《お姫様は自由気ままに過ごしたい ~理想的な異世界ライフを送るための能力活用法~》第二十七話『さて、部屋を作ろうか』
さてさて、これから部屋を作ろうとするザブリェットはポチが運んできた木材に手をかけた。
「うむ、どんな部屋にしようかな?」
そう言いながらザブリェットは妄想を膨らます。部屋を作るというのは、単に汚れ切った場所を新しくり直したり、作り直したりするのではなく、の子らしい自分の部屋として完させたいザブリェット。要はリフォームである。
々とトラブルはあったものの、材料は割と揃っている狀況だが、殘念なことに裝が全く決まっていなかった。どんな機能がしいか、そんなことばかり考えていたザブリェットはいざ作る場面に直撃して頭を悩ませるハメになる。よく工業系の奴らが建築系に対して「あいつら、デザインばっかこだわって、無駄に高い金を払わそうとしているんだぜ」と言っていたりするが、今ならよくわかる。デザイン大事。多分男の子なら機能で十分かもしれないけど、の子ならもっと可く綺麗な部屋がいいと思ってしまう。
だけど、ちょっと男の子っぽい思考があるザブリェットにはそこが抜けていて、今悩む羽目になる。よくやることだ。
「とりあえず、機能的なところは魔法でどうにかしようと思っているし、後でいいかな。この部屋全をどうにかして、窓際にベッドを設置。後はどんな家を作ろうかな~」
妄想を更に膨らませてきが止まるザブリェット。それを見ながら必死こいて牢屋の中でなんかしている一號と二號。
ちょと目がイっており、かなり危ない狀態。まさに薬中のようだ。
「お、お姉さま。そろそろ……」
「ご主人様ぁぁ……」
「ふぇ?」
「「一いつまでこんなことをやっていればいいんですかぁぁぁっぁ!」」
ふたりがそういうのも當然だろう。なんたってただスクワットをしているだけなのだから。
ザブリェットの妄想タイム中に部屋の整理が終了。ベッドも外に運んで空っぽの部屋にした。そして軽く掃除したあと、作業ができるように場を整える。
それでもザブリェットの妄想タイムは終わらない。他にやることありますかと聞いて出てきた言葉がーー
「じゃあスクワットでもやってれば」
ーーだった。
一何故とは聞かない。ザブリェットの命令なのだ。この二人が従わないわけがない。だけど無駄にスクワットをさせられていればだんだん飽きてくる。そろそろ次の命令がしい。そう思って聞いたんだけど、どうやらザブリェットはふたりのことを忘れていたようだ。
「あーーそういえばスクワットさせてたんだっけ?」
「「そうですよ」」
「そんじゃ次は部屋の外で腕立て……いや、リバース・プッシュアップでもやってもらおうかしら?」
「「はい……っえ、何ですかそれは」」
「えっと、椅子を二つ使って上腕三頭筋を鍛える方法だとかなんとか。二つの椅子をちょっと離して向かい合わせ、その上に仰向けで乗るの。寢るようにしてじゃなくて、片方に足を乗せるように、もう片方の椅子は腕をを支えるように乗るの。んでもって、を上げ下げして腕を鍛えるのよ」
「「へ、へぇ~」」
「ムッキムキになれるよ!」
ザブリェットはこれまでに見せたことないような満面の笑みを浮かべてそう言った。
その顔を見てドキッとする二人。だけどムキムキになった自分たちの姿を思い浮かべてゾッとする。
「えっと……ほんとにやらなきゃダメですか?」
「僕たち……ムキムキに?」
「うん、ムッキムキになれるよ? やっちゃいなよ!」
「「えっと……」」
「やっちゃいなよ……いや、やるべきだ!」
「「頑張らせていただきますぅぅぅぅぅぅぅ」」
ザブリェットがあまりにも強く押してくるので、心が折れてしまった二人は走ってどこかに行ってしまう。きっと目に涙を浮かべていたのは気のせいだろう。
そう納得したザブリェットは、ムキムキになった一號と二號を思い浮かべて、クスッと笑った。
「ふふふ、ムキムキになった二人とお茶するのも楽しみだよね。あんまり変わらないかもしれないけどさ。でもその前に、お部屋を整えないと。お茶會が開催できないからね!」
そうと決まれば作業開始と意気込ザブリェットは木材に手をれて、能力を使う。もちろん使う能力は當然あれを使う。
「『創造クリエイト』っと」
ザブリェットの手元から木材が消えて、壁が木で出來た綺麗な壁と床になる。そして、汚い石がザブリェットの近くに転がった。ちゃんと持ち運びしやすいように小さくなっているのはあとでこれを運ぶ二人のことを思ってのことだろう。
さて、ザブリェットが一何をしたかと『創造クリエイト』を使って、壁や床の材質を換したのだ。
『創造クリエイト』の能力は材料をもとに別のものを作ること。原子レベルで分解して、構造を作り直し、新しいに作り替える。それをちょっと応用しただけだ。
壁などに使用されている石と木材に能力をかけて、れ替えたのだ。本當なら壊してから再設計、作り直しをしなければならない。そもそもこの城は石づくりなのだ。一部だけ木材に変えるなど不可能なのである。
いや、別に不可能ではないかもしれないが、強度と重量などが違う以上、同じ量をそのままれ替えただけでは、確実に壊れてしまう。本當ならそういうところを計算して作り直さなければいけないはずななのだが、ザブリェットは何も考えずに能力を使ったようだ。
今すぐに壊れるということはないだろうが、耐久力がなくなれば崩壊につながるだろう。
それを知らずにご機嫌なじのザブリェット。次は何を作ろうかと考えている時に、視界にメッセージが流れた。
『何も考えずに能力を使っちゃってる君に安心のプレゼントを。ぺちょ様お笑い隊一番隊隊長の天使ちゃんより』
「……なんだこれ。それよりペちょって誰よ。まあいいや。ほうっておこう……」
どうやらぺちょのことを忘れてしまったらしい。いや、神様ってことは覚えているようだが、名前をつけたことを忘れてしまったので、まぁ仕方ないと言えよう。いや、言えるかもしれない。
名も無き天使様のおかげで強度を気にする必要はないようだ。
まぁ、ザブリェットもあまり気にしていないようだが……。
「さーて、後は家を作って、終わりだ。『創造クリエイト』はイメージが強く反映されるから……なんかいい能力ないかな」
どこからともなく能力ガイドを取り出して、パラパラとめくるザブリェット。前世の時もそうだったが、あまりデザインセンスがないのだ。機能を追求したものなら簡単にイメージできたりするのだが、可らしいとかかっこいいとか、そういう見た目的なことをあまり気にしないものづくりをしていたので、咄嗟に出てこない。
だから、便利そうな能力を探したのだが、これまたあっさり見つかった。
「まさか『蕓設計アートデザイン』なる能力があるとは……しかも容が微妙な件について」
能力ガイドには蕓的な設計を頭の中に表示してくれるお手軽能力と書いてあった。ほんとそれだけしかできない、何の役にたつのかわからない能力だ。
しかも脳に負荷がかかって、頭が痛くなるおまけ付き。
やっぱり、天使の祝福は頭がおかしいものばっかりだ。
「ま、とりあえず使ってみよう、ていや…………だぁぁああああぁぁぁぁ、頭がぁぁっぁぁああ」
割れるような痛みに額から汗が流れる。頭を押さえ、綺麗になった何もない部屋に転がった。そして脳裏に浮かんできた數々のデザイン。かなりかっこいいものだったらしく、痛がりながらもとても笑顔だ。傍から見たらドMにしか見えないが。
「ふう、いい能力だったかもしれない。早速作って設置……の前に絨毯も敷いておこう」
ザブリェットは可らしいデフォルメくまさんが描かれている絨毯を取り出した。當然、布の世界の戦利品である。
とりあえず、使えるものは使っておくスタイルなザブリェットは綺麗に敷いて満足げに頷いた。
そして『創造クリエイト』で家を作って『瞬間移テレポート』を家に対して使えばーー
「できたぁぁぁぁああああぁぁぁぁぁ」
ザブリェットが聲をあげるほどのお部屋が完するのである。
ザブリェットは部屋を見渡して、うんうんと満足げに頷いた。
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