《すばらしき竜生!》第8話 我慢
「………今まで周囲の魔達は村の男達で対処は出來ていました。ですが、そいつらは突然現れ子どもたちを攫って行きました」
今は村長の家にお邪魔して、事を説明してもらってる。この場に居るものは、ロード、シエラ、村長とその孫二人だ。
「見た目は豚人族オークなのですが強さが桁違いでして、村一番の若者も歯が立ちませんでした。更にありえない事は、そのオークは下っ端だと言うのです。 そして、奴らの條件は"村人全員の奴隷化"だと言うのです! 従わない場合は人質の子供たちを殺し、この村を潰す、と」
村長は機を叩きながら悔しそうに呟く。孫たちも顔に渋面を作って拳を震わせている。
「そんなに大変な事なのか? その………オークに奴隷として扱われるのは」「オークの奴隷になれば男は限界まで働かされて、使いものにならなくなったら食糧として殺されます! は死ぬまで苗床にされてしまうでしょう! 私はそんなこと許せません!」「それで助けを求めたと?」「私達のような老骨達だけなら最後まで戦って死にましょう。ですが……ですが、子供達のような若者には罪はありません。 どうか、どうかお助けください!」
村長は椅子から立ち上がり、ロード達に土下座をして懇願をする。その聲は必死そのものだった。 ロードは想像したより重い案件だった事に、どうしたものかとシエラを見る。
「聞いたじだと、そのオーク達の裏に間違いなく変異種ユニークが居るわね。そのせいで強いオークが居るのも頷けるわ」「おい、その変異種ユニークって何だ?」「稀に生まれてくる、普通とは比べにならない強さの個の事を変異種ユニークと呼ぶわ。本當に稀だから書に記される事もなくて知らない人も多いわね」
(その種族の上位種みたいな奴か……強いんだろうな)
ふと、この場に居る者の視線がロード自に釘付けになっていることに気がつく。シエラは呆れたような顔でため息をつき、村長と孫たちは驚愕、そして畏怖の視線を向けている。
「……んだよ、ジロジロ見んなよ恥ずかしい」「今、自分がどんな顔をしているのか分かってる?」
シエラはそう言いながら、自分で持っていたバッグから鏡を取り出し、それをロードに向ける。
―――そこには悪魔の様な笑顔を浮かべたロードが寫っていた。
「お? 俺って意外とハンサム?」「違うわアホ!」
シエラが摑みかかってくるが、ロードはさり気なく避ける。シエラが後ろで派手にすっ転ぶ音がしたが気にするロードではない。
「いちいちうるさいぞシエラ。場を和ませる冗談だろうが」「………じゃあその心からの笑顔は何よ。それに関してどういう説明してくれるのよ」「ほら………強い奴がいるって聞くと、楽しみじゃん?」「もういいわよ、好きにしなさいよ戦闘狂」
シエラはロードに関しては既に諦めたようだ。元々、シエラも手伝うのに否定はしてなかったので、為すがままになれという気持ちだった。
「じゃあ村長さん」「は、はい! なんでしょうか旅のお方」「條件は子供たちの救出と、出來たら・・・・オーク共の殲滅で良いんだよな?」
((((出來たらじゃない、完全に殺る気だ))))
ロード以外の全員の気持ちが、見事に一つになった瞬間であった。
「報酬は……そうだな、周囲の地図を書いてもらうって事で良いか?」「………え?」「なんだ、厳しいのか?」「い、いえ。決して厳しいわけではないのですが、それだけでよろしいのですか?」「え? だって金取るのも悪い気がするし、俺はここら辺の知識が全く無いから、地図無いと迷うって事で地図がしいんだよ」
村長はロードの優しさだと勝手に理解し、何度も謝の言葉を並べた。しかし、ロードは本気で地図がしかったので優しさなんて一切意識して無かったのだが。
そんな心溫まるような(他人から見れば)雰囲気は次の村長の孫の言葉によって崩壊する。
「でもよぉ、その人は本當に強いのか? 見た目はひょろひょろじゃねぇか」
―――ピシッ。
「これ! 折角助けてくれると言うのに、その言いぐさはなんじゃ!」「だってよぉ、兄さんもそう思うだろ?」「あぁ、そうだな。言っちゃ悪いが、その2人が失敗すると、俺達にも被害が出る。その責任で言うと頼りないじはするな」
―――ピキピキッ。
「もしかしたら俺達の方が強いんじゃねぇのか?」
―――ブチッ!
「――テメェら! こっちが靜かにしてれば好き勝手言いやがって! 死ぬか!? いっそオークに殺される前に死ぬか!?」「いやぁああああ!! 逃げて二人共! 私が止めてる間に逃げてぇ!」
ロードがキレて、シエラが羽い締めでロードを抑える。村長の孫たちはロードの豹変ぶりに腰を抜かしてけずにいる。 もし、この場にバルトやネイルが居たならば、沸點がウルトラスーパー低いロードは、よくぞ三回まで我慢出來たと褒められる事だろう。
「す、すすすいません、ロード殿! この2人はまだ自分の力量が分からぬ半端者でして、どうかお許しを!」
村長が次は違う意味で土下座をして、ロードもなんとか怒りを収める。 シエラは本気で羽い締めしていたのか、肩で息をしながら「生きてる、私はまだ生きてる!」としていた。
「はぁ、もういい。俺達は宿で休むから用事があったら來てくれ。だがお前ら………顔は覚えたぞ」「「―――ヒィイイ!」」
それはまさに、死神の言葉だった。 孫達はけない聲を出して、ロードに一生懸命謝った。
◆◇◆
話し合いはすぐに終わって村長に案された宿を使うことにした。その宿は決して豪華とは言えない作りだったが、掃除は行き屆いており居心地が良さそうな場所ではあった。
「いらっしゃい………って、あんたらかい。他の奴から聞いたよ、どうやら村の事を助けてくれるんだってね。それならお代はいらないからゆっくり休んでおくれ」「いいのか? 悪いな」「私達にとっては、手伝ってくれる気持ちだけで嬉しいのさ。遠慮しないでおくれ」
カウンターにいたおばさんは、気前が良さそうな人で、ロードは定食屋のおばさんみたいだなぁと思った。というよりも前世で行きつけだった定食屋のおばさんがこんなじに優しい人で懐かしい気分になる。 シエラは宿の中をキョロキョロ見ながら、近くにあった椅子に座ってくつろいでいる。
「部屋は二人部屋で」「あいよ、夕飯はすぐに食べるかい?」「あぁ、頼む」「じゃあそこの席で待ってておくれ」
おばさんに言われた通り二人で同じ席で待っていると、味しそうな匂いと共に料理が運ばれてきた。今日の獻立は料理らしく、手羽先のようなが大皿に乗って出てくる。
「おお、味いなこの手羽先」「………あ、これ巨大蛙ジャイアントトードのね。あんな気持ち悪い見た目なのに、こんなに味しいのは詐欺よね」「―――ブフォ! 蛙かよ!」
蛙とわかっていても味しかったので、結局二人で全てを食べてしまった。量も多かったので、腹が結構膨れたので十分満足の夕食になった。
(蛙……恐るべし)
夕飯を食べて満足した二人は案された部屋で食後の休憩をしながら、自己紹介という流れになっていた。
「ほら私って、あんたの名前も知らないじゃない? だから腹を割って互いに話し合おうって思ってね」「別にいいけどな。俺もお前の事知りたかったし」
ロードだって、別に正を隠したいわけでもないので、快くシエラの提案を承諾する。 だが、自己紹介をしていなくてもロードもシエラも互いに相手の事で分かっている事があった。というよりも、牢獄で喧嘩した時に確信している。
((………こいつは絶対に"人"じゃない))
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