ハイネは風を司る霊だ。

霊使いに力を人目につかせないことを第一としている康太とは相のいい力だ。

ハイネのる風は目で捉えることのできない。

自然現象の風となんら変わりのない魔を繰り出すことができるのが特徴だ。

「ハイネ、3同時に倒せるっスか？」

(ああ、可能じゃ。その代わり発の衝撃も3倍じゃからな。間違っても妾を離すでないぞ)

「あいよ！」

銃口付近に風の塊が３つ現れる。

無明なそれは魔力を探知できる人間でなければ、認識することすら出來ない。

そして康太はカウントを始める。

「3」

風の塊はそれぞれ高速で回転をしだす。

「2」

三つの塊も銃口を軸に回転しだした。

「1」

その風の塊が極端に小さくなる。

「発(ファイア)」

聲と同時に3つに弾丸が放たれた。

発の衝撃で前に構えていた銃が頭の後ろまで飛ばされる。

康太は腕に痺れをじながらも、それでも銃は離さない。

銃の発砲音はなくトリガーをカチリと引いただけであるが、豪風の音でそれもかき消された。

3つの弾丸はそれぞれ別のトロールの頭、右腕、右足を撃ち抜いた。

外から観察しても何が起こっているのかを把握することが難しい。

しかし、トロールのでは風が蔵や筋を切り裂き、それぞれのトロールの核を完なきまでに切り刻んだ。

トロールはもはやくことのない人形とり果てた。

タイミングよく隙ができたと考えた埜々が魔法を放ち、それぞれのトロールののあたりを貫いたのが見えて、自分達の銃撃がバレていないことに康太は安堵した。

3は時間差で地響きを立てながら仰向けに倒れこんだ。

「ふう、無事終わりっスかね。流石っスねハイネ」

(當たり前じゃ。それより康太ー妾疲れてお腹減ったのじゃー)

「相変わらず燃費も悪いっスね。あとで購買で何か買ってあげるっスよ」

(本當か！？妾おにぎり食べたい！)

すっかり張の糸が切れた康太とハイネがたわいのない會話をしているとリーシャが何かに気がついた。

(康太様！後ろです！)

リーシャの呼び聲で康太は咄嗟に振り返る。

「見ぃつけた」

屋上の扉のり口の上に1人のが立っていた。

は金髪の髪をポニーテールに纏めていて黒いパーカーを著ている。

「やばい、見られた」と心焦る康太。

背中から嫌な汗が流れ出し、なんと話しかけようか頭の中で整理しているとリーシャが話しかけて來た。

(康太様、あの人間から魔力をじません。まるであの時の)

康太はそこでハッとする。

リーシャのいうあの時とはセントラルタワーで戦った時のことだ。

ヴォイドと名乗る金髪の男も確か魔力を全くじなかった。

つまりは普通の人間ではないのは明白だ。

するとの方から話しかけて來た。

「君が江康太君か。炎の霊って聞いてたけど、どう見ても風の霊じゃん」

康太とリーシャはそれで確信した。

こいつはヴォイド名乗る仲間であると。

狀況が読めていないハイネは康太に尋ねる。

(何じゃ、知り合いか？妾達を知ってるようじゃが)

「いんや、初対面っスよ。ただ、あの人の狙いはリーシャとハイネって事はわかったっス」

康太の頬から一筋の汗が落ちる。

まさかこんな人目につきやすい晝間の學校で狙われるなんて思ってもみなかったからだ。

校舎の屋上とはいえ、こんなところで戦ったら、誰かしらに気がつかれる。

逃げるにしても屋上のり口は金髪のに塞がれている。

殘すは屋上から飛び降りて、ハイネの力で著地するという考えが康太の頭に浮かんだが、それをしてしまうと魔を使えないはずの人間が魔を使えた事で々と面倒な事態は避けられない。

それにもし、このが追って來たら他の生徒や見學に來た人々を巻き込みかねない。

まさに萬事休すだ。

「まあとりあえず、邪魔がるとだるいからね」

は扉の上から著地し、地面を置く。

すると手のひらサイズの魔法陣が浮かび上がり屋上の一面に黃のが疾る。

そして、屋上を包み込むように大きくなってからが消えた。

「なんスか今の？」

(康太様！屋上に閉じ込められました！)

「え！？」

康太は辺りを見渡すが、先ほどとなんら変わりはないように見える。

しかし、霊であるリーシャが言うのだからその言葉に間違いはないのだろう。

試しにハイネの銃で屋上の外に向けて一発の風の弾丸を放つ。

屋上にある柵際まで弾丸がいった時だ。

その場で風に弾丸は霧散した。

「なるほど、そういう事っスか」

ハイネの風魔と同じように目に見えない魔力の壁で閉じ込められたらしい。

康太の冷や汗は更に増した。

そして目の前のは、微笑みながら康太に話しかけた。

「じゃあ、ちょっとお話ししましょうか」