《すばらしき竜生!》第33話 手加減とは?

「――君達」「……ぁあ?」

四人で睨み合っていたら不意に聲を掛けられたので見てみると、そこには先程の雑魚がいた。

なんか無駄にカッコつけていてウザい。遠くには子生徒が何人かこちらを見ているので、雑魚の追っかけでもしているのだろう。

「君達も魔剣祭に出場するのかい?」「そうだが」「じゃあ誰かが準優勝狙いってことなんだね」「……は?」

魔剣祭は四ブロックに分かれていて好きなブロックにることが出來る。さすがに一つのブロックだけ多すぎると選になってしまうが。 ツバキはAブロックでカリムはDブロックに出場するらしいので、シエルがBブロックにロードがCブロックに出場することになっている。

なのでこの中の誰かが準優勝になるなんて無いと思っている。

「僕はBブロックだから、そこになった人は可哀想だけど優勝は無理だろうね」

相手を哀れむような顔をする雑魚君。

「あ?」←ロード「はぁ?」←カリム「……うっわぁ」←シエル「ふっ」←ツバキ

それぞれが別の反応をして逆に雑魚君を哀れむような目で返す。ツバキなんて鼻で笑っている。 その反応を見た雑魚君は眉間をピクピクと痙攣させている。

Bブロックといったら、そこはシエルが擔當するブロックだ。

「よかったなシエル。一勝は確実だぞ」「よっしゃい! 闘技會で待ってるわよ、みんな」「いやいや、話聞いてたかい? ……なるほど、そこのお嬢さんがBブロックなのか。……まぁ々頑張ることだよ」

雑魚君はシエルをただのの子だと思っているのだろうけど、そのシエルに雑魚呼ばわりされているのも知らないでそんなこと言ってたら笑ってしまう。

「――ブフッ!」

いまだにドヤ顔を止めない雑魚君に、とうとう我慢出來なくなったロードが吹き出す。 むしろここまで面白い奴が目の前にいるのに笑うのを我慢しろとか、ロードにとってはただの罰ゲームだ。

「――プッ、ロード。笑わないでよ……我慢が――ッアハハハッ!」

それに釣られてシエルも肩をわせるだけで我慢していたのに、大聲で笑いだしてしまう。

「………だ……」「ハハッ……はぁ……あ? なんだって?」

笑っていたロードは雑魚君が何を言ったのか聞き逃してしまったのでもう一度聞くと、次はドデカい聲で返ってきた。

「――決闘だっ!」

◆◇◆

突然の決闘をけて心底面倒そうにしているロードとシエルを無視して、雑魚君は教員に訓練場の貸し切りの許可を取りに行っている。

二人は面倒すぎて両腕をダラーンと下げて貓背になる、やる気すらもじさせない姿勢になっていた。 それを哀れそうに、だが面白そうに見ているツバキ。

「お主らも面倒事に巻き込まれたのぅ」「……そう思うなら変わるか?」「妾も面倒事は勘弁じゃよ」

微かに笑っているツバキをダラリとした姿勢のまま睨むと、両手を挙げて降參のポーズをする。

「先生に許可を貰ってきたぞ」

雑魚君がようやく戻ってきて、そんな事を言うからロードとシエルは更に深いため息をついた。 それを違う意味ととらえた雑魚君は……

「今更、怖気づいても遅いよ。僕を笑ったことを後悔させてあげるよ」「……るせぇ、勘違い野郎」「……自分の過大評価甚だしい」

更にやる気を無くす2人に対して、雑魚君は更にやる気がみなぎってきたようで武である杖をブンブンと振っている。 それだけで周囲にいる子達から歓聲があがる。

「……それでルールは? 殺していい?」

よほどイライラが溜まっているらしく、サラリと怖いことを言うシエル。ロードですら一瞬聞き逃したほど自然と言っていた。

「ルールは僕に攻撃を當てれば君達の勝ち。僕が君達に勝てば僕の勝ち。……簡単だろ?」

なんともロード達を馬鹿にしたルールだった。さすがにキレかかったロードだが學早々事件を起こすのは不味いと理が働き、なんとか我慢する。めっちゃ我慢する。

「……お前がやれよ」「――はぁ!?」

ロードがシエルにふる。

「あんたがやりなさいよ!」「――はぁ? なんで俺が?」

ここでカリムは思った。これは言葉の泥試合になりそうだ、と。

「ロードが最初に笑ったんじゃない!」「もともと一緒のBブロックだろうが!」「あんたにとってあんな雑魚を潰すのなんて、そこら辺の雑草を踏むのと大差無いでしょ!」「それを言うんだったら、てめぇもそこの雑魚なんてただの飯と思ってるんだろうが!」

雑魚君がし涙目になってきている。

「雑魚のを飲んでも不味いだけよ! もう私はロードしかけ付けないの!」「――オォイ! ちょっと待て! その言葉は々とアウトだぞ!?」「べっつにぃ? ホントの事を言ってるだけよ!」

「……お主ら、雑魚の相手を忘れておるぞ?」「「――ハッ!? 完全に忘れてた!」」

もうどちらが雑魚君と戦うかなんて考えていなかった。 そろそろ収集がつかなくなってきたと思ったツバキが止めにると、完全にハモって目的を思い出した二人。

「ほら、手っ取り早くじゃんけんで決めたらどうだ?」「ナイスの助言だ、カリム!」「お、おう」

見かねたカリムが助け舟を出してくれてのでロード達もそれでいいかと思い、じゃんけんの構えをする。その格好はどちらも覇気が篭っていて、どれだけ面倒なのかが良く分かる。

「……お前、じゃんけんのルール分かるよな?」「私だってそのくらい知ってるわよ」

アホの子シエルなのでし心配になってしまい、一応聞いてみたのだがどうやら杞憂だったらしい。 ならばさっさと勝敗を決めよう。

「「――じゃんけん、ポイ!」」

◆◇◆

「うぅ、なんでじゃんけんで決めようなんて………」「さっさと現実をけ止めろー」

じゃんけんはロードの勝ちだった。 というよりもロードの必然勝ちに終わった。シエルは最後まで何を出そうか悩んでいたのだろう、沢山の思考がロードの脳に・・・流れ込んできた。

それはロードがじゃんけんをする前に『竜眼』を発させたからだ。竜眼は相手の考えを完全に読み取るので、シエルが考えるだけ無駄な事なのだ。 別にシエルが何も考えないで出しても、全力を出したロードが目に見えない速さで被せて勝ちになれる。

なので何が起きてもロードは勝利する。

「おや? お嬢さんだけが僕の相手をするのかい? ……二人掛かりでも良かったのにね」「いらないわよ」

どこまでも自分を過大評価している雑魚君にイライラが発しそうになる。 たかが上級魔法を放っただけでここまで天狗になれるなら、それはそれである意味才能なのだろうか。

「あんたって可哀想よね」「……なんだと?」「自分が雑魚だと分からずに調子に乗って。……しかもナレーションに雑魚呼ばわりされてるのにも気づかないなんてね」「――なんだと!?」

「……なぁ、あのアホシエルが危ないこと言ってる気がするんだが?」「気のせいじゃろう、そう思っておれば良い」

訓練場ではシエルの言葉に激高した雑魚君が今にもシエルに飛びかかりそうな迫した狀況なのに対して、観客席のロード達はのんびりとしている。

ロードは結果が見えているので訓練場を見ようともしていない。 ツバキとカリムはシエルがどのくらいの力量なのか、どのような戦い方をするのか気になって訓練場に注目している。

學院のエースが喧嘩を吹っ掛けたという話が早くも広がって観客席には他にも生徒と教員が大勢來ていた。ちょうど休み時間だったので暇つぶし半分で來ている生徒もいる。

「本當にシエルが勝つと信じておるのじゃな」「……シエルが俺以外に負けるとかありえねぇ」「ホントにあいつはエースなんだけどなぁ……っと、そろそろ始まりそうだ」

今はシエルと雑魚君が審判の教員から話をけている。もう一度、ルールの確認でもさせられているのだろう。 そして、両者が頷いたところで教員が遠ざかって両者が距離を置く。

「――両者構え!」

雑魚君は杖をシエルに向けて、シエルは片腕を雑魚君に向ける。 シエルからはやる気が全くじられなかったが、雑魚君は馬鹿にされた怒りが溜まっているらしく睨みつけて構えている。

「よし、帰るぞ」

ロードが立ち上がって訓練場に背を向けて歩き始める。その行にツバキが疑問を持ってロードを止めようとしたところで審判が開始の合図を出す。

「――始め!」

――パン!

瞬時に乾いた銃聲音が鳴り響くと、ドサリという音が遅れて聞こえる。

観客席にいた人は、暇つぶしとしてもエースの戦いなのでその目に焼き付けようと集中して見ていた。そして、どうせ我らがエースが勝つだろうと思っていた。

なので、審判の合図が出た時にいつの間にか白髪のの手に収まっていた拳銃から煙が出ていて、勝つと思っていたエースがゆっくりと後ろに倒れていく、その景を観客は理解出來なかった。

「だから早く用意しろって言っただろうが」

呑気なロードの聲がツバキ達の耳に屆く。ロードはこのような結果になるのを知っていたので立ち上がっていたのだ。

面倒臭そうにしている時のシエルは、さっさと終わらすために相手に対して容赦が無い。 怒った時のシエルの早撃ちは、ロードでも速いとじる。普段は段階を五に抑えているので余計にじる。

今回は面倒なのとイライラが溜まっていたので、始まった瞬間に終わるだろうなという考えに至った。

「――ったく、とんだ茶番だな。なぁシエル?」「全くよ。面白い要素が無かったわ」「――お主! いつからそこに!?」「いつからって、さっきだけど?」

ツバキが驚愕の表で訓練場の真ん中とシエルを互に見ている。ちなみに訓練場の真ん中では、シエルに瞬殺で倒されたエース(笑)が教員達に囲まれている。

「……驚いたな。どうやって一瞬でここまで?」「飛んだ」「――飛んだ!?」

シエルは吸鬼特有の技能スキルである蝙蝠化で飛んできたのをロードは視認していた。 蝙蝠化は移速度がとても早くなる代わりに耐久力が激減する。普通時のシエルと比べると三倍の速さでける技能スキルなのだが、なぜかロードはきを捉えることができる。

「お前、最近いてないから遅くなったか?」「それは太ったか? と聞いてるの?」

シエルが笑顔ではない兇気の笑顔を浮かべてロードにゆっくりと迫る。さすがの気迫にロードも一歩後ろに下がってしまう。 そんなことよりもツバキは驚いている事がある。あれで遅いのか? と。 ツバキは己を過大評価しているつもりは無いが、普通よりは強い方だと自覚している。

なのに先程のシエルと雑魚君の戦いは何なのだろうか。 シエルが拳銃を撃ち放ったのは誰にでも分かっただろう。だが、シエルが撃った弾丸を理解出來たのは數ない。

元は普通の銃弾なのだが、それに魔力を作して銃弾に様々な変化を加えている。 今回、シエルがやったのは威力を最小にして銃弾の速さを最大限にばした。

普通は魔力を作するのは至難の業で超級の魔法使いですら難しいと言われている。 それを何の苦も無く、さも當然のようにやっているシエル。シエルお得意の技である追従魔弾バレットホーミングは魔力作の究極型といえる。

間違いなくシエルは最強と言えるだろう。それなのにロードがし前に言っていた言葉を思い出す。

『シエルが俺以外に負けるとかありえねぇ』

これは神じみた能力を持つシエルよりもロードのほうが強いということになる。

(……本當に戦うのが楽しみじゃ)

自分の力量がどこまで通用するのか。ツバキは今からとても楽しみになってくる。 そしてツバキもカリムも修行しなくては、と心に決めた。

「ねぇどうなの? 私は一切疲れてないから再戦出來るわよ?」「嫌だよめんどい。それにここを壊しちまう。……良いのか? 俺がマジもんの本気見せても良いのか?」「マジで勘弁してください! ――あ、黒い煙出さないで! 謝るから、本気で謝るからぁ!」

ロードが悪戯っぽい笑みを見せて黒い煙を纏い始めると即座に後ずさるシエル。顔は盛大に引き攣っていて首を勢い良く橫に振っている。

「――おい!」

突然の大聲にし驚いて皆が振り向くと、気絶から回復したらしい雑魚君が立っていた。額にはまだ絆創膏があって酷く稽だった。

「よくも僕をコケにしやがって……お前らに、貴族に歯向かったらどうなるか教えてやる!」

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