《異世界落ちたら古龍と邪龍の戦いに巻き込まれまして・・・》第30話 集まる人々
集まる人々
「初めまして、皇都で『エチゴヤ』という商會を営んでいるミキと申します。一何の為に集められたのか?ってじだと思います。わたしも ここまで 大掛かりなことになってしまうとは思っても見ませんでしたけど。事の起こりは、いまわたしがごやっかいになっている宿、ベルニーニさんの宿のことで気になったことがあったからなんです。」
「「「あぁ~」」」
「ベルさんとこのことなら いくらでも力になるぜ」
「うむ、わたしもベルニーニの宿のことでは すっきりしないことばかりでな。」
「はい、みなさんが仰るとおりです。泊まってみて思ったのですが、料理よし、応対良し、そして 將のベルニーニさんの量よし。なのに なんでわたしが泊まる直前まで お客がいなかったのか?それが 疑問に思ったことです。」
「そして、まぁいろいろありまして「道に迷ってたんだよ、この娘こ」それは 言いっこなしです、こちらの小屋さん、ロビーナさんに お話を伺っているうちに…こんなことになった訳です」
「あぁ~それで?あんたが ベルの宿のことでいろいろ訊きたいことがあるってんで おれたち集まったんだよな」
「いったい、何が訊きたいんだい?」
「はい、マーフィさんには 確認をとったのですが…」そこで、ミキは マーフィに話した容と同じことを彼らに話すのであった。
「…というわけなんです」
「そうだね、あぁ、あたしゃ南區の サウラっていうんだけど その『辭令』だっけ?見た記憶がないねぇ」
「わたしも記憶にないね、北區のノーザンっていうよ、よろしくね。」
「わしは、東區のイーサンちゅうもんじゃ、そこのマーフィとは 腐れ縁じゃ」
「西區のウェスティーニという、同じく見ておらんのぉ」
「改めて中央區のマーフィじゃ、見た記憶も見せられた記憶もない」
「これで、ひとつ 切り崩すことが出來ます、ところで皆さん、今おっしゃったことを 真偽の前でも同じように話すことは出來ますか?宣誓できますか」
「「「なんじゃと」」」
「「なんだって」」
「わしらの言うことを 信じんと言うのかの?」
「いえ、そうじゃないんです。代に シラをきられたときにはっきりと 証言して頂くためなんです。そうでないと 今の代の職を解任させることが出來ないかも知れないんです」
「いま、うちの者が いまの代についていろいろと調べているところなんです。既に 代を追い詰めることが出來るとは思うのですが 事を大げさにしない為には 現行の代職の辭任程度で納めたいわけです。それ以上になると わたしの 一介の商人の手には負えませんので」
「うーん、ふと思ったのじゃが お主、ミキと申したの?何故 そこまでして ベルの宿のことにこだわるのじゃ。」
「…見てしまった以上、気付いてしまった以上 見過ごせない。これが 一番の理由でしょうか。わたしも皇都で店を持つまでに 々あったんです。多くの方の手を煩わせ、いろんな方の力をお借りしたんです。その恩を返そうとしたら 次は あなたが困っている人を見かけたら助けてあげなさいって その方は仰いました。何処の馬の骨とも解らないわたしに それこそ 大切なものを使ってまで助けてくださったその方の恩にしでも報いることが出來るなら わたしは、わたしに出來ることをすべてやりたいって思います。」
「「あんた…」」
「…」
「うむうむ」
「なるほどのう、あいわかった」
「だな、いいぜ 真偽の前だろうと陛下の前だろうと 宣誓してやるぜ」
「「そうよね」」
「まかせときなって」
「「うむ」」
「みなさん、ありがとうございます」
「えっと そちらのあなたは?」
「そうじゃの、コンフィネルと申す、そこのマーフィの前任の町長(まちおさ)をしておった。そして 前任の代は、確かにわしらに『辭令』を見せて 就任の挨拶をしたと証言しよう」
「ありがとうございます、心強い限りです、そして みなさん お集まりくださってありがとうございました。」
「いやいや、わしらもな ベルの宿のことについては、みな気をんでおったのじゃよ」
「それでは、「お母さん、大変、大変なのよ!」」ミキが言葉を続けようとしたところ ツグミが 慌てて飛び込んできた。
「ツグミ、何を、大騒ぎしてるんだい!」
「それどころじゃないのよ、またあの変な奴らが ベルさん所の宿に…」
「なんだって!!」
「どうしたのですか?」
「そうだよ、あんたの店の…あの強面のあんちゃんたちは?」
「きょうは、皆、あの代のことについて調べに出払っているんです」
「こんな時だって言うのに…」
「とりあえず、ベルニーニさんの宿に急ぎましょう」
◇
「おうおう、こんな流行んねぇ宿、いつまでもやってんじゃないよ」
「そうだそうだ、ハンっ!昨日までいた客も、しけた宿だってんで さっさと他の所に移ったんじゃねぇか?」
ガシャン!ベキっ!
「いい加減にしてください、止めてください」
「邪魔だ、邪魔だ、そこをどきやがレ」
「ちょっと…」
「どうやらあの用心棒みたいなやつらはいねぇみたいだな」
「あぁ、ありゃあの若ぇのの護衛だったんかな」
「ふん、かまうこたねぇ。ぶっ壊しちまいナ!」
押しってきたものの一人がちょうど食堂の椅子をつかみ叩き付けようとしたところに、落ち著いた靜止の言葉が聞こえる。同時に
「そこまでにしなさい!」「草縛り」
いきなり両足を縛られた男が倒れる。気付いた悪漢の一人が 聲のした方を振り向く。
「なんだ、てめぇ!」
「おうおう、どうしたんだ」
「はん、おめぇ 何ずっこけてんだよ」
「誰だかしんねぇが 邪魔するってんならおめぇも ぶっ壊しちまうぜ!」
「おい、ちょっと待て。こいつあぁ なかなかの上玉だ。顔を狙うんじゃねぇ」
「頭かしら、こいつあぁ 今朝まで 泊まってたやつですぜ」
「ほぉ、おめぇさん 何の因果かしらねぇが こんな寂れた宿に泊まったのが運の盡きだと思って諦めるんだな」
「まだ泊まってやがったのか!」
「えっと、それで?」
「あん?」
「言いたいことは、それだけですか」
「おめぇ 何言ってんだ!」
「こっちのおれたちの數が わかんねぇわけでもあるめぇ?それとも何かい、お上品なお嬢ちゃんには 俺たちのような人間は 目にらねぇとでもいうのかい」
あっちゃぁ、この押しりの悪漢ども、言ってはいけない臺詞をいっちゃいましたね。
「だ・れ・が、お嬢ちゃんだって?!」
一瞬にして、ベルニーニの宿が 冷気に包まれる。
「「なんだ、なんだ」」
「何が起きてんだ!」
「寒みぃよ!」
「くっそ!誰かが 魔法を使いやがったにちげぇねぇ」
「で、だ・れ・がお嬢ちゃんだって?」
「おめぇ 何言って」
「この旅が始まってから どいつもこいつも人のことを変な目でみてくれて」
「僕は、オ・ト・コなんだよ!!」
たまっていた鬱憤を吐き出すかのようにんだミキは、落ち著いたのか靜かな聲で
「ところで、あなたたち。ここをこんな風に荒らして 一何のつもりでしょう」
冷気は、まだあたりを包んでいるものの 先ほどまでとはちがい 凍てつくような空気は霧散した。調子を取り戻しかけた悪漢ども、その頭
「何のつもりも おれたちゃ、ここの將たちが 出て行きやすいように心殘りの容にぶっ壊してやってんだよ」
「そんなこと、誰も頼んでいませんッ!」
「だ、そうだけど」
「さぁてな、おれたちゃ しらねぇなぁ」
「そうですか、それならその口がりやすくなるように し遊んであげましょうか?」
「舐めたこと言ってんじゃねぇよ」
「おい、てめぇら、あいつもついでに たたんじまいな」
「へへ、殘念だったな。お頭、ついに切れちまったぜ」
「まぁ、おれたちに やられてしまった方が 無事におわるぜ」
「まぁ その顔だけは 傷つけないようにしてやんよ」
「誰か、ほどいてくれよ」
「そうですか、引かずに向かってくると!」
「ちょいと、およしよ!あんたじゃ 勝ち目ないよ」いつの間にか追いついてきたロビーナさんが 止めにる。
が、
「大丈夫、大丈夫。危険ですから ロビーナさんは 下がっていてください」
ミキが 言い終えると同時に
「いまだ」とナイフを振りかざした悪漢その一が ミキに向かってくる。
振りかざされたナイフを いつの間にか手にしていた扇で け止め 打ち払う。ついで 無手になった悪漢その一に、「草縛り」の魔法を放つ。続いて ロングソードを構えた悪漢その二が ミキの方へ向かってくる。「そんな長、宿の天井にもしあたりでもしたら どうするのです?」と一言。「あぁ?知ったこっちゃねぇよ」と言いつつも 上段から振り下ろそうとしていたロングソードを 右斜めに構え直す。その隙を狙って「草縛り」の魔法を放つ。足をとられた悪漢その二、そのまま床とご対面。
「さて、殘るはあなたたちお二人だけになってしまいましたね」
「おい、おめぇら そんな草の蔓(つる)みてぇの さっさとブチ切ってしまいな」
「それが お頭、切れねぇんですよぉ」
「あっしもさっきから やってるんですが そのたびに食い込んでくるんでさ」
「…」床とご対面の男は、どうやら気絶してしまった様子。
「どいつもこいつも、けねぇ」
「でもよ、頭」
「言い訳してんじゃねぇ、おめぇもなんか 考えろ!」
「へい」
(聞いてないぜ、こんなの。なんで 俺たちが押されてんだ。昨日までいた あの強面の連中がいねぇから楽勝だって話だったろ、なんでぇ、なんでぇ。おまけに あの見てぇなガキ…変わった魔法を使いやがる)
「どうですか?もう諦めて観念していただけませんか」
「うるせぇ、手下やられて諦めろだと!ほざくな」
「そっちが こねぇんなら こっちから行ってやる」というと頭は、剣を構える。
剣は、このあたりの傭兵がよく使うロングソード、ただ先ほどの部下が持っていたより 良さそうな武である。「萬に流れる水のよ、今この剣に宿りて 怨敵を撃つ!水刃(すいじん)剣!」
(うーん、剣に水を纏わせて 切れ味を増しますか。このあとは、水の斬撃でも飛ばすのでしょうか、頭だけあってやりますね。あっ!でもでも 斬撃が 壁にあたったりでもしたら…さて どうしましょう と考えながら 後ずさる)
「どうした?さっきまでの威勢は…」
「えっと、まさかと思いますが その技って 斬撃を飛ばしてきたり?」
「よく知ってんな、その通りよ」
(よし、壁の所まで近付けた、質化、準備完了)
「そうですか、でももう大丈夫」
「水刃剣・斬」
相手が 飛ばしてきた水の刃を 手にした扇で打ち払うミキ。
「味な真似を、ならば 水刃剣・斬 円月れうち!」
先ほどとは、違いいくつもの水の刃が 円狀に浮かぶ。
「すべて躱せるものなら躱してみやがれ」
(すべての刃を払うのは、無理でしょうか、ここは無難に…地)
一瞬で頭の懐へ飛び込み、當を食らわす。
「うっ!何を…し・た」
「もうしあなたとの打ち合いを楽しみたかったのですけど、宿に迷がかかりますからね」
頭の目にうつったのは、ひょうひょうとした顔に 澄んだ目をしたミキであった。
「はぁ、怖かったですぅ」
「あんたがいうな、なんだい 今のは。そんな細っちいで。あんた魔法を使えるだけじゃなくて剣の腕もあるんだねぇ」
「「「嬢ちゃん、すげぇな」」」
「おや、爺さんたち、サウラにノーザンは?」
「サウラは、町の守備隊を呼びに、ノーザンは もし誰か來たらいけないからとお前さんの店で留守番じゃ」
「まっさきに すっ飛んでいくとは、相変わらずじゃな」
「あとで、ノーザンにはお禮をいっとかなきゃね」
「それにしても 主、なかなかやりおうるのぉ、何かあれば加勢しようかと思うておったが」
「よしなって、爺さんじゃ、足手まといになるだけだよ」
「「「うんうん」」」
「おや、そういえば あと一人 いたはずなんですけど…」
「おぉ、こやつかの。」とり口で、のびてる悪漢その四
「ひとりだけ こそこそと逃げようとしてたからの、のしといたぞい、ほっほっほ」と笑いながら悪漢その四をむんずとつかみあげるマーフィである。
(マーフィさん すごいなぁ)と何故か心するミキである。
「さて、將さん、將さん。ベルニーニさん」
いまだ呆然としている將に聲をかける、何度目かの呼びかけに 我に返った將。
「あの…爭いごとは、先ほどまで暴れていた男たちは どこへ…」と周りを確かめる。
「ベルニーニさん、お怪我は ございませんか?」
「えっ、えぇ。はい、どこも怪我はしていません。もしや あなたが、お客さまが 助けてくださったんですか。ありがとうございます」そういうと 將、ベルニーニは ミキに近づく。
「えぇ、まぁ。」
「あの方々が 店に押しかけてきたのは、これが初めてじゃないんです。以前にも何度か。そしてうちへ泊まろうとやってきた方達を 脅しては よそにやっていたんです」
「それって、営業妨害じゃないですか。守備隊へは伝えたのですか?」
「はい、ですが 守備隊に伝えても 一向にあの人たちの橫暴は おさまらず、そうこうしてるうちに 次第に 客足も遠のいていってしまい。ですから 一昨日、お客さまが こちらの宿へお泊まりくださると聞いたときは うれしくってうれしくって…」と、いいながらミキの手を握るベルニーニ。
「そうだったのですか、もう大丈夫ですよ。いまのお話を伺って おおよその見當もつきましたし」
「ちょいと、およその見當がついたって どういうことなんだい?」
「あら、ロビーナおばさま」
「今気がついたのかい?それより あんたその手」
ミキの手をしっかり握って離さないベルニーニに そのことを告げる。
「はっ!すみません、すみません。わたしったらはしたない」
「ふっふっふ、他にもいるよ。みんな あんたんところが 大変だっていうんで 駆け付けてきたんだよ」
そう言いながら、マーフィ、ウェスティーニ、コンフィネル そしてイーサンを見やるロビーナである。
「町長(まちおさ)方、このたびは ご心配をおかけしました。そして 駆け付けてくださってありがとうございます。」
「何を言うんじゃ、お前さんは お前さんたちは わしらの孫みたいなものじゃ。のぉ、イーサン、コンフィネル」
「「そうじゃとも」」
「それよりもサウラさんが 遅くないですか?」と一向に姿をみせないサウラを気にかけるミキ。
「そうだねぇ、もう守備隊を連れて來てもいいころだろうに」
「…たくなんだっていうんだい、あのへなちょこ守備隊どもは」
と噂をすれば 姿を現すサウラである。
「ちょいと 聞いておくれよ、あたしゃ 今度という今度は町の守備隊のやつらに想を盡かしたよ」
と怒り心頭に話し始めるサウラであった…
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