《すばらしき竜生!》第44話 警戒
「折角なので夕食でもいかがですか?」
話し合いも終わってシエルにどう説明しようかと考えながらソファに腰掛けていると、エルドはメイドを何人か連れて夕食にってきた。 メイド達は事を把握しきれてない様子で、王様であるエルドが客人ごときに何故敬語を使っているのか疑問に思っていたようだが、そこはプロ。表には出していなかった。だが…………
(なんでエルド様が敬語を?)
(王に対して無禮な態度……このガキ……)
駄々れなメイド達の本心を聞いたロードはしばかり苦笑して首を橫に振る。
「気持ちはありがたいが、帰りが遅くなると俺の仲間が心配するからな。王様のいを斷るってのもじ悪いと思うが、今日はやめておこう」
他人を気にしないロードでもこれは流石に居心地が悪い。エルドやロードの素を理解した側近達に伝えたいことは伝えたので、これ以上居座る意味もない。ならばさっさと帰って寢たいというのがロードの本心だった。
「そうですか……では、またの機會にお仲間もご一緒に食事を楽しみたいところですな」
(シエルが王様と食事……くくっ、馬鹿みたいに張している姿が目に浮かぶな)
どうせカチコチになっていつもの大食いも控えめになることだろう。そう思うと、そのような機會があったら一緒するのも悪くないと思ってしまう。
「……それではロードさ……ロード殿。何かあったならばすぐさま私達の元に連絡を……お気をつけて」
「ああ、それじゃあ王様も気をつけてな。何か手伝えることがあるなら、何でも言ってくれ。俺の出來る限りのことなら聞こう」
「ロード殿のご助力があるならば、何も怖くはないですな」
エルドは頼もしいとばかりに笑い、最後に二人で握手をして別れた。
ロードが居なくなってエルドも自室に戻ろうと振り返ると、メイド長が何かを言いたげに見ている。
「どうした?」
「エルド様……先程の無禮な者は一……」
「私の……いや、我らの王となるであろうお方だ」
「…………は?」
エルドの言葉で更に訳が分からなくなったメイド長とメイド達は訝しげにエルドを見つめる。 そんなメイド長の顔を初めて見たエルドは良いものを見れたと満足して笑いながら一言。
「魔剣祭や闘技會が今から楽しみだ」
◆◇◆
家に帰ったロードを待ち構えていたのはしい家族のような仲間とメイド……ではなく、青筋をピクピクさせながら仁王立ちしている吸姫だった。
「……何か言いたいことは?」
「えーと……ただいま?」
「――おかえりまさい!」
挨拶返しと共に帰ってきたのは一発の銃聲。凄まじく速い抜き撃ちだったが、ロードはそれを軽く避けてから後ろを見る。
「あーあ……床に空いたじゃねぇか。しは考えて撃てよ」
「ロードが避けなければ済んだ話よ」
「いやいや無理だろ。お前の弾丸って地味に痛いんだぞ」
「普通なら痛いで済む話じゃないんだけど……」
シエルの弾丸は巨大な巖でも簡単に砕するほどの威力を持っているのだが、それを地味に痛いと言うロードに呆れるしかないシエルとメイド二人。
その後、風呂にり疲れを多は癒やしたロードは遅めの夕食を取り、リビングで特に何をするでもない暇な時間を過ごしていた。
(父さんや母さんが生きてるかも、か。そう信じたいが現実は簡単じゃない……が、たまには親を信じてみるか)
幸いなことにエルド達も探すのに助力してくれると言ってくれた。國の捜索力ならロードよりも探せる範囲は拡大されるだろう。 それならば捜索はエルド達に任せて、自分は他のことに集中したほうが良いだろうと切り替える。
ロードのやること。それは、魔剣祭と闘技會に向けて力の調整を確実にすること。そして、謎の仮面の男への警戒。
力の調整については闘技會なら強い相手もいると考えてレベル3からレベル6あたりで十分なのだろうが、魔剣祭に関してはそうはいかない。生徒の中には中途半端に強い相手はいるが、それもきわめて數だ。殘りの大半はレベル1でも圧勝出來る程度の強さを持った生徒しかいない。
エルド達がお忍びで遊びに來る時には本気を一瞬だけ見せると言ってしまったが、下手をしたら相手は死ぬかもしれないので攻撃は避けようと心に決めたロード。もし、相手がシエルとかならば本気で戦っても問題はないだろうがブロックが違うので當たることは無い。
「闘技會にシエルと當たらねぇかな……」
その場にシエルが居たなら全力で拒否するであろうことを呟きながら深くため息をつく。
久しぶりに全力で長時間戦いたいと思いながら次の仮面の男の警戒はどうするか考えていると、ロード以外誰もいないリビングに靜かな足音を鳴らしてってくる人影が。 二階でシエルと話をしていたアイだ。
「ロード様。シエル様がおやすみになりました。……それにマイも」
「ああ、お疲れさん。アイももう休んで……っと、その前に紅茶いれてもらえるか?」
「かしこまりました。々お待ちを……」
軽くお辭儀をして臺所へ去っていくアイ。
アイは生活には慣れたようだが、的にはまだ一歩引いているじがする。そのためあまり笑った姿を見ていないロード。メイドとしては正解なのかもしれないが、もうしを出して笑ってくれれば可いだろうと素直に思ってしまう。 それを引いても十分人なので忠実なメイドというのも悪くないが、ロードも元は一般人なので口には出してないが何故か申し訳なくなってくる。
そして、自分のせいで危ないことに巻き込んでしまうというのも申し訳なく思う。 仮面の男はロードを憎んでいる。理由はロードでも分からないが、負のはロードだけではなくロードの周りの者まで巻き込んでいく。
アイもマイもエルフ族なのである程度の魔法を使えるのでそれなりに戦えるが、相手はふざけた態度とは裏腹にロードの竜眼でようやく知出來るほどの潛伏能力を持っている。そうなると実力も相當なものと考えるのが妥當だ。
なら警戒するように言っておくのが良いのか? それでは心配させてしまうのではないか? しかし、知らないよりは知っておいたほうがのためになるので言っておこうか迷っているうちにアイが紅茶をロードの前に出してくれる。
「どうしたのですか? 何か深く考えごとをしていたように見えましたが……」
「そうだな。実は…………」
迷ってても仕方無い。そう思い、アイに仮面の男について話す。 し前に自分に対して攻撃的なのでを突きつけてきた仮面の男がいること。ロードの予想では相當な実力を持ち、ロードの周りにも影響が起きるかもしれないので警戒してほしい。 だが常に気を配ると神的に疲れるので気をおいすぎないように注意もしておく。
「…………そんなことが……分かりました。せめて自分のを守れる程度に警戒するようにしておきます」
「それと、出來ればマイ、ミイ、マインにもこのことは軽めに言っておいてもらえると助かる。まだいから俺が言うと余計に警戒するかもしれないからな」
「かしこまりました。……シエル様には?」
「あー……シエルは大丈夫だろ。あいつの勘は天才的だからな」
(アホだけど)「アホだけど」
「……心と本音が同時に出てますよ」
「気のせいだ。……うっし、それじゃあ俺も寢る。おやすみ」
「はい。おやすみなさいロード様」
とりあえずは一応警戒させとくことは出來たのでひとまず安心だろう。あとはただ機會を待つのみなのでロードも難しいことは考えずに魔剣祭のことだけを考えることにする。萬が一負けるということがあったら闘技會で戦うのを楽しみに待ってくれているシエル達に申し訳ない。
そして、各々が準備を進めて數日が経ち、待ちに待った魔剣祭の開催日となった。
【書籍化】雑草聖女の逃亡~出自を馬鹿にされ殺されかけたので隣國に亡命します~【コミカライズ】
★2022.7.19 書籍化・コミカライズが決まりました★ 【短めのあらすじ】平民の孤児出身という事で能力は高いが馬鹿にされてきた聖女が、討伐遠征の最中により強い能力を持つ貴族出身の聖女に疎まれて殺されかけ、討伐に參加していた傭兵の青年(実は隣國の魔術師)に助けられて夫婦を偽裝して亡命するお話。 【長めのあらすじ】高い治癒能力から第二王子の有力な妃候補と目されているマイアは平民の孤児という出自から陰口を叩かれてきた。また、貴族のマナーや言葉遣いがなかなか身につかないマイアに対する第二王子の視線は冷たい。そんな彼女の狀況は、毎年恒例の魔蟲の遠征討伐に參加中に、より強い治癒能力を持つ大貴族出身の聖女ティアラが現れたことで一変する。第二王子に戀するティアラに疎まれ、彼女の信奉者によって殺されかけたマイアは討伐に參加していた傭兵の青年(実は隣國出身の魔術師で諜報員)に助けられ、彼の祖國である隣國への亡命を決意する。平民出身雑草聖女と身體強化魔術の使い手で物理で戦う魔術師の青年が夫婦と偽り旅をする中でゆっくりと距離を詰めていくお話。舞臺は魔力の源たる月から放たれる魔素により、巨大な蟲が跋扈する中世的な異世界です。
8 195【書籍化】絶滅したはずの希少種エルフが奴隷として売られていたので、娘にすることにした。【コミカライズ】
【書籍化&コミカライズが決定しました】 10年前、帝都の魔法學校を首席で卒業した【帝都で最も優れた魔法使い】ヴァイス・フレンベルグは卒業と同時に帝都を飛び出し、消息を絶った。 ヴァイスはある日、悪人しか住んでいないという【悪人の街ゼニス】で絶滅したはずの希少種【ハイエルフ】の少女が奴隷として売られているのを目撃する。 ヴァイスはその少女にリリィと名付け、娘にすることにした。 リリィを育てていくうちに、ヴァイスはリリィ大好き無自覚バカ親になっていた。 こうして自分を悪人だと思い込んでいるヴァイスの溺愛育児生活が始まった。 ■カクヨムで総合日間1位、週間1位になりました!■
8 63虐げられた奴隷、敵地の天使なお嬢様に拾われる ~奴隷として命令に従っていただけなのに、知らないうちに最強の魔術師になっていたようです~【書籍化決定】
※おかげさまで書籍化決定しました! ありがとうございます! アメツはクラビル伯爵の奴隷として日々を過ごしていた。 主人はアメツに対し、無理難題な命令を下しては、できなければ契約魔術による激痛を與えていた。 そんな激痛から逃れようと、どんな命令でもこなせるようにアメツは魔術の開発に費やしていた。 そんなある日、主人から「隣國のある貴族を暗殺しろ」という命令を下させる。 アメツは忠実に命令をこなそうと屋敷に忍び込み、暗殺対象のティルミを殺そうとした。 けれど、ティルミによってアメツの運命は大きく変わることになる。 「決めた。あなた、私の物になりなさい!」という言葉によって。 その日から、アメツとティルミお嬢様の甘々な生活が始まることになった。
8 128お姫様は自由気ままに過ごしたい ~理想的な異世界ライフを送るための能力活用法~
人間領最大の國、ウンゲテューム王國。その王女である、ザブリェット・フォン・ウンゲテュームは退屈な毎日を過ごしていた。 ザブリェットが普通のお姫様なら、お家のためにというのだろうが、彼女は転生者。 前世、來棲天戀として生きていたとき、自由気ままに、好きなことだけをやり続けたちょっぴりおかしい女の子。 馬鹿だ、異常者だと罵られながらも、『面白い』のためだけに生きていた記憶を持つザブリェットにとって、人間領での生活は非常に退屈なもの。いくら祝福としてチート能力があったところで満足することができない毎日。 ある日、魔王と名乗る男が現れて、王國から誘拐してくれると言った。某ゲームみたいなお姫様誘拐シーン。だけど、ザブリェットに希望に満ちたものだった。縛られた生活から開放される。それだけで魔王の話に乗る価値がある。 だけど、待っていたのはボロボロっぽい魔王城と膨大な畑。自由に動けても何もない魔國領。 「……こうなったら自分で作るしかない」 そう決意したザブリェットはとりあえず、寢具から作ろうと駆け出した! 果たして、キチガイ系異常少女ザブリェットの自分勝手な行動で、まともにものづくりが出來るのか! そもそも材料は……現地調達? 使えないチート級の能力を駆使して、『面白い』を満喫するためのものづくり生活が始まる! ****** アルファポリス様にも掲載しております。
8 70光輝の一等星
100年前の核戦爭により、人類が地下で暮らさなければならなくなった世界。幼くして親をなくした少女、飛鷲涼は七夕の日、琴織聖と名乗る少女と出合い、地下世界の、そして、涼自身の隠された血統の秘密に向き合っていく。涼を結びつける宿命の糸は一體どこに繋がっているのか……? 失うものが多すぎる世界の中で、傷つきながらも明日に向かって輝き続ける少年少女たちの物語。 (注意點)①最新話以外は管理を簡単にするため、まとめているので、1話がかなり長くなっている作品です。長すぎ嫌という人は最新の幕から読んでいただければ良いかと(一応、気を付けて書いていますが、話のなかの用語や狀況が多少わかりにくいかもしれません)。 ②視點の変更が幕によって変わります。 ③幕によりますが、男性視點が出てきます。
8 177貧乏だけど、ハイスペックです!
12月24日。 クリスマス・イヴの夜。 あたりは幸せそうなカップルたちがイルミネーションを見にやってきている。 そんな中、僕は1人ボロボロだけどあったかいコートを著て路上を歩く。 お腹空きすぎてもう歩く気力もない。 あぁ、神様、どうか助けてください。 僕はこれからどうすればいいんですか? そんな最中、 「こんな寒いイヴの夜にどうしたんだ?お前は」 僕と同じくらいの歳の一人の女の子と出會った。 これは、そんな何気ない出會いから始まる奇跡の物語。 ⚠️初投稿作品でございます。 どうぞよろしくお願いいたします! 更新日が最新でないのは、投稿を予約した日が更新日となるからです。 エタっているわけではありませんし、サボっているわけでもありません。 毎週水曜18時更新です! すみません! 5話から、語り方や行間に変化がありますが、どうかお気になさらぬよう、ご理解ご協力のほどお願いいたします。
8 78