《私、いらない子ですか。だったら死んでもいいですか。》第二十八話~異常な景3~
「これ、一どういうこと?」
私の目の前で消えたウェイトレス。しかも、転んでテーブルのシミになったという訳のわからない現象に、かなり戸った。
というか、戸いすぎて、料理を放り投げてしまった。
「あ、やべ……」
時既に遅し、せっかくキャッチした料理を床にぶちまけて……。
ベチャァ
料理は地面のシミになった。全く意味がわからない。
アンリも不思議に思っているのか、唸り聲をあげながら、シミを凝視していた。
なんかこう、この現象に心辺があるような、ないような。
でも、この世界のことじゃない。多分別の世界で見たことだろう。
ああ、死ねないって言っても、人間だから、時間が経つと忘れるんだよね。
人間なんてある程度の記憶しか持てない。
だって、死ぬじゃん。無限に記憶できる必要ないしね。記憶できて々140年ぐらいだって聞いたことがある。
だけど、死ねなくなった人間は違う。自分の容量を無視した記憶が詰め込まれる羽目になり、最終的に狂いだす。私も似たようなじかもしれないね。
そのおかげで狂って暴走して、世界を壊しまくったんだけど。まあ、原因はそれだけじゃないんだけどさ。
でもそのおかげか、勝手にいろいろ忘れるようになった気がする。まるでボケてきたみたいだってじるから、ちょっとだけショックなんだけど……。
まあそんなわけで、うっすらと覚えている様な気がするけど、はっきりと思い出せない。もしかしたら、霧に関連する事かも知れないのに……。こういうときぐらい覚えておこうぜって思っちゃう。
それから、アンリと話しながら今の現象について考えていると、店の奧からウェイトレスがやってきた。
「「…………はぁ?」」
やってきたのは、まさかのドSウェイトレスだった。
いや待って、君はさっき、テーブルのシミになったよね!
そう思って、テーブルを確認するとーー。
「「……消えてる」」
テーブルのシミは綺麗になくなっていた。まるで夢でも見ている様な不思議な覚だ。
アンリも、目の前のことが信じられず、何度も目をってはテーブルを確認していた。
ちょっとだけ肩が震えている。怖いのかな? ちょっと可いな。
なんて思っていると。
「お待たせしまし、ぐべらばらららら」
奇聲を上げて、ウェイトレスが盛大に転んだ。宙に浮く料理。倒れたじから、大丈夫だろうと思い、私は料理をキャッチする。
そしてウェイトレスは、ベチャーっと嫌な音を立ててテーブルのシミになった。
「ねえアンリ。これ見てくれる」
「ど、どうしました、小雪お姉ちゃん。もしかして何か気がついたんですか?」
「うん、ちょっときになることがあってね」
そう言って、私は料理をテーブルの上に落とした。そして、グチャっと音を立てて、テーブルのシミになる。
「これは一どういうことでしょか?」
「うーん、そこまではわからない。多分、滅んだはずの場所が健在な理由に関連していると思うんだ。この町に來た時に、奇聲を上げて滅んだ人がいたよね」
「はい、確かにいましたが、誰も何も気にしていませんでしたね」
「もしかしたら、あの人も今そこで普通に歩いている可能ある」
「そ、そんなことがありえるんでしょうか?」
うーん、どうなんだろうな。ありえるかどうかで言ったら、この町自がありえないものなんだけど……。何か引っかかるな。
私はシミを見つめながら考え続けると、シミがうっすらとしてきて、綺麗さっぱりなくなった。
思ったより早くなくなったな。じゃあちょと実験してみよう。
一回目と二回目は料理をキャッチしたからウェイトレスがシミになった。
だったら次は……転んだウェイトレスをキャッチすれば何か変わるんじゃないのかな。
なんだろう、理科の実験を行う前のような、ワクワクした気分になる。
ふふ、どうなるかな。
ちょっと待つと、同じウェイトレスが料理を持ってやってきた。そしてーー。
「お待たせし、どぐれべらばばばばばば」
料理を放り投げて盛大に転んだ。
今度は料理に目もくれず、ウェイトレスを支えてあげる。
すると、周りから、ガシャーンという、嫌な音が聞こえた。
「アンリ、料理はどうなった?」
「地面のシミになっていません。普通に落ちています!」
このウェイトレスに関連しているだから、ウェイトレスがシミになった狀態で放り投げればシミになるわけか。
なるほどねぇ。なんとなくわかってきた気がする。
にしても、早く料理食べたいな……。マジでお腹すいた。
「も、申し訳ありませんお客さ、がはぁ」
ウェイトレスは、何故か何もないところで後ろに倒れて地面のシミになった。解せぬ。
まあでも、どうせまたやってくるんだろうけどな。
そんなことを思いながら、私とアンリは思いつくパターンを実行して、現在置かれている狀況について調べていった。
◇ ◆ ◇ ◆
「お待たせしまし、どりゃあああああああああ」
またしてもウェイトレスは料理を放り投げて盛大に転んだ。でも、私もアンリは何もしない。する必要もない。
ウェイトレスと料理は地面のシミになり、ちょっと待つと、同じウェイトレスがやってくる。
何もせず、じっと待つ事56回。今もなお、ウェイトレスがテーブルのシミになりまくっている。このウェイトレスは學習しないな。だんだん近づいてるんだけど、あとちょっとのところで転んでシミになる。
だけど、この現象について、おおよその検討が付いた。
ウェイトレスを使ったおもしろ実験をしていれば、誰だって気が付くさ。
今、私たちがいる場所は、ゲームに似ているかもしれない。
ようはあらかじめ決められている事しかできないのだ。ゲームで村人に話しかけた時、同じ會話をするのと同じで、この町の人たちは決まった行を繰り返しているんだと思う。
言ってしまえば、何らかの要因により、滅ぶ前のニートリッヒを再現しているんだ。
まだ憶測の域だけどね。でも、これで発狂したの原因と、繰り返し現れるウェイトレスがシミになったことは説明がつくよ。
何かしらの要因で作られている町だから、イレギュラーが起これば綻びが生じる。
ゲームで例えるならバグだね。
今回の場合は、私たちっていうイレギュラーが町の中にった事によって、一部の住人に異変が起こり、存在が保てなくなって消えた。そんなところだろう。でも、何らかの要因までが消えたわけじゃないから、再び同じ人が會わられる。多分こんなところだろう。
「お待たせしました。さっさと食べて帰ってくださいね。この駄犬が」
「やっと來たよ~」
「そうですね。早く食べましょう!」
「……私、ドSに向いてないのかしら」
しょんぼりと肩を落としながら、ウェイトレスは店の奧に戻っていった。
うむ、この町は學習しているね。何回も私たちに接して、何回も存在を壊しながらも、ちょっとずつ行が変化している。
おそらく、何かしらの要因は綻びを生じても、それを修正してしまおうとする力が働いているのかな。
  
だけど、イレギュラーに対する対策がすぐにできる訳なかった。。だから、何度も接して、學習し、綻びをしずつ修正しているんだ。
そして、ようやく修正が終わった今、私たちの前に食事がある。
でもこれ…………食べらるのかな?
「はぐ、もぐもぐ、小雪お姉ちゃん。これ味しいですよ」
「え、さっきまでシミになってたやつだよ? ちょっとは警戒してよ」
「でも……ご飯は冷めるとまずいのです」
「それはごもっとも。しゃあない。覚悟決めるか」
スプーンを持ち、目の前に置かれたオムライスにさした。
ふんわりとろとろの玉子は、まるで雲のようになめらかにスプーンを飲み込んでいく。
スプーンをすくうと、真っ赤に染まったチキンライスの上にふわとろ玉子が乗ったオムライスから、食をそそるいい香りが漂ってきた。
ゴクリ、なにこれすごく味しそう。
ドキドキしながらオムライスを口に含むと……私のが発した。
「なにこれめちゃくちゃ味しい。こんなオムライス食べたことないよ! 玉子は本當にふわっふわだし、チキンライスもケチャップの酸味が、他の材にマッチして、更に旨みがましている気がする。しかも、中にった材は、いろいろあるけど、まるで歯車があったみたいに、互を尊重し合った優しい味わいになっている。やば……止まらねぇ」
このあと、むちゃくちゃオムライスを食べた。私がオムライスに夢中になっている時、アンリがハイライトのない怖い目でじっと私を見つめていたが……オムライスには勝てなかったよ。
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