《異世界転移するような人が平凡な高校生だと思った?》59話 帰還 II
「システィー?ちょっと手が離せなくなったからけ付けに回ってくれない?」
 ギルドでは忙しなくき周る付嬢やその他職員の姿があった。
 普段はここまで忙しくはない。なのにそれが一転、今では暇な人など一人として見當たらない。
 そんなに忙しくなってしまった理由。それはこのギルドで登録していた新人冒険者が死亡したからだ。
 いや、死者が出たと言うのは間違ってないが、正確にはダンジョンにて行方不明。そして恐らく仲間はおらず一人きり。そんな狀況でもう2ヶ月も経っていた。その間、それらしい発見報告は一切無し。ギルドが死亡と見定めるのも仕方の無いことだった。
 この責任は、通常であれば一緒に行していた教が追うべきではあるが、今回は事が違った。低層で現れるはずのないオークやミノタウロスが現れたという完全に異常な現象、しかもミノタウロスに至っては知があった可能があるという。
 元より知のない魔に知が生まれる事の危険。それを知らない者はこの世界にいない。
 曰く、新たなる魔王誕生である。
 そうなればもうギルドも責任など言っていられない。手遅れになる前に、そのミノタウロスを討伐しなければならない。
 報告によれば、その新人冒険者と共にミノタウロスは突如崩壊したに落ちたと言う。
 ギルドは犠牲者を出さないために、ダンジョンへの侵を一時止させ、何度も調査隊を送った。だがはもう塞がっており。未だに足取りを摑むことが出來ていなかった。
 そして現在。王都に事を説明し、兵を送り込んで貰えるように申請している。
 ギルドと國は、基本仲が良くない。ギルドは獨立組織。國に稅を払う必要も無ければ、命令でギルドをかすことも出來ないからだ。だが、世界の危機となると話は別。そういう場合はお互いに協力し合う事にしている。
 忙しなくく職員たち、そして、ダンジョンに潛れず、けれるクエストの數が半分ほど減って、する事がない冒険者たちが、職員たちをただぼーっと眺める姿は、中々にシュールと言えた。
「なぁ、お前手伝ってくれば?」
「はぁ?なんで俺が。お前が手伝ってこいよ、お前いつも荷持ちのクエストしかしてないじゃねーか。お似合いだろ」
「うるせーな!荷持ち舐めんな!死ぬリスクゼロだぞ?めちゃくちゃいいクエストだうがっ!」
 そんなことを話し合うおっさんの冒険者達の姿は、掃除をしている時に、サボってるクラスの男子が「お前手伝ってこいよ」「やだよ、お前いけよ」と茶化す場面そのものだった。そのやり取りを付で見守るシスティの顔は若干引いている。
(ティファ、元気にやってるかな......)
 ティファがこの街を出てってから、未だに手紙の一通も屆いていない。早速ダンジョンに潛っていて送る暇がないのだろうとは分かるけど、し寂しい。
(あ、早く仕事しないと)
 付に立ったとしても、もう碌なクエストは殘ってない為、発注してこようと言う人はいない。
 システィは目の前に山積みにされた書類にげんなりしながら、仕事に取り掛かる。
 ギルドのドアが空いた音が聞こえる。クエストを探しに來たのだろうか。だとすれば殘念。もうほとんど殘ってない。
 システィは早速書類に目を向ける。付を擔當しているとはいえ、人は來ないだろうと察し、集中モードで片付けにかかる。
「あのー、すいません」
 1枚目完了。2枚目。
「....付さーん?聞こえてますかー?」
2枚目完了。3枚目。
 システィの仕事の速さはギルドでも目を見張るほどの速さである。だが、1回集中モードにると側の聲は殆ど聞こえなくなる。
「んー....仕方ないな......えい」
「あ」
 付前でずっとシスティを呼んでいた人は、最後の手段として、システィが握っていたペンを取りあげた。
「...あ、すいませんっクエストですか?.............へ?」
「いえ、クエストと言うよりは〜、生還報告?」
「..................」
「あれ....?また固まった」
 システィの目の前にいる男。ギルドで死亡したとみなされた新人冒険者。佐野 祐がそこに居た。
待て待て落ち著け私!まずはゆっくり深呼吸。ヒッヒッフー、あれこれで合ってるっけ?
 と、とにかく現狀確認から!
 付で仕事をしていたら話しかけられた人が確認はされていないが死んだはずの佐野さんが.....いや、そもそも本當にこの人は佐野さん?なんか顔つきが覚えのある顔とは全く違う気がするし、というか決定的なことを言えば片腕がなくなっている。
 ダンジョンから地上に上がるまでに失ったとも考えられるけど....
 それに、佐野さんはダンジョンで一人だったはずだ。なのに、その後ろにはには佐野さんと大差ないほどのボロボロの服を著たが二人。あれ?もしかして危ない人?
「付さん?」
「は、はい!...そのー申し訳ないのですが、名前をお伺いしても宜しいでしょうか?」
「佐野 祐ですけど」
 ............,私どうすればいいのかなぁ....いや、まだ佐野祐さんと確定した訳じゃない。なぜなら、もし佐野さんだとすれば私を知らないのはおかしいのだ。いや別にナルシストとかそういうんじゃないんだけど、私の名前も知ってるはずだし事務的なことではあるけど結構話した、覚えてないのはおかしい気がする。
取り敢えずこの人が佐野さんだと仮定して、聞いた見よう。
「目撃者によればミノタウロスと共にダンジョンの奧深くへ落ちたはずですが..もし落下で運良く生きていたとしても一緒に降りたミノタウロスをどう振り切ったのでしょう?」
 魔王になる可能のある魔を新人冒険者が単獨で倒せるはずもない。ここで気軽に「倒した」などとは言わないだろうから、無難にミノタウロスが気絶している間に逃げた。というのが妥當。
「倒した」
「なるほど、やはり運良く逃げれたんで.....はい?」
「いやだから、倒したって言ってるじゃん。々順序はあったけど、倒したよ」
 何を言っているのだろう、この人は。順序とか関係ないでしょ、そもそもあんな深いに落ちて助かったとしてもその階層でまともにけるわけがない。
 やっぱりこの人は偽で、ミノタウロスの恐ろしさを知らずにそんなことを言っているのだろうか。でも、それになんのメリットがあるんだろう。もうし聞いてみようか。
「あのですね。貴方が対峙したミノタウロスは魔王になる可能のあった魔という事をご存知で?」
「へ、へぇそうナンダー。魔王ねぇ、そりゃ大変だ。でも良かったね。俺が倒したから解決ダヨ」
アウトの反応ですね。
「はぁ...イタズラなら結構です。お帰りください」
 佐野さんはティファを変えてくれた人だ。だから、その恩人の名を別人に名乗られるのは、メリット云々ではなく、し苛立ってしまい口調が強くなってしまった。
「祐。私が変わります」
 何かと思えば、次は妙に無表で空の髪をしたが前に出てきた。
「私の名前はミスラといいます。そしてそこにいるもう一人のの名前はシュナ。祐とシュナとはダンジョンで出會い、共に100層まで辿り著き、そこにいたボスを倒して地上に戻ってきたのです」
「...は?」
 今この子なんて言った?100層?ボス?たったの三人で?
「ごめんなさい。ちょっと何言ってるかわからない」
 イタズラにしてもちょっとガチトーンすぎてブラックジョークにもなってない。
「祐。あれを出してください」
「「「「...........」」」」
 沈黙。誰もかない。
「...ちょっと祐、早くしてください」
「いや、あれってどれだよ」
「クリアの証ですよ。言っておいたでしょう」
「言ってはいたけど、どれがその証なのかがさっぱりだわっ!!」
 あれ、なんか急に佐野さんが佐野さんっぽくなった気がする....どうしよう。もしかして......本?
「赤い寶石のようなやつです」
 祐は言われた通りに袋にガサゴソと手を突っ込みそれらしいものを探す。
「これか?」
「それは灼石しゃっこうせきですよ。よく見てください」
.....なんでそんな価値の低くて、落としただけで散する危険なだけの石を持っているんだろう..........やっぱり危険人??
「じゃあこれか?」
「それは龍の心臓ですよ...って!何てもの持ち帰ってきてるんですか!!!」
「え?心臓なの?これ。こんな鉱石みたいなのに」
 
あ、早く警察呼ばないと
 そんな私の危ない人を見る目がミスラというに伝わってしまったのか、し慌てている。
「ちょ、ちょっと貸してください」
 半ば強引に佐野さん(仮)から皮袋を奪取し、中をガサゴソ。というかあの皮袋ってるのってもしかして次元水晶...?ダンジョンでもごく稀にしかなく、商人ならから手が出るほどしがる希品。それを持ってるとなると、余程の金持ちか、実力者ということに......
「はい、これです」
 そうして取り出したのはのように赤く、禍々しい紋章が描かれていた手のひらサイズの寶石。
「こ、これは...!?」
 間違いない。ダンジョンの最下層にあると言われる〝核結晶〟だ。まだあのダンジョンのものとは分からないが、でも確実にどこかのダンジョンのもので間違いない。
「信じてくれましたか?んでそれと...」
 まだ要件は終わっていないのか、どういう訳か佐野さんのポケットに手を突っ込んだ。
「はい、これで祐が本だということが証明されますよね?」
 そこから取り出した冒険者カードを渡してくる。そこには確かに「佐野 祐」という名前が記述してあった。
 システィは口をあんぐりと開けて、信じられないと言うように驚愕している。
 そして、何も発さずに靜かに祐へカードを返す。
 とにかく落ち著いて..ここで焦る私じゃ無いわ。まずは現実をよく見るの。そして
冷靜さを忘れずに、まずはやるべき事をやるのよ。
「すー....はー.........職員のみなさぁぁぁん!仕事すとぉぉぉぉっぷぅ!」
この日1番の大きな聲がギルド中に響き渡った。
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