《すばらしき竜生!》第9話 自己紹介
先に自己紹介を始めたのはシエラだ。
「まずは私から言うわね。 私の名前はシエラ。シエラ=ルミエルよ。気の良い間柄にはシエルって呼ばれてるわ。あなたは気付いているかもしれないけど、種族は………吸鬼よ」
本當に言ってもよいのか、言いふらされないだろうか? という若干の迷いを見せたが、シエラは短い間だが共に行をしてくれているロードを信じたらしい。 こいつは強い奴にしか興味が無いから、種族なんてもの気にしないはずだと。自然とロードを馬鹿にしているが、ロードはシエラの心の中なんぞ知るわけがない。 だが、返ってきた反応はシエラの斜め上をいった。
「あぁ、道理で……」「何が道理で、なのよ」「いや? 八重歯って実を見たら可いんだなぁって、思ってたところだ」「――なっ!? あ、ああ當たり前でしょ? わた……私が可い………なんて」
ロードがサラッと褒めると、シエラはなぜか顔を赤くしながらそんな事を言い、そっぽを向く。 ロードはただ素直な想を言っただけなので、顔を赤く染めてそっぽを向くシエラに、風邪か? と心配するだけだ。
「気を取り直して、自己紹介を再開するわね。私の稱號は―――」「ちょっと待て」
再開していきなりロードが聞いたことない単語が出てきて、ロードは反的に話を止めてしまう。 シエラは、あまり無いを張って自慢気に何かを話そうとしていたところを止められて、しだけご立腹。頬を膨らましてロードを睨んでいる。
「……なによ」「いや、稱號ってなんだ? 聞いたことが無い単語だったから、止めちった……すまん」
「―――え、噓!? あなた、謝れたの!? それにあんたみたいな奴が、稱號の存在を知らないなんて……」
シエラは2つの意味で驚いていたが、前者の驚きにはロードもムッとした。ロードは俺だって謝るときもあるわ! とびたい気持ちを必死に押し殺した。 確かに滅多に謝る事は無いロードだが、自分が悪いと思ったらきちんとロードだって謝る。
「………いいから稱號の説明をしてくれ」「わかったわよ…… 稱號って言うのはね、特別な者に與えられる権利や能力みたいなで、今までで一番稱號が多い人は………たしか三つ持ってたわね。勇者と魔王のって言われる人は稱號を三つ持てるそうよ。 稱號で得られる能力っていうのは技能スキルや特殊技能エクストラスキルとは違う、圧倒的な力を取得できるわ。稱號で得られた能力は固有技能ユニークスキルとか、一部の人の間ではチートとも呼ばれているわね ……その一番チートっぽいあんたが稱號無しノーネームだなんて驚きだけど」
(そりゃあ、中はこれでも"七天竜"ですから。というか"七天竜"は稱號にならないのか? ………あぁバルトが持ってるのか)
聲には出さないが、ロードはそう答えておいた。 稱號は誰でも取れるチャンスがあるならロードも取ってみたいと思う。ロードの場合"戦闘狂"なんて稱號が取れそうだが、あえて考えないようにする。
「で? お前の稱號って何だよ」
先程からシエラがウズウズしていたので、途中で止めてしまったお詫びも込めて助け舟を出す。 するとシエラは、よくぞ聞いてくれました! と言わんばかりに機を叩いてロードに寄ってきた。
(………近い)
「私の稱號は――【吸姫】よ! 能力は、"吸"による全能力の大幅上昇、それに吸鬼の全能力の取得よ!」
だが、シエラのしの自慢が、ロードの強敵と戦いたいという願を刺激してしまう。
「―――ほう? って事は、を吸えば強くなるんだな? なぁ?」「―――ヒィ!」
ロードの悪魔の微笑みを直にけてしまったシエラは、短い悲鳴をあげて部屋の端まで素早く後退りする。
「わかったわかった、今は・・戦わないから安心しろって」「今は? 今は、って事は後でって事!? ノォオオオオ! 地雷踏んだぁ!」
――一分後、ようやく落ち著きを取り戻したシエラは自の戦闘スタイルについて説明をし始めた。
「私の武は、この二丁拳銃よ。元は魔法だったんだけど私のを混ぜて攻撃力、耐久力ともに上昇して、更に自由に何処からでも取り出せるように改造したわ」
そう言い、虛空から二丁拳銃をチャキッと構えながら取り出す。 じっくりよく見ると、黒がベースの拳銃に細かく紅い線が通っているのが見える。なんとも中二病心をくすぐる拳銃だった。 クロトの舎弟に見せたら「フォオオオオオ!? クロトさん、ヤベェっす! めっちゃカッコいいっす!」とか言いそうだ。
「普段は拳銃に魔力を込めて通常の弾を撃ち出すんだけど、更に多い魔力を込めると技も出せるの」「あん時の追尾弾みたいなやつか」「正式には追従魔弾バレットホーミングだけどね。他にもあるけど、それは使う時に見た方が早いわね。私の自己紹介は終わりだけど、質問は?」「吸鬼なのにから日は大丈夫なのか?」「これも【吸姫】のおかげで"日耐"は完璧よ」
ロードが知っている吸鬼と言ったら日に當たると消滅してしまう夜行の生きなのだが、そこら辺は技能スキルでカバー出來ているらしい。
「行に支障は無しって事か。後は……個人的に気になってたんだが、吸鬼って黒や赤のイメージがあるんだが、実際には違うんだな」「いえ、私以外の吸鬼は大黒と赤の服をに纏っているわよ」「じゃあなんでお前は白で統一してんだ?」「簡単な話よ。純白が紅いで濡れるのがカッコいいからに決まってるわ」「………あ、そう。もう大丈夫だ」
思ったよりどうでもいい理由で、ロードは質問した事をしだけ後悔した。 こうしてシエラのターンは終わった。
◆◇◆
次はロードのターンだ。 正直言って、自己紹介をするにしても何を言えば良いのか分からないロードは、シエラが言ってくれたように全てを話すことにした。
「お前に名乗るのは初めてだな。俺はロード、ロード・ヴァン・アデルだ」「名前……ロードって言うのね。……ん、アデル? どこかで聞いた事が―――アッ! アデルって"七天竜"の一柱、黒竜を代表する名前じゃない!」「なんだ、やっぱりそれなりに"七天竜"は有名なのか。知ってたなら説明が早い。 ―――俺の種族名は竜族、それの黒竜種だ。俺の父さんが"七天竜"の黒竜代表な」「―――すいませんでしたぁ!」
ロードが説明した瞬間、シエラの綺麗な土下座が発した。 ロードがよく見ると、が小刻みに震えている。それにシエラはスカートを履いているので土下座をされると目の場所に困る。ちなみに白だった。
「お、おい。どうした大丈夫か?」「あの"七天竜"しかも、災厄と呼ばれている黒竜種に私はなんて態度を。どうか殺すのだけは勘弁してください!!」「いや殺さねーよ。頭大丈夫か?」「なにが頭大丈夫か、よ! あ、いえ、ですか!」「とりあえず口調は直せよ。気持ち悪い」「――ウッ……むぅ」
とりあえず承諾してもらえたようだ。シエラは土下座もやめて普通に椅子に座っている。
「あんたが異常なまでに強い理由がわかったわ。黒竜の代表………あんたの親は更に強いの?」「いや? 能力では俺が圧倒的に高いと思うぞ。人型での試合は俺が勝ったが、竜形態では技量の差で負けるだろうな」
なにせ人型ではロードが勝利し、その後の襲撃で死んだ黒竜を全て喰らい盡くし、本來の力の最低でも二倍は上がったとロードも確信しているのだ。 戦ってみないと分からないが、力テストとかやったら勝つ自信はある。
「黒竜種って、みんなそんなに強いの?」「知らん。全員行方不明か死んだからな。親以外と戦った事無いし」「え………行方不明? 死んだ?」「………過ぎたことだ。もう気にしてねぇよ」
ロードも、既にその事は過去の出來事になっている。シエラはまだしだけロードに同しているようだが、ロードが気にしていないと言うのでこれ以上は何も言ってこなかった。
「さて、自己紹介を続けるか。……と言っても何も言うこと無いんだよなぁ。稱號ってのも何も持ってないし、竜形態に戻る事も出來るけど宿壊すだろうし………戦闘スタイルは毆る蹴るだけだ。なにか質問あるか」
ロードが質問すれば、シエラは腕を組んで必死に質問を考えてる。
「ん〜、じゃあ何歳?」
ロードは座りながらコケた。必死に考えてそれかよ! とツッコミをしたかったが、見る限りシエラは子供っぽい質問を本気で考えたようだ。
「十八だ。竜としてはまだまだガキだな」「へぇ~、私と一緒なんだ。私も吸鬼としては生まれたばかりなのと変わらないのよね」「それは意外だな。吸鬼って見た目がくても年いってるのが多いからな」「失禮ね。誰だってい時はあるのよ」「そうだな、しデリカシーが足りなかったか? すまん、なんか喧嘩の仲だからか気軽に軽口叩けるんだよなお前は」「謝らないでよ、調子狂うわ。それに軽口を言いやすいのはお互い様だから」「じゃあ明日からしの間だが、よろしくな吸姫シエラ」「足を引っ張らないように頑張るわよ。こちらこそよろしくね黒竜さんロード」
二人は椅子を立ち、互いに握手をわす。 ロードとシエラは案外、相が良いのかもしれない。 こうして、シエラの提案した自己紹介は功に終わったのだった。
【書籍化】隻眼・隻腕・隻腳の魔術師~森の小屋に籠っていたら早2000年。気づけば魔神と呼ばれていた。僕はただ魔術の探求をしたいだけなのに~
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