《悪役令嬢は麗しの貴公子》# 閑話 side ニコラス
 
 僕の名はニコラス・ルビリアン。先日、ルビリアン公爵家に養子として引き取られた。
 ルビリアン公爵には、僕より1つ年上の息子がいる。僕と同じ銀髪で、寶石みたいな銀の瞳を持つすごく綺麗でお釈迦に出てくる王子様みたいな子ども。
 纏っている空気も全然違って、中途半端な僕とは正反対。まさに、雲の上の存在だ。
 前にいた屋敷では、娼婦の子どもという烙印をおされ、使用人からも好奇な目で見られた。だからどうせ今回も一緒だ。
 ーーそう、思っていたんだ。
 彼、ロザリー・ルビリアンは僕がこれまで出會ってきた人達とは違う不思議な人だった。
「例えニコラスが誰の子どもだろうと、君は君でしょう?」 
 
 僕が娼婦の子どもだと言った時も、それがどうしたと言わんばかりの顔をされた。それどころか、僕の頭をでたり泣き出した僕を抱きしめてくれた。
 そんな風に接してくれた人は生まれて初めてで、この人を信じてみたいと思った。
 
 「ニコ、今日はし時間が空いたから庭園で一緒にお茶でもどう?」
 
 僕がルビリアン公爵家に來てから數日間たった今も、兄上は変わらず僕に優しく接してくれている。
 「はい兄上、是非!」
 「良かった。マーサが庭園でお茶の準備をしてくれているから一緒に行こう」
 兄上は次期當主となるため、いつも忙しくしていることが多いが、たまに時間が空いた時は必ずと言っていい程僕と一緒に過ごしてくれる。
 それが嬉しくて、一緒に居れる時はたくさん兄上に甘えてしまうが、兄上は嫌がるどころかもっと甘えさせてくれる。
 「坊っちゃま方、お茶をお持ちしました」
 庭園に著くと、見計らった様にマーサがティーセットを持って現れ、同時にふわりとお茶のいい香りがした。
 「ありがとう、マーサ。今日はダージリンかな?」 
「はい、ちょうど朝摘みファーストフレッシュが手にりましたので」
 香りだけでお茶の種類が分かるなんて兄上は流石だと思う。
 「兄上は、ダージリンが好きなのですか?」
 
 「味しいお茶はなんでも好きだよ」
 「ニコラス坊っちゃま。ロザリー坊っちゃまのお気にりは、ミルクたっぷりのアッサムティーでございますよ」
 マーサは、僕の耳元でそっと教えてくれた。確かに、兄上がお茶をしている所を通るといつもいい香りがしたが、あれはアッサムティーの香りだったのか。
 「ニコ、どうしたの?」
 僕が1人で納得していると、兄上が不思議そうに聞いてきた。
 「兄上は、アッサムティーをいつも飲んでおられるので、今度一緒にお茶をする時はアッサムティーが飲みたいな、と」
  「じゃぁ、その時の為に味しいアッサムを買ってくるよ」
 「何処かへ行かれるのですか?」
 「あぁ。今度、父上の仕事の手伝いで外長のツィアーニ侯爵とお會いすることになってね」
 ただでさえ忙しい日々を送っているのに、最近では父上の仕事の手伝いまで始めているなんて...。兄上は一、いつ寢ているんだろうか。
  『ニコラス、私には1人息子がいてね。あの子をお前に支えてもらいたい。』
 僕は初めてルビリアン公爵家ここに來た時、父上に好きなだけ教養を學ばせてもらえる代わりに1つ條件を出された。
 それを聞いた時は、そいつの駒にされるのかと思って嫌だったが、今では父上の言うように早く兄上を支えられるようになりたい。
 勉強は勿論やってるけど、まだまだ兄上には程遠い。だからーーー
 「兄上、僕も兄上と一緒に行きたいです」
 しでも兄上に近づく為に、僕は必死だった。兄上は、一瞬目を丸くしたがすぐに微笑んで僕の頭にそっと手を置いた。
「ニコが一緒なら心強いよ。今夜、一緒に父上にお願いしてみようか」
 「っ! ありがとう、兄上!」
 兄上と一緒。それが嬉しくて、僕は思い切り兄上に抱きついた。兄上は、そんな僕をしっかり両手で抱き留めてくれる。
 「ふふ、最近のニコは甘えん坊さんだね」
 「...だって、兄上が初めてだったから。」
 「何が?」
 「娼婦の子どもだとか関係なく、『僕』を見てくれたのは兄上が初めてだったから。だから、僕も兄上を支えたいんです」
 し照れくさくて俯いてしまったため、兄上がどんな顔をしているのか分からなかったが、クスリと笑った聲がした。
 「私は幸運だね。可い弟と期待できる將來の部下を同時に持てたのだから」
 「なら、期待に添えられるように進しないとですね!」
 2人で微笑みあっていたら、ずっと後に控えていたマーサが聲をかけてきた。
 「坊っちゃま方。仲睦まじいのはたいへん結構ですが、そろそろ中へられませんと風邪をひきますよ」
 気づけば、空には薄らと茜が混ざっていた。兄上との楽しいお茶會は、いつもあっという間に終わってしまう。
 きっと、この後兄上は自室に戻ってまた勉強をし始めるのだろう。そうなれば邪魔はできない。
 それがし寂しくて、兄上の服の裾をキュッと握る。それに気づいた兄上は、そっと僕と手を繋いでくれた。
 「ニコ、続きは中で話そうか」
 「いいのですか、兄上?」
 「いいよ、ほらおいで。今日は父上が帰ってくるまで一緒にいよう」
 そうして、繋いだ僕の手を優しく引いてくれる。
 今は無理でも、いつかただ手を引かれるだけではなく、兄上の隣でその背を支えられたなら。
 そんな思いをに、僕は繋いでいる手に力を込めて笑う。
 「はい、兄上!」
 
 すっかりお兄ちゃん子のニコラスですね。
 お気にり登録して下さった皆様、ありがとう座います*_ _)
 次回もよろしくお願いします!
妖刀使いがチートスキルをもって異世界放浪 ~生まれ持ったチートは最強!!~
あらすじ:主人公の両親は事故によって死んだ。主人公は月影家に引き取られそこで剣の腕を磨いた。だがある日、謎の聲によって両親の事故が意図的に行われたことを教えられる。 主人公は修行を続け、復讐のために道を踏み外しそうになった主人公は義父によって殺される。 死んだはずの主人公を待っていたのは、へんてこな神様だった。生まれながらにして黙示録というチートスキルを持っていた主人公は神様によって、異世界へと転移する。そこは魔物や魔法ありのファンタジー世界だった。そんな世界を主人公は黙示録と妖刀をもって冒険する。ただ、主人公が生まれ持ったチートは黙示録だけではなかった。 ※★星がついている場所には挿絵があります! アルファポリスで重投稿してます。
8 198不老不死とは私のことです
うっかり拾い食いした金のリンゴのせいで不老不死になってしまった少女、羽鳥雀(15歳)。 首の骨を折っても死なず、100年経っても多分老いない彼女が目指すは、不労所得を得て毎日ぐーたら過ごすこと。 そんな彼女は、ラスボス級邪龍さんに付きまとわれながらも、文字通り死ぬ気で、健気に毎日を生きていきます。 ※明るく楽しく不謹慎なホラー要素と、微妙な戀愛要素を盛り込む事を目指してます。 ※主人公とその他アクの強い登場人物の交遊録的なものなので、世界救ったりみたいな壯大なテーマはありません。軽い気持ちで読んでください。 ※魔法のiらんど様に掲載中のものを加筆修正しています。
8 64異能がある世界で無能は最強を目指す!
異能がある世界で無能の少年は覚醒する
8 84お姫様は自由気ままに過ごしたい ~理想的な異世界ライフを送るための能力活用法~
人間領最大の國、ウンゲテューム王國。その王女である、ザブリェット・フォン・ウンゲテュームは退屈な毎日を過ごしていた。 ザブリェットが普通のお姫様なら、お家のためにというのだろうが、彼女は転生者。 前世、來棲天戀として生きていたとき、自由気ままに、好きなことだけをやり続けたちょっぴりおかしい女の子。 馬鹿だ、異常者だと罵られながらも、『面白い』のためだけに生きていた記憶を持つザブリェットにとって、人間領での生活は非常に退屈なもの。いくら祝福としてチート能力があったところで満足することができない毎日。 ある日、魔王と名乗る男が現れて、王國から誘拐してくれると言った。某ゲームみたいなお姫様誘拐シーン。だけど、ザブリェットに希望に満ちたものだった。縛られた生活から開放される。それだけで魔王の話に乗る価値がある。 だけど、待っていたのはボロボロっぽい魔王城と膨大な畑。自由に動けても何もない魔國領。 「……こうなったら自分で作るしかない」 そう決意したザブリェットはとりあえず、寢具から作ろうと駆け出した! 果たして、キチガイ系異常少女ザブリェットの自分勝手な行動で、まともにものづくりが出來るのか! そもそも材料は……現地調達? 使えないチート級の能力を駆使して、『面白い』を満喫するためのものづくり生活が始まる! ****** アルファポリス様にも掲載しております。
8 70朝、流れ星を見たんだ
天涯孤獨の少年竜也と、病に身體を蝕まれている少年大翔。 大翔の最期を看取ってやりたい竜也だが、大翔の命の期限が迫った時、竜也は一ヶ月間イギリスに行くことになってしまう。 その一ヶ月間、大翔は病に耐え続けられるのか、それとも竜也のいない間にその目を永遠に閉じてしまうのか――――未來は誰にもわからない。
8 80とある亜人の奮闘記
亜人種のみが生息する世界アマニル。 この世界では 陸、海、空 の三大國による爭いが絶えなかった。 最大規模をもつ陸の國(アトラス)に住む少年 ライゴ この少年の物語が今始まる。 初投稿です! 気になるところや問題があったりすれば気軽に教えてください! 時間が空いたら書いてます! これからよろしくお願いします!
8 111