《悪役令嬢は麗しの貴公子》24. 見せかけのお茶會
ーーーリディア・クレインには気を付けた方がいい。
 
 あの日、ヴィー様が言った言葉が頭から離れない。あれは一、どういう意味だろう?
 「ロザリー様とお話出來て、私わたくしとても嬉しゅうございます」
 「こちらこそ。貴のような可憐な方と話せる機會を頂けて栄です」
 「まぁ! 可憐だなんて…」
 私はゲームのシナリオを知っているからリディアを警戒しているが、ヴィー様はそうではない。
 「そ、そう言えば。私わたくし、今日のためにお気にりの茶葉を用意したんですのよ。ロザリー様に飲んでいただきたくて…」
 「私のためにわざわざ用意してくれたのかい? 嬉しいな。是非、頂きたい。あぁでも…」
 まぁ、男爵令嬢が一國の王子にり寄っていることは外聞きが悪い。今はアル様自がリディアを相手にいていない事が周知されているから、周りの貴族達も強く出ていない。
 「? 何か、ありましたか?」
 「出來れば、貴の淹れたお茶が飲みたいな。その方がきっと、より一層味しくなるだろう」
 だが、アル様が萬が一リディアに懐されるような事があれば、貴族達も黙ってはいないだろう。これ幸いと、アル様を、延いてはヴィー様や國王陛下をも批難しかねない。
 恐らくヴィー様は、それを懸念なさっているんだろう。
 「そっ、そうでしょうか? …であれば、私わたくしがお淹れ致しますわ。々お待ちくださいませ」
 
 「ありがとう。楽しみにしているよ」
 リディアがアル様を付け回している事実は、既に學園外に報がれている。他の令嬢達の中にも、リディア・クレインという存在を危懼している者が多數いる。
 ゲーム開始の期間まで一年を切っている現狀。そして、既に各攻略キャラに接しているゲームヒロインの存在。
 ーーーはたして、私は今どうけばいい?
 「お待たせ致しました、ロザリー様。どうぞ、召し上がってくださいませ」
 ーーー私にとって、現狀をどうくのが最善だろうか?
 「あの…、ロザリー様?」
 「! あぁ…、申し訳ない。し思いに耽っていたようだ」
 「いいえ、気にしておりませんわ。思いに耽るロザリー様も、その……素敵でしたから。それより、お茶が冷めてしまいますわ」
 
 「それはいけない。頂こう」
 やはり考え事をしながら會話をするものじゃないな、と差し出されたお茶を口に含みながら反省した。
 
 こちらの様子をチラチラ伺ってる目の前の令嬢に『味しいよ』と笑めば、令嬢は耳まで紅く染め上げた。
 私は今、3年前にアル様から頼まれた婚約者探しの真っ最中だ。學園に學してからというもの、度々こうしてお茶をしながらアル様の婚約者に相応しい令嬢を味している。
 勿論、彼達はこちらの事を知らないし言う気もない。
 「ロザリー様、差し出がましいというのは十分理解しているのですが。何故、私わたくしとお茶を?」
 「ただ、貴と話してみたかった。それでは理由になりませんか?」
 小首を傾げて質問返しをすれば、令嬢は『い、いいえ!』と今度は全を紅させたのだった。
……
 「…で?」
 令嬢とお茶をした日の晩、その報告としてアル様の部屋を訪れた私に、彼は心底嫌そうな顔で出迎えた。
 「ルルーベル・クルチェ伯爵令嬢。彼の父親は、私の父の下で働いています。これまでに、彼自は素行で悪い部分はなく、教養もしっかりしてます。々、夢見がちな所はあるようですが、許容範囲かと」
 「『々』…ねぇ?」
 提出した報告書から視線だけ上げたアル様と目が合う。ジト目で見られ、肩を竦めて苦笑する。
 「蝶よ花よと育てられた令嬢にしては、きちんと現実を見ている方ではないかと」
 「そうだよ、アル。折角、ローズとニコラスが選んでくれているんだからもっと真面目に考えたらどうだい」
 背後のソファーで寛いでいるヴィー様が私に加勢してくれる。
 「裏切ったな、ヴィー」
 「裏切ってないよ。これはアルの為にやっている事なんだから、アルが一番積極的に取り組むべきなのではないかい?」
 正論すぎてぐうの音も出ないアル様は、苦蟲を噛み潰したような顔でため息をついた。
 「さっさと婚約者を決めてしまえば、それこそ何処ぞの野花も靜かになってくれるかもしれないだろう?」
 
 もう一押しだとばかりに、ヴィー様は追撃をする。私もこれ幸いと、ヴィー様に便乗して口を開こうとした、が。
 「お前が……だったら良かったのにな」
 「「え?」」
 聞こえるか聞こえないか程度の音量で呟いたアル様は、何かを求めるような瞳で私を見上げてきた。
 よく聞こえなかった私とヴィー様は、目線だけでもう一度言ってしいことを訴えるが、アル様はそれ以上何も言わなかった。
 ※何処ぞの野花、というのはお察しの通りヒロインのことです(苦笑)
 本日もありがとうございました(´˘`*)
 次回もお楽しみに。
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