《私、いらない子ですか。だったら死んでもいいですか。》第四十二話~嘆きの亡霊3~
暗く、暗く、ひたすらに暗い。闇の中を進んでいくと、奧のほうからかすかなが見えてきた。そのに向かって、私はただひたすらに走り出す。そして、の抜けると……突然魔に襲われた。
ちょ、ま、えぇ!
私はとっさに反撃しようとしたが、をうまくかせない。というか、勝手にがいた……。
え、これ何? というかここ、王都周辺の森だよね。なんでここにいるの。頭が回るクルクル回る。はっきり言って、今の現狀が全然わかんねぇ。
考えろー考えろー。なんて馬鹿なことを考えていると、隣から聲をかけられた。
「さすがね、リグレット」
「はは、このぐらいは大したことないさ」
「そんなこと言っちゃって。このあたりで魔狼の群れを一人で倒せるのはあなたぐらいよ?」
「そんなに褒めるなよ、ヘレン。魔狼を倒せたところで、魔族の侵略が止まるわけじゃない。平和に暮らせる未來を創るためには、もっと頑張らないとな」
ん? リグレット? てか、私から男の聲が……はっ!
なるほど、そういうことか。ゾンビリグレットがかけた神系の魔法。それは己の過去を見せるような魔法なのかな?
それにしても、リグレットよ。かなり立派な男じゃないか。ヘレンっていう彼がいなかったら惚れてたかも。まあ、6兆歳オーバーな私を好きになるやつなんていないと思うけどね。
…………アンリは、きっと特別なを持っているのよ。そうに違いない。
「それで、リグレットはあれに応募するの?」
「ああ、もちろんさ。俺にできることなんて戦うことぐらいだ。なら、もって生まれた力を人の役に立てたい。そう思うのが普通だろ?」
「相変わらずかっこいいこと言うのね」
そう言って、ヘレンは頬を赤らめながら近づいてくる。
っく、イチャコラしやがって此畜生。
そんな嫉妬心はさておいて、あれって何だろう。なんかあったっけ?
うーん、思いつくことといえば、勇者召喚についてぐらいか?
勇者のお供は、國が募集をかけて立候補した冒険者と國お抱えの騎士達だった。
リグレットとヘレンは応募に応じた冒険者だったんだろうか。
話の流れ的にそうなんだろうなー。
そして、私のは勝手にいて……、気が付いたら謁見の間にいた。
突然いろいろと飛んだなっ! なんか時間が流れていったというか、シミュレーションゲームのスキップ機能を使われた気分だよっ!
そして、私の知らない景が目に映ったので、なんかどんよりした気分になってきた。
そういえば、勇者にはそれぞれお供があてがわれたけど、私は呼ばれなかったんだよなー。
こういうのがあったとか、どんな人がお供になったっていう報は、必死に調べ上げた果だったりする。
私って、どんだけ嫌われているんだろう。ほんと、いらない子だったんだなー。
ボッチよろしく殘念な気分になっていると、リグレットとヘレンの名が呼ばれた。そして、屑勇者の元に案される。
私の視點がリグレットの視點と同じだから、どんな表をしているわからないけど、なんとなく予想ができる。
これから勇者と共に、世界のために戦うことを選んだ男だ。先の未來に希を抱いていたに違いない。
そして、案された先に向かっていくと、あの屑どもがいた。だらしないじが実に腹正しい。こっちはまじめに世界のために戦おうと決意しているのに、その態度は何なの?
ちょっとしばきたいわー。
「俺の名はリグレットといいます。冒険者をやっていました。平和のために、勇者様方に盡くす所存。どうかよろしくお願いします」
「え、えっと、ヘレンって言います。よろしく」
リグレットさんまじめかっ! 見たところ大した奴らじゃなさそうだぞ。まあ、あの屑っぷりを見た後だからさらにひどくじるんだけどさ。
あとヘレン嬢はかわいいね! その初めて重要な仕事をまかされた新人社員みたいで初々しい。社會人経験ないけど……。
「あー、ひとりは男か……はずれだな」
「でもこっちはかわいいぞ。へへ、いいゲットだぜ」
ねっとりとした視線。激しく気持ち悪いこの勇者どもは、いったい何を考えてそんなことを口走っているのだろうか。
「あーあー、せっかくのゲーム的展開なのにさー。男なんていらねぇよ」
「そういうなって。これからハーレムでも目指せばいいだろ。なんたって、俺たちは勇者だぜ」
「はは、確かに。これだけ強い力を持っていればなんだってできるさ」
屑はしょっぱなから力に溺れて、どうしようもない考えしかできなくなっているみたいだ。
まあ、突然與えられた権力とか力とかで腐っているような人間は、もともとダメな人間なんだろうけどさ。私は常々そう思うよ。
もしくは、心が弱い人間か…………だな。
なんやかんやでクズ過ぎる勇者どもとの初めての出會いシーンは終了。さて、これからどうなるか……。ろくな未來が見えねぇな。
そんなことを思っていると、突然視界がブラックアウトして、景が移り変わる。
気が付けば、時間は夜になっていた。ただ、魔法の影響なのか覚的に勇者とあった日の夜だということはわかった。
私は暗く不気味な廊下を焦りをじながら進んでいた。
この焦りは私の気持ちではなく、リグレットのもの。
そういえば、ヘレン嬢の姿が見えない。
今までのシーンでは二人一緒にいるのが當たり前だったのに。これは……。あの屑どもが何かやらかしたのか。
廊下を進んだ先に見えてきたのは、とある部屋の扉。
私はその扉を知っている。勇者として召喚されたものたちは、お城の一室を貸し與えられる。
見えてきたのは貸し與えられた部屋の扉だ。
その部屋の奧から聞こえてきたものは……。
「いや、やだ、やめぇ、いやぁぁぁああぁぁぁああああ」
「っち、抵抗すんじゃねぇよ、殺すぞ」
「勇者に抵抗するなんてバッカじゃねぇの」
ぶヘレンの聲と屑な勇者の下品な聲だった。
おそらくリグレットがとった行だろう。私のは聲を聞くと同時に、扉をけり破った。
「ヘレンっ!」
扉の奧には天蓋付きのベッド。その上にはらしいラインの人影と、それを押さえつける男と覆いかぶさる男の影。
この景はさすがに殺意を湧いた。同じ人間だと思いたくない所業。力を持ったからと言って許してはいけない。
魔法をかけられる前に、リグレットが言っていたことがちょっとだけわかった。
リグレットに気が付いたのか、ベッドの上から、勇者というのも汚らわしい屑が出てきた。
「っち、なんでってくるんだよ」
「勇者様は……いったい何を」
「あぁ、うんなもん決まってんだろ。與えられたおもちゃを使って遊んでるんだよ。邪魔すんな。しょせんNPCみたいなもんだろ、お前ら。だったら言うことを聞いておけよ」
「そ、そんなことが許されるかぁぁぁぁぁぁぁ」
リグレットはそのまま勇者に襲い掛かった。腰に掛けた剣を抜いて、殺意を持って。だけど、勇者は、勇者と呼べるほどの力を持っていた。私ほどじゃないにしても、この世界の人々から見たら驚異的な力を。
それにより、リグレットは地面に押さえつけられる。世にも珍しい重力魔法だった。
押さえつけられてけないリグレットに勇者の一人は蹴りをれてきた。
息ができないほど衝撃に胃のものが出てきそうになり、無意識に抑えそうになったが重力魔法がそれをけれてくれなかった。
リグレットはそのまま吐いて、汚にまみれた狀態になる。
それを見た勇者の一人がゲラゲラと笑い天蓋につけられたカーテンを開けた、
そこにいたのは、顔をくしゃくしゃにして泣いているヘレンと、それを痛めつけながら楽しそうに犯すもう一人の勇者。
「へ、ヘレン……」
「リグレット、いや…………っ、なんで……」
ヘレンはリグレットに気が付くと、急いで駆け寄ろうとする。だけど、勇者に髪を引っ張られて引き戻されてしまった。
「オラ、暴れんなっ! いや、いいこと思いついた。こいつら元から知り合いだったんだろ?」
「あははは、お前は相変わらずゲスいな。そういうとこ好きだわー」
「やめろって、男に好きだとか言われてうれしくないしキモイわっ!」
「という訳だ、楽しく遊ぼうぜぇ」
「助けて、助けてよ、リグーーーーやああああああああああああああああ」
「「きゃはははははははは」」
「うぐぅ………くっそぉぉぉおおぉぉぉぉおぉぉ」
私はリグレットの視界を通しているだけなので、ヘレンを救うことができない。力を持っているのに何もできない苦しさにが張り裂けそうになった。
こんなの……………勇者じゃない。
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