《すばらしき竜生!》第34話 楽しいゲーム

「絶対に許してやるものか!」「……タフだなお前」

とてつもなくムカつくドヤ顔をしている雑魚君を無視して、チラリと學院のに詳しいカリムを見ると、雑魚の言うことは本當らしく困ったような顔をしている。

「お、おい。流石に許してやれ」「先生は黙っていてください! ……それとも先生もこいつらのようになりたいですか?」「うっ………くっ……」

審判だった教員が止めにるも、貴族の権力というやつで黙る。他に観戦していた生徒も同じように権力が怖くて全員が下を向いている。 ロードとしては別に最初から助けも何も期待していなかったのでどうでもいい。

「……そうだな、土下座して謝罪してくれたら許してやらんでもない」

こっちが雑魚君本來の姿らしく、ゲスな笑みを浮かべている。コテンパンに負けたというのに完全にこちらを見下しているのがムカつく。

「なぁ、シエル?」「ねぇ、ロード?」

同時に呼びかけて綺麗にハモる。シエルがどうぞというじで顎をクイッとしてきたのでロードは先に自分の意見をいう。

「あいつムカつくんだが」「……そうね、私もよ」

「「……はぁ……」」

二人は小さいため息をつく。予想していた反応と違う言葉に雑魚君は「――なっ!?」という間抜けな聲を出していた。 貴族は王族の側近がなれる地位であり、人々にとって貴族は手の屆かない場所に住んでいるスターのような存在。……なのだが。

「「だからなんだっての」」

ロードは最強の種族である竜族の頂點に君臨する『七天竜』。言ってしまえば人々の王よりも果てしなく上の座にいる存在だ。なので、貴族だと言われてもなんとも思わない。 當然シエルもロードが黒竜種というのは知っているので、雑魚君が言っていた『貴族が本気を出す』ことよりもロードが本気を出すほうが余程怖かった。

「俺を脅すなら……そうだなシエルの料理を持って來い」「おいコラ、なんで私が神的ダメージをけなければならない!?」「……あれは殺人料理だ」

ロードがブルリとを震わせる。 黒竜種最強であるロードを思い出しだけで怖がらせるのは世界でシエルの料理だけだろう。

「だ、だが……貴族ならお前達を犯罪者にして曬し首に出來るんだぞ!?」「出來るもんならやってみろよ。……そしたらこの國潰すから」

どうでもいい脅しに覇気を纏って吐き捨てるように言葉を返すと隣では「――ヒィイイ!」とシエルがけない悲鳴をあげる。 雑魚君の脅しにではなく、ロードから放たれた覇気が本気マジだと分かって怯えている。

「う――噓だ! ハッタリを言うな!」

本當に噓だと思っているのかそれとも信じたくないだけなのか。だが、ロードの気を真っ向面からけて怯えているのは目に見えてよく分かった。

「――ん?」「どうしたのロード?」「あ、いや……」

(……気配を消して寄ってくる奴が一人か)

強さとしては小さい反応だが、確かな反応が一つ學院の外から凄まじい速度で忍び寄って來る。 だが、敵意はじられないので誰かの関係者だろうか? ……と言っても今の狀況では雑魚君の関係者としか考えられない。

そう考えていたところで一人のが雑魚君の後ろに音も無く忍び寄って、何かを話しているようだ。 それを聞いた雑魚君がこちらを向いてニヤリと黒い笑顔を浮かべる。その様子からこちらが不利になる報だろう。

面倒になりそうな予が凄かった。 その予想は當たる。

「――ガイ、ピストル、ライド、キイトラ、アリル、ウルという名に聞き覚えは?」

シエルの息を呑む音が聞こえる。

(なるほどそうきたか。てっきり住所特定とかされるかと思ってたんだが。というより流石は貴族だな、隠特化の報屋を雇っていたのか)

「まだあるぞ、アイ、マイ、ミィ、マインという名のメイドが居るらしいな。その中の二人がエルフ。隨分と人さんらしいな」

まさかの住所特定に近いことをされていた。やっぱり嫌がらせでやることはどの世界でも同じらしい。

それにこの短時間で調べられるのはロードでも心した。そういう裏の組織的なのもあるのだとしたら相當な報網だ。

「なるほど……で? だからなんだって話だが」「………は?」「だからなんだって聞いてんだよ雑魚。あ? 早く続きを言ってみろや、それで俺の大切な家族にどういう危害を加えようとしてたのかをよぉ。場合によっては殺……どけ、雑魚の手下」

ロードが前に歩いて雑魚の元に行こうとしたところで、報屋が短剣を構えてロードに立ち塞がる。

「これ以上、ピクルス坊っちゃんに近寄らないでください。その首とをおさらばしたいのですか?」

どうでもいいことだが、初めて雑魚君の名前が分かった。 一度止まったが、やっぱり気にしないでそのまま進む。

「忠告はしました――フッ!」「――ロードのバカたれ! さっさと避けぬか!」

報屋は短く息を吐いてロードの首元目掛けて短剣を奔らせる。 避ける素振りも見せないロードにツバキがたまらずぶが、ロードは薄く微笑んだままゆっくりとしたき・・・・・・・・・の短剣気長に待つ。

――ガッ! バキッ!

「――ぺっ! 終わりか? 雑魚の手下はやっぱり雑魚なのか?」「……え?」

報屋の確な一撃はロードの噛みつきによって防がれて々に砕けちった。前にも一度こんな荒業をやったな、と思いながらも報屋を煽る。 ツバキや報屋は何が起こったのか、ロードが吐き出したが何なのか理解していない。

そして自分が持っていた短剣の刃が無くなっているのを見てようやく理解する。そして素早く距離を取り、ロードを警戒している。

「……すいませんピクルス坊っちゃん。これは流石に契約破棄です……」「……え? あ、おい!」

報屋は無理な契約は即刻切って、そのまま素早くその場を離する。それは目では追いつけない速度で誰もが報屋を止めることが出來ない。 ……相手がロードでなければの話だが。

「――おい、逃げんなよ」「――なっ!? ガッ……」

難なく報屋を捕まえて訓練場の真ん中に叩きつける。どこからか「うわぁ……」という聲がもれる。

「なぁ、ゲームをしようぜ?」「くっ、あぁ……はぁはぁゲームだと?」「そうだ。クリア出來たらここから逃がしてやる。その後は俺は手を出さないと約束しよう」

この景を見てシエルは思った。「あぁ、地獄が始まる」と。 靜かに哀れな報屋に合掌して安全な観客席にツバキとカリムを連れて逃げる。連れられた二人は何がなんだか分かってなかったが、シエルの必死な説得で移していた。

「いきなり何を言い始めるんだお前は!」「キュウリは黙ってろ! スライスして喰うぞゴラァ!」「――ブフォ!」

ピクルスが我慢できずに怒りを込めて言い放つが、ロードが報屋との話を邪魔をされた苛立ちをそのままピクルスにぶつける。 その言葉を聞いてカリムは思わず吹き出して笑ってしまう。

気を取り直したロードはもう一度報屋に視線を向けて手を差しべる。

「それでゲームにけるか、けないかをさっさと選んでしいんだが?」「……ける。ルールを説明してくれ……いや、してください」

それを聞いたロードは満足そうに頷く。

「それじゃあルール説明といこう!」

ロードが考えたゲームのルールは簡単。 報屋の勝利條件は訓練場から一歩でも外に出ること。ただし、ロードに捕まったらもう一度訓練場の中心からやり直し。 ロードは摑む投げる以外の攻撃をしない。報屋は何を使っても良いという嬉しいルール。 時間制限は無く、報屋がギブアップと言うまでゲームは続けることができる。

報屋が勝利した場合はロードは一切の手出しをできない。その後に詮索するのも不可能となる。

「な? 簡単だろ? ちなみに捕まるごとに罰をけてもらうから頑張れよ」

あらかじめシエルにツバキ、カリム、ピクルス以外の生徒や教員を訓練場から追い出してもらっている。 これで思う存分にロードは遊ぶことができる。

「それでは――始め!」

開始の合図はロードから出た。 報屋は過去最大の速度を出して複數ある出口を目指して走る。もちろん十八番おはこの気配遮斷もフル活用している。

そして、あとしというところで真後ろから聲が掛かる。

「はい、ざんねーん」「――アグッ!」

襟首を思い切り摑まれてとてつもないGが報屋に襲い掛かる。そのまま訓練場の中心まで投げられ、衝撃に息が詰まる。 各出口から訓練場の中心までは相當な距離があり、軽く力をれるだけで細とはいえを投げるロードの人並み外れた腕力にツバキは驚く。

「じゃあ罰として……もぎります」「え? ――あァアあァあぁァ!?」

何を? と聞く前に報屋の斷末魔が訓練場に響く。 ロードは倒れて咳き込んでいる報屋の片腕を踏み潰したのだ。相変わらずエグいことをやるが、先に殺そうとしてきたのは報屋なのだ。 むしろ殺さないだけマシと思われる。

「ほら、騒がない。これじゃあ十分にけないだろうから回復してやるよ」

そう言ってにつけている魔法に大量の魔力を注いで回復魔法を発させる。すると、潰れていた腕が逆再生のように元に戻っていく。

「――馬鹿な!?」

ピクルスがそれを見て驚愕している。 その理由は原型を留めていないを回復する魔法は『超級魔法』として分類されているからだ。

ピクルスでも上級魔法を放つのに最速でも三十秒は掛かる。ロードは更に上の階級である魔法を一瞬で発したことがピクルスには信じられない。

「よし、じゃあ次の挑戦どうぞー」

そこで報屋は理解出來てしまった。これは殺されるよりも果てしなく辛い拷問だと。 流石に殺しはしないとロードは説明の時に言った。その言葉を信じるなら最悪の場合、両腕と両足の計四回の苦痛に耐えれば地獄の罰は終わる。 だが、それを回復されたらどうだろうか。ロードの魔力が盡きるまで罰は続く。そんなに疲れていないことを考えて終わりが見えない。

「降さ――ムグッ!?」

降參と言おうとした報屋を瞬時に蹴り飛ばす。思い切り壁に激突して、しだけクレーターが出來ている。

「――ガッ、グフッ……」「おっと危ねえ。大丈夫か? お前の腹に人を簡単に殺してしまう毒蚊が居たもんでな、助けねぇとって思ったんだよ」

(((これは酷い)))

観客席で一部始終を見ている三人はロードの悪魔よりも悪魔っぽい行に完全にひいている。 絶対にロードが満足するまでこのゲーム地獄は終わらないと思ってシエルは本日二回目の、ツバキとカリムは一回目の合掌を報屋に向けた。

◆◇◆

一時間後

「はぁー、満足した」

ロードは心の底から笑みを浮かべて気持ちよさそうにびをしている。程よい骨の鳴る音が聞こえる。

しかし、目線を移すと一瞬でそこは地獄に変わる。だらけになったが息を切らして仰向けになって倒れている。 そして虛ろな目で「もう……許してぇ……」と何度も呟いている。

一時間も同じことを繰り返していたので、シエルは飽きて寢てしまっている。 ツバキはそれに気づいて、いつの間にか布を持ってきてシエルと一緒に包まっているうちに同じく寢てしまった。 カリムだけはロードの悪逆非道な行いが何かにれたらしくテンションMAXで盛り上がっていたが、ロードが満足したのを見てカリムも息をついて席に座り込んでいる。

満足して賢者モードに近い狀態になっているロードは目の前に転がっている報屋を見る。

「………やりすぎたかな?」

今回のロードは理解が遅すぎた。

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