《すばらしき竜生!》第30話 シエルの料理

アイを救って場は賑わっていた。 そして、そのままのムードで歓迎會を開く事にした。………開くことにしたのだが、その場は靜寂に包まれていた。

「…………なにこれ」

皆が聞きたいと思われる質問をロードが代表して靜かな雰囲気を作り出した犯人シエルに問いかける。

「何って、料理よ?」「……………」「何って、料理よ?」「聞こえてるよ、二回も言わなくていい」

視線をかしてテーブルの上にあるを注目する。 そのは、ロードが激怒した時の禍々しいオーラよりも妖しく揺らめいており、ロードのき通る黒竜の鱗と同じく漆黒に染まっていた。

「………おかしい」「………ん?」「これの、どこを、料理って、言えるんだ!?」「ひどっ!」「シエラお姉ちゃん、これは無いと思う」「――え?」「………シエラ様……」「え? なんでそんな可哀想な目で見るの!?」

ロードが抗議の聲をあげ、アリルが料理を否定し、アイマイミイマインの四人がシエルを見つめる。 その現狀に涙目になっているシエル。

だが、流石に捨てるのは可哀想だと思い、スプーンを持って鍋の中ダークマターの前に立つ。

「ろ、ロード様!?」「黙ってくれ。俺にはやらなくちゃいけない事があるんだ」

アイが今にも泣きそうになる。

「………心配するな。俺は死なないから」

出來るだけ優しく微笑み不安を和らげようとするが、誰の目から見ても無理をしてるようにしか見えなかった。

「ロード兄ちゃん!」「ロードお兄ちゃん!」「ロード様!」「そんな、嫌です!」「…………おかしい」

謎のが生まれている中、シエルは膝を付いてショックを隠せていなかった。

「………よし」

スプーンで食べと呼べるのか分からないをすくい上げる。 そして、意を決したロードは己自の耐久力を信じてそれ・・を口に運び………

「――ガハッ………」

ぶっ倒れた。

◆◇◆

「……何をやっているんだい?」

あ? おぉ、神じゃん。久しぶりだな。

「あ、うん。久しぶり」

それでなんのようだ?

「えぇ? 直球だね。君が久しぶりに気絶してくれたからお話しようかなぁと思っただけだよ」

人が気絶しただけなのに神が出てくるなよ。 暇なのか?

「暇なんだよ。何も無いんだよ! いいなぁ、僕も冒険したい!」

………喚くな騒がしい。 それなら、しちゃえばいいじゃねぇか冒険。

「そうしたいのは山々なんだけどねぇ。……それに比べて、君はずいぶんと楽しそうじゃないか」

そう見えるか?

「前世で一番楽しそうにしてた時と同じ顔してるよ。 シエラさんと一緒にいる時は特にね。……あの子可いよね、君と相がピッタリだ。大切にしなよ」

シエルは唯一の仲間だからな、大切にするのは當たり前だ。

「………そういうことじゃないんだよなぁ」

あ? なんか言ったか?

「何でも無いよ。君を見てると面白いからね、僕の暇つぶしに丁度いい」

なんだ俺のファンか? 今ならサインを書いても良いぜ?

「そもそも今の君は実が無いじゃないか。――ふふっ、君も明るくなったね」

そういうのって本人は気づかないから、あんたがそう思うならそうなのかもな。

「うん、僕はそう思ってるよ。………それじゃあそろそろ時間だね」

……ホントにお話だけが目的だったのかよ。

「だからそう言ったじゃないか。 ――あ、折角だから神のお告げをしようか?」

いらねぇ。

「まぁまぁ、言わせてよ。 ――君が行こうとしてる學校で再會があるでしょう」

再會? 誰だよ。

「それは會ってからのお楽しみだよ」

あ、ちょ待て! クソッ意識が………

◆◇◆

「――ロード! ちょっと、起きなさいよロード!」

(……頭クラクラする。あの野郎、耳元で大聲で喋りやがって)

ロードが薄っすらと目を開ける。 そこには腕を振りかぶったシエルがいた。

「――ちょっ待っ――」

―――パァン!

「――へぶっ!」

なぜシエルのビンタは痛いのだろうか? それがロードにとって最大の謎だ。

「……あ、起きた」「ロード様、大丈夫ですか?」「……おう、一応無事だ。俺はどのくらい寢ていた?」「ほんの十分程度です」「シエルの料理は?」「シエラ様が死守していたのですが、皆で協力して廃棄しました」

を見回すと、誰かが暴れた後があった。 心なしかシエルの髪のがボロボロになっている気がする。

「………はぁ、飯は皆まだだよな? し待っててくれ、簡単なだが作ってくる」「あ、私も手伝―――」「――全員、そいつを抑えろ! これは命令だ!」「なんでよぉおおおお!」

アホのびは無視して臺所に向かう。 あの料理を見た後なので片付けからかな、と思っていたのだが意外にも綺麗だった。

「まさか、異世界で一番最初に食べるちゃんと調理した料理は自分のだとは………シエルのは料理じゃないからノーカンだよな」

ロードの母親――ネイルも料理を作ってくれていたのだが、どちらかと言うとを焼いただけなので調理というより原始的な食べと考えている。

冷蔵庫を開けると卵(っぽい)、ネギ(っぽい)があった。炊飯には、なぜか米が炊かれてっていた。

(あの料理に米ってたのか……)

フライパンを軽く洗って水気を拭き取る。魔力でコンロに火をつけてフライパンに油を量流し込む。

(他人に料理を作ってやるのは何時ぶりだろうな。……と言っても、あいつらも腹空いてるだろうから簡単なやつしか作れないけどな)

數分後。人數分の料理を作ったロードはテーブルに例のやつを並べていた。

「なにこれ?」

皆は見た事ない食べが出てきた事に「この人もか?」と思っていた。

「チャーハンだ」「チャーハン? 見た事ない料理ね」「いいから食ってみろよ。ある場所ではお手頃に作れる味しい料理で有名なんだぞ」

シエルが出してきたダークマターよりはマシかと思い、アリルがスプーンでチャーハンを掬って口に運ぶ。

「……………」「……………どうだ?」

反応が無い事に流石のロードも心配になってしまう。 何か変なでもれてしまっただろうかとか、あの時に味しいって言ってくれた後輩達の言葉はただの空気を読んだだけなのかと思ってきた。

「………まい」「お、おいアリル?」「――味い! なにこれ、こんな味しいの初めて食べた!」

ただ言葉を失っていたようで、バクバクと掻き込んでチャーハンを食べている。 急ぎすぎてに詰まったのかをドンドン叩いてる。 素早く水がったコップを渡す。

「急がなくても飯は逃げないぞ」「――んぐっ、ありがとうロードお兄ちゃん」

アリルの反応を見てチャーハンに興味を持ったのか、それぞれがチャーハンに手をばして食べる。

「悔しいけど味しい。……おかわり」

見ると、アイ達は手をつけていなかった。

「どうした? 腹減って無かったか?」「私達は奴隷ですので、ご主人様の許可が無け――」「――俺はなんて言った? お前らを家族として扱うって言ったよな? 許可とかいらないから好きに食べてくれ」「………ですが……」「ちなみに、お前意外はもう食ってるぞ」「――え?」「お姉ちゃん、これ味しいよ!」「んまー」「初めて食べましたけど味しいです」

アイはありえない事に呆然としているが、ロードはこのありえない事をんでいた。

「お前は真面目すぎるんだ。そんなんじゃ人生楽しくないだろ?」「…………」「……じゃあ分かった。お前らに命令だ。 ――自分のしたい事をして生きろ。ここから逃げて故郷に帰るのも許そう。ここで俺を殺して本當の自由を手にするのも問題無い」

臺所から包丁を取り出してテーブルの上に置き、両手を広げて待ち構える制をとる。

「………なんで」「なんでって……いちいち命令するのが面倒なだけだ」

言ったことは半分本當の事なのだが、アイはそれを冗談で言ったのだと勘違いして薄っすら微笑む。

「分かりました。私はご主人様の命令に従い、自由に生きる事にします」「……おう、それでどうするんだ?」「――私をメイドとして雇ってください」「分かった。アイ、お前を我が家でメイドとして雇おう」「ありがとうございます!」

激したのかアイが肩を震わせながら涙を流す。シエルはそんなアイを優しく抱く。 周りの奴らも貰い泣きをしたのか鼻を啜っている音が聞こえてくる。

その後マイ、ミイ、マインの三人もメイドとして働くことになり、月給は銀貨十枚という事で落ち著いた。 本當は月給は金貨一枚にしようと言ったのだが、高価過ぎてダメだと本気で否定された。

アイとマイはロードとシエルの家で、ミイとマインはガイ達の家で働くことになり、何か問題が起こったら即座にいう事を約束した。

現在は食後の休憩で皆でソファに座ってくつろいでいた。

「あぁ、忘れていた事がある」「ん? なぁに?」「突然だが、俺はこの國で一番大きい學園にる。 そして、ガイ達子供組には冒険者學校にってもらう。頑張ってな!」

「「「「「――えぇえええええ!?」」」」」

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