と思ったら、全然違いました。

者は、顔がぐちゃぐちゃな死に寄り添って、何やら聲をかけている。

ん～、この様子だと、死のことをまだ生きているって思っているっぽいな。

だって、この男はーー

「＊＊＊ッ！　俺が、俺が絶対に助けてやるからな。もうちょっとだけ辛抱しろ。傷が痛むかもしれないが、きっと助かるさ。いや、俺が助ける」

ほら、なんか生きてる風に聲をかけている。

にしても久しぶりだな、名前が聞こえないの。

あれ、もしかしてあの時の騎士？　いや、まっさか～。

あいつ、人なんていなかったし、男から避けられていたし。

腹筋の割れた騎士なんてゴメンだってじに……。実にかわいそうなことを思い出してしまった。

それは右斜め上ぐらいに置いておいて、この狀況、どうしようか？

別にもう放っておいてもいいかなって思ってきた。

だって、脅威は取り除いたわけだし、気絶しているならまだしも、目を覚ましたんだから、あとは自分たちでどうにかできるでしょう。

仮にも勇者軍にいた人たちなんだから、それぐらいできる……よね？

「アンリ、先を急ごうか」

「……こいつ、小雪お姉ちゃんに助けてもらったのにお禮の一つも言わず、死なんかといちゃこらして。どうやって捌いてやりましょうか。くふ、くふふふふふ。私の包丁はスパッと切れますよ」

うぉ！　アンリがヤンデレ化してた。

確かに、こっちが助けてあげたんだからお禮の一言ぐらいあってもいいと思う。

でも、絶対に言ってしいのかと聞かれたら、別にどっちでもいいって答えるかもしれない。

それに、いま目が覚めたばかりだ、正しく狀況を理解しきれていないんだろう。

そりゃ混してお禮も忘れるわな。

「アンリ、お禮を言わなかったぐらいで怒らないの。私は気にしていないんだから」

「うう、小雪お姉ちゃんが言うなら、包丁一刺しで諦めます」

「それ、死ぬ可能があるから、絶対にしないでね」

「…………」

「返事してよ！　怖いよっ！　お願いアンリ！　刺さないでぇ！」

アンリは小さく頷いてくれた。表的には、まだ納得していないところもあるんだろう。

ほっぺをプク～っと膨らましている姿は、なんとも可らしい。

まあ、刺す刺さないの話じゃなければもっと可らしいと思えたんだけど！

「ささ、あともうちょっとで目的地のニートリッヒだ。ここいらにはゾンビが沢山出るらしいし、早く霧の中の様子を見に行こう」

「はいっ！　一刺ししてから行きますね」

「早くその話題から離れてーーっ！」

いきなりじた嫌な気配に、つい構えてしまった。

間近でじられた、突然膨れ上がる魔力の反応。これは……あの顔がぐちゃぐちゃの死からだ。

膨大な魔力が死に周りを渦巻き、次第に死を変させていく。

まだギリギリでだった死のは、腐ったような汚らしいに変した。

顔がぐちゃぐちゃなはずなのに、微かに聞こえるうめき聲。

死の、ゾンビ化が始まった。

あれか、ニートリッヒを取り囲む霧が魔力でも含んでいるってじなのかな？

たしか、ゾンビのつくり方は、魔力が濃い場所に死を放置するか、ゾンビ化するまで死に魔力を注ぐんだったっけ。

そういえば、たまにゾンビに食われて死んでしまった勇者軍の人がいたっけ。

死んだことに気がつかず、回復魔法をかけ続けたら、ゾンビを作ってしまい、そのままバクリ！　みたいなじ。

うわぁ、考えただけで怖い。

昔買った、『正しいゾンビのつくり方』って本があったような……。あれ、まだ持ってるかな？

あとで勉強しておこう。覚えてたらね！

とりま、やるべきことは顔がぐちゃぐちゃの死を処理する事、これに盡きる。

「痛むのか、大丈夫だ！　俺が連れて行ってやるからな」

者ーーこいつも勇者軍の兵士で、死の人だろうーーは、ゾンビ化の影響でピクピクしている死が、痛がっているってじたらしい。

マジで邪魔……と思った瞬間、者が吹き飛んだ。

何事！　っと思ったら、アンリが爽やかな笑顔で水魔法を使ったっぽい。

水弾でもけたのか、痛がっている者のはビチョビチョだ。

「小雪お姉ちゃん、退どけたよ！」

「ん、ありがとうね。アンリ」

「はい！」

私の手伝いができたのがそんなに嬉しい……いや、違うな。

嬉しそうな顔をしながら、私に向かって頭を押し付けてくる。

こりゃあれか、でろってか。

……やらなきゃ刺される気がする。

「はぁ、仕方ないわね」

「っ！　う、嬉しいです！」

頭を適當にでてやったら、本當に嬉しそうに微笑んだ。うん、それがふつうのの子の反応だよ。

包丁を振り回すだとか、敵だから殺しましょうって思考の方が異常だ。

アンリにはいつまでもこのままでいてほしい。お願いだから、これ以上ヤンデレ化しないでね。

なんて、イチャコラしていたら、顔ぐちゃゾンビさんが生まれてしまったようで、ゾンビは起き上がった瞬間に私たちに向かって牙をむいてきた。

顔ぐちゃぐちゃだから、牙なんてねぇけどな！

「そ～らよっと」

「あーどっこいしょっ！」

私は、適當に裏拳をお見舞いしてやると、顔ぐちゃゾンビの頭が消し飛んだ。

いや、どこかに飛んでいったみたいになるかなって思ったけど、人の頭って簡単に消し飛ぶのね。

「って、アンリ！　何今の掛け聲！」

「え、気合がるかと思いまして、ダメでしたか？」

「なんかダメな気がする。こう、ソーラン、ソーラン言っちゃう曲がリピートされそうだから、ダメ、言っちゃダメ」

「しょぼーん」

「そのネタをどこで知った！」

ちなみに私は全く知りません……。悲しいかな、ちらりと見たことがあるだけで、しっかり読んだことがない。

っく、地球でのやり殘しを思い出しちまったぜ！

そんなこんなで、アンリと遊んでいると、どこからともなくび聲が聞こえてきた。

もちろん、愚かな者の聲である。

「ああああああああ、＊＊＊ッ！　なんで、なんでぇぇぇぇぇぇ」

「錯してるみたいだね。こういう時は……放っておいてあげた方がいいのかな？　心の傷を癒す的な意味で」

「私もそう思いますよ、小雪お姉ちゃん。ささ、ニートリッヒに行きましょう！」

アンリがそう言ってくれたので、者を無視して、くるりと反転。ニートリッヒを目指して歩き出す。

……者はすごく絶したじになったけど、アンリはこれで満足したのだろうか。

々と気になってきた私は、つい、口に出してしまった。

「…………刺さないの？」

蒸し返しちゃいけないだろうと思っているけど、気になって仕方がない。だって怖いじゃん。気がついたら殺ってました的な狀況になったらさ。

「はい！　ゾンビが死んで、絶した表を見せてくれたので、満足です。これ以上小雪お姉ちゃんに迷をかけるようでしたら、殺しますが」

「大丈夫、まだ何もされていないから、ね、さりげなく取り出した包丁をしまお……ちょ、ま！　しまってね、早くしま…………っえ？　ぐふう……なんで？」

強烈な痛みと不自然な、私は違和のじた、自分自のお腹あたりに視線を向けると、飛び出していたのは、銀に輝く洋風の両刃剣。どうやら私は刺されてしまったようだ。

そんなフラグ、立てたつもりないんだけどな。

「おまえっ……がぁ！　殺したんだろぉ、汚勇者ああああああああああああああ」

狂った男は、私のお腹から剣を引き抜き、を払う。そして、走った目でこちらを睨んできた。

なんでいつもこんな役割なんですかね。

あれですか？　たまたま厄年だった的な……。

まあ、あれぐらいじゃ死なないから、ある意味でこのには謝しないといけない。

平気で一人壁特攻なることができる殘念なだけど、な！

「小雪お姉ちゃんっ！」

「大丈夫、問題ないよ。それよりアンリの方は大丈夫なの？」

「は、はい。私は平気です。でも、小雪お姉ちゃんが！」

「ははは、大丈夫だ、問題ない！」

をって確認したから確実だ。痛みももう引いた。萬全の制ってね。

「クソ、クソ、クッソォォォォォ。なんで、なんで死なねぇんだよ、クソ汚野郎。あいつは、＊＊＊はッ！　まだ助かる可能があったかもしれないのによ。なんで、なんで殺したんだよおおおおおおお」

それはゾンビだからです。當たり前でしょうに。