《捻くれ者の俺は異世界を生き抜く》9.アルデラの森
ぼんやりと、遠くから聲が聞こえる。
「……さま……ユウ様!」
の聲で目を開けた。窓から突き刺すようにってくるに目を細め、ぼやけた視界で橫を見る。
「ユウ様!起きてください、遅刻してしまいますよ!」
隣で困り顔のソフィアが俺のを揺さぶっていた。自室の壁に付いている時計に目をやると、針が七時四十分を指していた。
今日は特別訓練の日で、朝から城外へ出ると昨日ベルザムが言っていた。集合時間は確か八時だったはず。のんびりとしていて間に合いそうな時間ではない。
〈超回復〉というスキルを手にしてからというもの寢付きが悪かったのだが、近頃はすこぶる寢付きがいいのでつい寢坊が増える。
「ソフィア、いつも起こしてくれてありがと。ソフィアみたいな可い子が起こしてくれると、寢覚めが良くて助かるよ」
「ふぇっあそ、そそそそんなっ、メイドとしてととと當然のことをしたまででっ」
ソフィアは反応が面白いのでつい大袈裟に言ってしまう。しかしソフィアはドジだがなのは確かだ。それに、謝しているのは本當のことだ。
「それより早く著替えて行かなくちゃ」
俺が服をぎ始めると、
「ま待ってください、今出ていきますから――きゃあっ」
ソフィアは慌てふためき盛大にすっ転ぶ。相変わらずのドジっ子メイドだ。
迷路の如くり組んだ城を駆け抜けて、ようやく外の城門前広場にたどり著いた。遠くには既に馬車が止めてあって、その周辺で一神達が手を振っていた。
「ユウ――!」
すぐに駆けつけて「遅れてごめん」と一言謝罪をれる。
「全く、時間ギリギリだぞ。夜更かしでもしていたのか」
規律や約束事に厳しいベルザムは腕を組んでそう言った。
「す、すみません」
「まあいいじゃないベルザム、ユウも時間には間に合ったんだし」
アリスはベルザムを宥めた。彼が言うのならと、ベルザムもそれ以上何も言うことは無い。
この世界に來てから一ヶ月と二週間という月日が流れた訳だが、あのパーティーでの一件以來アリスは俺をユウと名前で呼ぶようになり、俺に対する態度もより一層親さを増していた。
そして俺もまた、アリスに対する向き合い方が大きく変わった。アリスだけでは無い。一神や星野、村に桐山、それ以外の人間に対してもまた見方が変わったように思う。見方が変われば見えてくるものがいくつもあった。
そりゃ今でも人を完全に信用するのは怖いと思う部分があるが、しかし彼らは俺の知っている人間達とは明確に違う。この世界に來てそう思わせてくれた。
「さて、時間もないし早く出よう。みんな、馬車に乗ってくれ」
ベルザムに言われ全員が馬車に乗り込んだ。
用意されていた馬車は嫌な派手さは無く八人ほど乗れる広さがあり、先頭に白い並みの馬二頭が繋がれていた。
「馬車なんて初めて、お姫様になったみたい……!」
星野が目を輝かせている。
確かに普通に生活していれば馬車に乗る機會などそうそう無い。浮かれる気持ちもわからなくはない。
しすると兵士たちが城の門を開き始め、開ききったところで馬車がゆっくりとき始めた。
「行ってらっしゃいませ」と大きくお辭儀する兵士たちを背に、馬車は速度をまして場外へと進出した。
フェルマニア城は高臺の上に聳え立ち、その周囲を円狀に囲むように巨大な街が形されている。馬車で城下町へと降りるには城から街へと繋がる巨大な螺旋狀の道を下っていく必要がある。その際に馬車からこの街全を一出來る訳だ。
「すっごーい!」
「お城からは高い壁に囲まれてたせいで見えなかったけど、こんなに大きな街だったんだ……!」
星野と村が黃い聲を上げている。地球にいてもこの絶景はなかなか見られるものでは無い。
全的に赤と白を基調とした建が多く見える。ここからだと豆粒程度だが馬車や人の通行も見て取れた。しかし街中からキラキラとが反している通路がある。
「あのってるのって」
「あれは水路です」
俺が呟くと、隣でアリスが答えてくれた。街中には街全を循環している水路があるのだとか。水聖石と呼ばれる、魔力を與えることで聖水を生み出し続ける石を使い街全に行き渡らせている。
聖水は周囲の空間の汚染を浄化しつつ弱い魔を寄せ付けない効果があるようだ。街を綺麗に、かつ安全に保つ為に取りれられたものらしい。
「他に、王都全を囲む壁にも魔よけの魔道が幾つも設置されてるんです」
アリスは得意気な顔で教えてくれた。外には魔がいると聞いていたのでどうやって生活しているのか気になっていたが、々と工夫を凝らしているようだ。
そうこうしているとあとしで馬車が街へ降り立つという所まで來た。
「さて、そろそろ顔を出すのは控えてくれ」
ベルザムが言うので窓から顔を引き、カーテンを閉める。これで中からは勿論、外からも車が見えない狀態になった。
「悪いな、勇者がこの地に召喚されたことは一般市民にはまだ公になっていない。混を避けるためにも今はを隠してくれ」
という事らしいので、せっかくだが王都見學はお預けだ。またいずれじっくりと見て回りたい。
しばらく進むと馬車の揺れがし大きくなった。揺られている覚で、地面が舗裝された道から砂利道に変わったのが何となくわかる。一神も気がついたようで、ベルザムの顔を見た。
「もしかして」
「ああ、たった今王都を出た」
星野がカーテンをしだけ捲った。その隙間から見えた景は、風に揺られる青く広大な草原だった。先程の街並みもそうだが、今にも冒険が始まりそうないかにも分かりやすい景を目の當たりにすると、自分たちは本當に別の世界に來たのだと実させられる。みなも見なれぬ景にし圧倒されていた。
「そう言えば、今どこへ向かっているんですか?」
ふと一神が尋ねた。みなが気になっていたことだ。まだベルザムからは王都の外へ出て訓練するとしか聞いていない。
「今向かっているのはアルデラの森だ」
「アルデラの森……?」
「アルデラの森と呼ばれる、標高四百メートル程の小さな活火山だ。お前達にはそこでレベルアップ訓練をしてもらう」
「レベルアップ……」
既に授業で習ったことだ。
この世界の生は、他の生を殺しその魂をに吸収することによってレベルアップする。レベルアップした者は大幅な長を遂げ、以前とは比べにならない程に強く強靭なへと進化を遂げる。これはこの世界における全ての生に適用された理なのだ。
要は敵を倒してレベルを上げると強くなる。正にゲームの様なシステムが現実で適用されている訳だ。この世界を設計した神は良い趣味を持っている。
しかしこのルールだと、當然自分のレベルアップの為に人間が人間を殺して回るような悪逆非道な連中が現れるのではと思うだろう。しかし有難いことに人間が人間を殺してもレベルは上がらない、ということは大昔から世界共通の事実だ。街を歩いていて、レベルアップ目的で殺傷されることだけは無いらしい。
因みに、倒した敵の個レベルが高ければ高いほど吸収出來る魂の質は向上する。つまり早くレベルアップ出來るというわけだ。
「あの、てことは僕達これから魔を倒しに行くんですか?」
「ああそうだ。しかし魔と言ってもお前達からしたら雑魚同然だろうがな。火山が噴火でもしない限り危険はない」
一神の問にベルザムは笑って答えるが、その「お前達」とやらに俺もっているのか不安なところである。これまでの一ヶ月訓練である程度まともに戦えるようになったつもりではいるが、いきなり怪と実踐だなんて正直一般人の俺からすると荷が重い。
俺がし不安に思っていると、腕を組んでこちらを睨んでいた桐山と目が合った。
「おい、お前はちゃんと戦えるんだろうな?」
桐山はぶっきらぼうに聞いてきた。それを見て相変わらずだなあと思いつつも、その姿にどこかまで見えて俺は笑った。
「さあ、戦えるかどうかはちょっと分かんないな。俺弱いし」
「ふん、足手まといにはなるなよ」
桐山はそっぽを向く。
しかし一神がニヤついた表で、
「そんなこと言って、桐山はユウのこと心配してるんだろ?ほんと良い奴だな!」
みんな分かっているがあえて口に出さないことを、一神は躊躇なく桐山に言ってしまった。
「なっ、バカ言うなっ!俺はただ……足手まといを助けてる余裕なんかねぇって言いたかっただけだ!」
「でも余裕があれば助けちゃうんだ?」
「ぐっ、」
流れに乗るように星野がとどめを刺す。桐山は俯いて何も言わなくなってしまった。
みんなが擽ったそうに笑った。
桐山大河という人間は、聞いていた噂ほど悪いやつじゃなかった。と言うか良い奴だ。態度は無想で、つい突き放す様な言い方をするが、実は誰よりも仲間のことを常に気にかけている。それが分かってからは早かった。みなが彼に歩み寄り、彼もまた俺達へ近づこうとしてくれていた。あの村でさえ、今では桐山としの會話くらいは出來るようになっている。
「でも心配するなよ、ユウは僕が絶対に守るから。だって僕達は、友達だからな!」
「汰……」
一神は眩しい笑顔で言った。
まったく、小っ恥ずかしいことを平然と言ってのける奴だと思う。だがそれが一神の良さであり、人を惹きつける理由なのだろう。本心からの言葉だと分かるから憎めない。勇敢で仲間思いで正義の強い、正に勇者と呼ぶに相応しい人間だと思う。
「ユ、ユウ私もっ!私もユウを守ります!だから安心してくださいね!」
何故か張り合うようにアリスが隣から出てきた。気持ちは嬉しいのだが、正直の子に絶対守ると宣言されるのもちょっと恥ずかしい。
「あ、ありがとアリス」
「いえ!」
アリスは満足気だ。
そうこうしていると、突然ベルザムが窓のカーテンを開いた。
「見えてきたようだな、あれがアルデラの森だ」
揺れる窓からは、頂上部から薄ら白い煙を上げる小さな山が見えていた。
【書籍化】厳つい顔で兇悪騎士団長と恐れられる公爵様の最後の婚活相手は社交界の幻の花でした
舊タイトル【兇悪騎士団長と言われている厳つい顔の公爵様に婚活終了のお知らせ〜お相手は社交界の幻の花〜】 王の側近であり、騎士団長にして公爵家當主のヴァレリオは、傷痕のあるその厳つい顔から兇悪騎士団長と呼ばれ、高い地位とは裏腹に嫁探しに難航していた。 打診をしては斷られ、顔合わせにさえ進むことのないある日、執事のフィリオが発した悪気のない一言に、ついにヴァレリオの心が折れる。 これ以上、自分で選んだ相手に斷られて傷つきたくない……という理由で、フィリオに候補選びを一任すると、すぐに次の顔合わせ相手が決まった。 その相手は社交界で幻の花と呼ばれているご令嬢。美しく引く手數多のはずのご令嬢は嫁ぎ遅れに差し掛かった22歳なのにまだ婚約者もいない。 それには、何か秘密があるようで……。 なろう版と書籍の內容は同じではありません。
8 81剣聖の幼馴染がパワハラで俺につらく當たるので、絶縁して辺境で魔剣士として出直すことにした。(WEB版)【書籍化&コミカライズ化】【本編・外伝完結済】
※書籍版全五巻発売中(完結しました) シリーズ累計15萬部ありがとうございます! ※コミカライズの原作はMノベルス様から発売されている書籍版となっております。WEB版とは展開が違いますのでお間違えないように。 ※コミカライズ、マンガがうがう様、がうがうモンスター様、ニコニコ靜畫で配信開始いたしました。 ※コミカライズ第3巻モンスターコミックス様より発売中です。 ※本編・外伝完結しました。 ※WEB版と書籍版はけっこう內容が違いますのでよろしくお願いします。 同じ年で一緒に育って、一緒に冒険者になった、戀人で幼馴染であるアルフィーネからのパワハラがつらい。 絶世の美女であり、剣聖の稱號を持つ彼女は剣の女神と言われるほどの有名人であり、その功績が認められ王國から騎士として認められ貴族になったできる女であった。 一方、俺はそのできる女アルフィーネの付屬物として扱われ、彼女から浴びせられる罵詈雑言、パワハラ発言の數々で冒険者として、男として、人としての尊厳を失い、戀人とは名ばかりの世話係の地位に甘んじて日々を過ごしていた。 けれど、そんな日々も変化が訪れる。 王國の騎士として忙しくなったアルフィーネが冒険に出られなくなることが多くなり、俺は一人で依頼を受けることが増え、失っていた尊厳を取り戻していったのだ。 それでやっと自分の置かれている狀況が異常であると自覚できた。 そして、俺は自分を取り戻すため、パワハラを繰り返す彼女を捨てる決意をした。 それまでにもらった裝備一式のほか、冒険者になった時にお互いに贈った剣を彼女に突き返すと別れを告げ、足早にその場を立ち去った 俺の人生これからは辺境で名も容姿も変え自由気ままに生きよう。 そう決意した途端、何もかも上手くいくようになり、気づけば俺は周囲の人々から賞賛を浴びて、辺境一の大冒険者になっていた。 しかも、辺境伯の令嬢で冒険者をしていた女の人からの求婚もされる始末。 ※カクヨム様、ハーメルン様にも転載してます。 ※舊題 剣聖の幼馴染がパワハラで俺につらく當たるので、絶縁して辺境で出直すことにした。
8 123サブキャラですが世界と戦います
2222年に10000人中1999人の高校生に能力が発癥した。 その能力は様々であるがその三年後、いち早く適応したのは日本だった。 主人公ムラサキとその親友アオは自らの能力と立場から己を「サブキャラ」としている。 しかし、能力の発癥が遅かった2人は世界の殘酷さを知っている。 これは何気に強い2人がなんやかんやで政府(そして世界)に立ち向かっている行く恐らくサブキャラ?の話である。
8 78異世界召喚!?ゲーム気分で目指すはスローライフ~加減知らずと幼馴染の異世界生活~
森谷悠人は幼馴染の上川舞香と共にクラスごと異世界に召喚されてしまう。 召喚された異世界で勇者として魔王を討伐することを依頼されるがひっそりと王城を抜け出し、固有能力と恩恵《ギフト》を使って異世界でスローライフをおくることを決意する。 「気の赴くままに生きていきたい」 しかし、そんな彼の願いは通じず面倒事に巻き込まれていく。 「せめて異世界くらい自由にさせてくれ!!」 12月、1月は不定期更新となりますが、週に1回更新はするつもりです。 現在改稿中なので、書き方が所々変わっています。ご了承ください。 サブタイトル付けました。
8 143スキルイータ
俺は、どうやら死んでしまうようだ。 ”ようだ”と言ったのは、狀況がよくわからないからだ、時間が止まっている? 會社のメンバーと、打ち上げをやった、その後、數名と俺が行きつけにしているバーに顔をだした。デスマ進行を知っているマスターは、何も言わないで、俺が好きな”ギムレット”を出してくれる。 2杯目は、”ハンター”にした、いつものメンバーできているので、話すこともなく、自分たちが飲みたい物をオーダした。 30分程度で店を出る。支払いは、デポジットで足りるというサインが出ている。少なくなってきているのだろう事を想定して、3枚ほど財布から取り出して、店を出る。雑踏を嫌って、裏路地を歩いて、一駅前の駅に向かった。 電車を待つ間、仲間と他愛もない話をする。 異世界に転生したら、どんなスキルをもらうか?そんな話をしながら、電車が來るのを待っていた。 ”ドン!” この音を最後に、俺の生活は一変する。 |異世界《レヴィラン》に転移した。転生でなかったのには理由があるが、もはやどうでもいい。 現在、途方にくれている。 ”神!見て笑っているのだろう?ここはどこだ!” 異世界の、草原に放り出されている。かろうじて服は著ているが、現地に合わせた服なのだろう。スキルも約束通りになっている。だが、それだけだ。世界の説明は簡単に受けた。 いきなりハードプレイか?いい度胸しているよな? 俺の|異世界《レヴィラン》生活がスタートした。
8 127異世界は今日も平和(個人的見解)なので、喫茶店を経営します
異世界転生特典でゲットした能力は3つ ①冷蔵・冷凍機能付きシェルター ②倒した敵の能力を吸収できる包丁 ③売り上げに応じて敷地が増える移動可能な喫茶店 ちょっと魔王とかいるけど、この能力を使って、世界一の喫茶店、目指します _______________________ ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 【創作ポータルサイト】 http://memorand.html.xdomain.jp/kenkai.html 簡単ですがキャラ紹介などアリマス _______________________ ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
8 153