《すばらしき竜生!》第29話 メイドさん
「やっぱり家事をやってくれるならメイド服よねぇ……エルフにメイド服、最強コンボか!」
お店にシエルの雄びが響き渡る。
「……うるせぇ」
裏路地から出たロード一行は新しく購した家に帰る予定だったのだが、奴隷四人も連れていると視線がウザかった。
中には下品な笑みを浮かべて近寄ってくる無駄に豪華な男が居た。 聲をかけられた瞬間にロードが蹴り飛ばし、シエルが男にとっての急所を威力を抑えた魔弾で穿つという作業が時々あった。
とうとうブチ切れたシエルが踵を返して竜王國で一番大きい服屋に歩き出した。四人が奴隷と分かりづらい服を選ぶためだ。 ここまでは良かったのだが、メイド服を発見した瞬間にテンションが上がって今に至る。
今のアイマイミイマインの四人は著せ替え人形となっていたが、シエルの楽しそうな笑顔を見て止めるのを止めている。
(やっぱりエルフのメイド服っていえば裾は短めが良いかしら、でもアイの場合だと長い裾が似合うかも………)
テンションが上がり過ぎて心の聲がれていた。マイはまだいので新しい服と聞いて嬉しがっていたが、他の三人は恐でこまっていた。
アイが助けを求めるように視線をロードに向けてくる。 ついでに心を読むと、奴隷達にはこの簡単な服で十分、無駄な金を使うわけにはいかないから止めてくれという事だった。
ロードはそんなアイに頷きで返して、助け舟をだす。
「……シエル」「ん? なぁにロード?」「アイには長めの裾で、マイは短めが似合うと思うぞ」「――ちょ、ご主人さ――」「――やっぱりロードもそう思う!?」
アイの聲を遮ってシエルが同意してくれた事に更に顔を明るくさせる。
「店員さーん! この裾の長いメイド服を三著と裾の短いメイド服を三著ください!」「わぁい! ありがとうございますシエラ様!」「気にしないで良いのよ、金はロードがいっぱい持ってるんだから」「俺に気を使え、アホシエル」
マイが極まったようにお禮を言うと、シエルは母に目覚めたのかマイを抱きしめる。 いきなりの事にマイは「――ふぇ?」と聲をもらして驚いている。
「さて、次はミイとマインの服だが………」「――ご主人様!」
突然、マインが聲をあげる。
「……なんだ?」「私達には服なんていりません。そんな事にお金を使うのであれば他の事に使ってください!」
「――卻下」
何を言うのかと思えばどうでも良い事だったので、鼻で笑ってマインの意見を否定する。
「なぜですか!?」「――シエルが楽しそうだから」
そう、理由などそれだけで十分だった。
「だから大人しくシエルの著せ替え人形になってくれ。というかあんなにテンション上がってるシエルを止めるなんて無理だ。……理的にも神的にもな」
本気で止めようとしたら、ここら一が荒れ地になる自信がある。だから止めない。
「うーん、どうしようかなぁ。アイとマイのメイド服はフリフリが付いているやつだから、ミイとマインのメイド服は大人しめのやつにしようかな」
その一時間後。ようやく服が決まってそれぞれ3著ずつ購して店を出た。 流石に荷が多くて邪魔だったので、こっそりロードの収納を使った。
すぐに著替えさせるのも良いのだが、ここでシエルが「家でお披目會したい!」と言い出したので仕方が無くそのままで帰っている。
ようやく自分達の家が見えてきた時に、隣の家からアリルが出てきた。 キョロキョロと辺りを見回して、ロードを見つけると手を振って出迎えてくれる。
ロードとシエルの家とアリル達の家は隣同士になっている。そのほうが連絡も取りやすいという事になった。 三階建ての家が二つ並んでいて、しかもどちらもロード達のだ。とても目立つが気にしては負けだと強引に納得している。
「ロードお兄ちゃん、シエルお姉ちゃんお帰りー!」「おう、ただいま帰った。そっちはどうだった? 危険は無かったか?」「うん、大丈夫だよ。ほとんどの家は揃ってたから食類と食料を買うだけだったし、すぐに終わっちゃった。 だから手分けして掃除をしてたんだけど、ちょうど終わってくつろいでた所なの」
それを聞いて我が家を見る。確かにホコリを被っていた家がピカピカになっている。……というよりピカピカになり過ぎている。
「……おい、ウルはどうした?」「―――っえ!? …………お茶を飲んでいるよ」「……ほう? じゃあ呼んでこれるよな?」「………それはぁ――あ! トイレ行ってるから無理だと思うよ!」「トイレ行ってる時間くらい待つぜ? ………で、どうなんだ?」「……はい。ウルが魔法で汚れを全部落としてくれました。本人は魔力切れで倒れています」「―――アホ〜!」
意外と一大事になっていたのでウルの元へ走る。 家にるとソファに橫になって寢ているウルがいた。ガイが疲れたようにうちわで風を送っている。
「あ、ロードお兄ちゃんお帰り。ここに來たってことはバレちゃったか」「――ったく。何してんだお前らは」
ロードは寢ているウルに近寄って疲れを癒やすのと魔力をウルに注ぎ込むため、『白竜の指』に魔力を込める。 だんだんとウルの表が和らいできたのでホッとして立ち上がる。
「これでとりあえずは安心だな。後でお前らを叱ってやるから覚悟しやがれ」「「―――ヒィ!」」
その場に居たガイとアリルを脅して外に出ると、シエルがニヤニヤしてアイマイミイマインの四人は激したようにロードを見る。 はっきり言って気持ち悪かった。
「……なんだよ」「いやぁ必死ですなぁって思いまして」「……うっせぇ。村長やあいつらの親と約束したからしょうがなくだよ」「はいはい、そういう事にしときましょうね。じゃあ私は料理を作るわね」「お前って料理出來たのか?」「もちのろんよ。任せてあんたもくつろいでて良いわよ」
そう言って、腕まくりしながらロード達の家にっていく。その背中は自信に満ちあふれていて逆に心配になった。
「じゃあお前らは………そうだな、風呂にって來い」
奴隷商人の所で洗ったといってもホコリを流しただけっぽいので、髪には汚れがまだ付いていた。
「………ですか、せっかく綺麗にした場所を汚すわけにはいきません。私達はご主人様とシエラ様がった後で大丈夫です」
奴隷として長年教育されてきたのか、真面目なアイは己を下に見過ぎている。
「……アイ、お前は俺を馬鹿にするのか?」「――っえ? い、いえ! そんなつもりは無く――」「だったら大人しく三人を連れて風呂に行け。……言っとくが、しっかりと丁寧に汚れを落としてから出てこい。 ――これは命令でもあるぞ」
し威圧を込めて命令すると、多恐怖したようにを震わせてロードを通り過ぎて行く。
「……アイ、それにマイ、ミイ、マインもだ。お前らは俺の奴隷になった。 ……だけどな、俺はお前らを道としてでは無く、大切な家族として扱う。これは決定事項だ」
すれ違い様にそんな事を言うが、自分でもキザな事を言ったかなと後悔してしまう。
「――ロードォオオオ! なんか四人が泣きながら風呂場に行ったんだけど、何を言ったの!? いや、ナニを言ったの!?」
シエルが包丁を持って駆け込んでくる。その髪のは逆立っていて普通に怖かった。
「………なんでもねぇ。まずは包丁をしまえ、そして変なことに言い換えるな」「噓おっしゃい! あんなに泣いているなんて、の子を泣かせるなんてバカタレ!」
包丁をこちらに向けて更に一歩詰め寄って來る。 これは正直に言わないと刺されると確信したので恥ずかしさを抑えながら先程言ったことを説明する。
「なーんだ、そうだったのね」「あぁ、だけどやっぱりマイナスだったか………そんな泣かれるほどだなんてな、後で謝っておくか」「いや、その必要は無いでしょ。むしろよく言ったって褒めたいくらいよ」「………意味わからん」
〜一時間後〜
風呂から出てきた四人のメイド姿のお披目會となっていた。その間にウルも目を覚まして、全員でロード宅のリビングに待機中だった。 奧からは「きゃぁああ! やっべぇ、めっちゃ可い!」とシエルのおっさんっぽいコメントが聞こえてきて男子組はそわそわしている。
子供達にも奴隷四人の扱いの事は言ってあるので、問題無く家族として接してくれる事だろう。
「それではお待たせしました! まずはガイ達のの回りの世話をしてくれるミイとマインの登場です!」
カーテンの幕が上がって二人が出てくる。
「「「「おお!」」」」
男子組が湧き上がるがそうなるのも仕方が無い。 二人のメイド服は和をじさせる服で、どちらかというと巫服に若干寄っている。
ミイは恥ずかしがり屋なのかモジモジとしていて顔を赤く染めているが、それが逆に可く見えてしまう。 男子達の保護心にヒットしたらしく「俺頑張る」とか「眼福です」と言っていた。
マインはミイとは逆の格で気が強いほうだ。 それでもお披目は恥ずかしいのか恥になんとか耐えている様子だった。
「さてさて、お次は私とロードのアイとマイです!」
再びカーテンが開かれる。 だが、聲は出てこなかった。似合わないとか可くないとかではない。むしろ似合いすぎて全員が言葉を失っていた。
シンプルな裾の長いメイド服にエルフらしい気品溢れるアイの雰囲気が合って、思わず敬語を使ってしまいそうになる。 というかが凄くて自然と視線がそこに吸い込まれそうになる。
マイの服はアイのメイド服の裾を短くしてフリルも付いている可らしいだった。さも相まって普通の人だったらロリコンに目覚めてしまう危険があった。
ロードは鼻の下をばして呆けている男子4人に軽くデコピンして正気に戻してあげる。
「……なにかおかしい點がありますでしょうか」
反応の無さにアイが泣きそうな顔で聞いてくる。
「……いや、似合い過ぎて言葉を失っていた。見てみろこの男子共の顔を………って、本當にヤバイ事しそうな顔をしてやがる。 おい、こいつらは俺のなんだから変な事しやがったら指とるぞ」「「「「―――ヒィイイイ!」」」」
「……そうですか。それなら良かったで――ケホッケホッ!」「――ちょっと大丈夫!?」
突然、アイが咳き込んで膝を付いて床に倒れ込む。シエルが駆け寄ると床にを吐いて苦しそうにいている。
それで溫かい雰囲気だった場は急激に変わる。 シエルは慌てながら背中を優しく叩き、男子共は何をしたらいいのか分からずにオロオロしている。
「そういえば奴隷商人がアイは病気持ちって言ってたな」「――ご主人様お願いします! お姉ちゃんを助けて!」「――と、とりあえず教會に! 教會の場所って何処!?」「………ロードお兄ちゃんここは私が!」「お前ら落ち著け。それとアリル、教會に行ったらシエルがヤバイから卻下だ。ウルは絶対に一日に二章まで回は超級魔法は使うなに悪すぎる」
そう言いながらアイの元へゆっくりと歩み寄る。
「………しるぞ」「ご主人様……私の事は気にしないでください」「――卻下だ」
ロードは心臓部分に手を當てて、白竜の指に大量の魔力を注ぎ込む。
『災いを祓え』
省略した超級魔法を発してアイの病気をあっさりと治してしまう。 それを當然のようにやってしまうロードに、慌てていた自分達が馬鹿らしくなってしまうシエル達だった。
「――あれ? が………」「これで大丈夫だろ。また何かあったら遠慮無く言うように」「………え? ………はい……」
「ロード!」「なに?」
振り向くと銃を構えたシエルがいた。 ……なぜか分からないけどオコらしかった。
「アイのったでしょ!」「……そこかよ。というかしょうが無いだろ、心臓の狀態が一番悪かったんだから、そこを最初に治さないと意味無いだろ?」「………うぅ……やっぱり男はボインが良いのか……」「あ? なんだって?」「なんでもない! ――ありがと」「ご主人様、ありがとうございます! この恩は一生忘れません!」「……おう、大した事ないから気にすんな」
保有魔力の五分の一を消費しただけなので大した事は無いとロードは言うが、軽く命を救った事なのだ。 本當に規格外だと心笑ってしまう。
「――じゃあ四人の歓迎會を始めるか!」
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