「.....もうかかってくるバカはいないな?」

 場はシンと靜まり返り、盜賊達は自然と武を手放す。

「よし、じゃあ種を教えてやるよ。〝幻刀〟」

 祐がそう口にした途端、生き殘ってる盜賊の人數分の分が出現した。

 口をあんぐりと開けて驚く盜賊達。

「手を前に出せ」

 逆らう気など失せたのか、素直に手を出し次々とロープで縛られる。

 こうして、突如祐達に降りかかった問題は解決したのであった。

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