《異世界落ちたら古龍と邪龍の戦いに巻き込まれまして・・・》第31話 路線変更?
路線変更?
「ちょいと 聞いておくれよ、あたしゃ 今度という今度は町の守備隊のやつらに想を盡かしたよ」
「近くの宿で ならず者が暴れてるんで どうにかしてくれって言いに行ったんだよ
そしたら 最初は 場所は何処だ?何人ぐらいで暴れてるんだって すぐにでも駆け付けようとしてたのさ。ところが ベルの宿だって言ったとたん…いきなりだよ。いきなり ダメだ、行っても無駄だ。諦めろ、そのうちしたら帰るだろうとか言って。まったくくそぶりもみせないんだよ」
「なんなんだよ、まったく。あんな弱なやつらに この町を任せてるって考えると腹が立つったらありゃしないよ」
(守備隊がかない…初めはこうとしてたってことは、腐ってはいないのでしょうか。でも ベルさんの宿だと聞いてくのを止めた。もしかして けないのか?守備隊への命令権は 各町の代にある…とするとやはり代が、言い含めて守備隊をかないようにしている?)などと考え込むミキ。
「まぁ そうお言いでないよ、守備隊の奴らも最初のうちは 駆け付けてきてくれてたじゃないさ。でも 何度か続くうちに…きっと何か事があるんだよ」
「いずれにしても町の安全を守ってくれるはずの守備隊がかないなんて…そんなことあっていいわけ?」
「さぁさぁ、この話は もうおしまい。考えても解らないことは ひとまずおいとく。それより さっきの奴らのことよ」
「あぁ、全員縛って、廄に投げ込んでおいたぞい」とマーフィ、イーサン、コンフィネルの爺さんズ。
「あの人たち、何か言いましたか?」
「いやいや、頭は お主にされて気絶したまま。他のものたちは、あのなんだ、草縛り?とかの魔法で縛られて気絶。まだ何にも聞けとらんよ」
「そうですか、では もうししたら 尋問してみましょうか、誰に頼まれたのか」
「素直に話すじゃろうかの?」
「たぶん、話すんじゃないでしょうか…えぇ きっと誠心誠意(ちからづく)お願いすれば 話してくださいますよ」
「何か 違う意味のような気がするのじゃが」
「あはは」と笑ってごまかすミキである。
◇
結果、悪漢どもは、素直に話してくれたようで
「はい、代と代の長男です」良いながら その顔は 赤く晴れ上がり 中から冷や汗が
「で、その理由って言うのが…」
なんでも 代の長男が 町へ出たとき ベルニーニが買いをしている所を見かけたらしい。で、ベルニーニに 見とれていたその長男、運悪く 泥濘(ぬかるみ)に 足をとられた ずっこけたそうで…それを 不憫に思ったベルニーニが 宿まで案して 汚れを落とせるよう手をさしのべたそうである。
「まぁ 普通、そこまで してもらったら 勘違い野郎じゃなくても うっかり惚れてしまうわな。うちの誰かさんは、自己評価が低いのか 謙遜が過ぎるのか そんな間違い起こりそうにないけどな」というのは、町の調査から戻ってきて報告を済ませたヒサである。
「ほんと、ほんと。それで どれだけの麗しき淑たちが 泣きを見ていることか」とタケ。
「えっと、つまり宿の襲撃は、オヤジの代の命令もあるけど、その馬鹿息子のせいでもあるって理由わけですか」
「あぁ~、まぁ そうなるかな」
「それと もう一つ。こちらは ハッキリとした確証がないんだけどな…この町が 皇都への侵を防ぐ最終防衛ラインだって話、覚えてるかい?」
「えぇ、町へるときに、『まぁ、この皇都側の壁は 萬が一敵襲があったときに 皇都への賊の進行を防ぐ為、また遅らせる為もあるので この大きさなんですよ』って話ですよね」
「あ、あぁ。その通りなんだが…相変わらずすんげぇ記憶力だな」
「たいしたことありません。覚えるだけなら お猿にでも出來ます、なんてこと言ったら お猿さんに怒られますかね」
「まぁ、その『おさる』ってのが なんだかしらねぇけど。おっと話がそれてるな。でな、この町、つまりヴェスドラッヘの町を混させてしまえば 防衛力も下がろうってもんだろう?」
「まさか、そんなことを?」
「あぁ、これは 軍事力を使わないから金もさほどかからねぇ、おまけに長期的に仕掛けてくるもんだから気付いた時には…な。」
「なんてことを考えてるんでしょう。仕掛けてくる方は、経済的でいいかもしれませんが 仕掛けられてる方は?そして ヴェスドラッヘの町は どうなるっていうんですか」
言いながら、握った拳はぶるぶると震えており、周囲の溫度が 下がっていく。
「言葉は、溫和おとなしめだけど、ダンナ。かなり怒ってる」
「だな」
「いいでしょう、仕掛けられたままっていうのは 正直、面白いものじゃありません。ふっ・ふふ」
「こぇ~よ、ダンナ」
「だな」
「いや、止めてくれよ、アニキ」
そう言い合っている二人をあとに、集まってくれた皆が待っているであろう食堂へと向かうミキであった。
◇
ミキたちは、調査して解ったことを 集まってくれた皆に話し代に対して解任を訴える旨を説明した。また町長(まちおさ)たちも 代の館への訪問に同行することを快諾してくれた。
「ということで、決行は 明日のお晝前、解任要求は 町長まちおさ全員の署名と第三者の立ち會いのもとで立します。あとは その署名を皇都の役人に手渡せば、いいだけです。今回この町のトップである代が不正、また犯罪に荷擔したことで 皇都の役人への提出が必要になります。あとは 皇都の役人が來て取り調べを行うまで代の分は 更迭されることになり彼は 一切の命令・及び要求権を使えなくなります。」しかし、ミキの説明をけた町長(まちおさ)たちの顔はすぐれない。
「窮鼠貓を噛むって言いますが、激高した代が 何かをしでかすかもしれませんな」
「そうだなぁ、それに対しての対策は?」
「はい、ヒサさん、タケさん。よろしいですか?」
「「もちろんだ」」
「こちらのお二方は、元傭兵グループ『雷鳴の響鬼』のリーダとサブ・リーダーです。縁あってわたくしの護衛兼従業員をお引きけくださっています」
「「「「「…」」」」」みなさん 口をあんぐりとしたまま 固まっちゃいましたね。そして 飛び上がって喜んだのは
「ただ者じゃぁ、ないって思ってたけど そっかそっか。あんたたち あの『雷鳴の響鬼』のお二人さんだったんだね。じゃぁ、代とこのへなちょこ共くらいじゃ びくともしないねぇ。おまけに ミキちゃんは 魔法も使えるってことだし、うんうん」とこちらは上機嫌のロビーナである。
「あのぉ、わたしにサインをいただけませんか?」とは、町長まちおさの一人ノーザンである。
なるほど、ミキは知らなかったが 『雷鳴の響鬼』の名前は、ほんと皇國中にしれわたっているようである。ただ その評判がと見た目の兇悪と 一致せず二人は、何処へ行っても自由に行できるのである。まぁ、弱きを助け強きをくじくヒーローの見た目が、見た目だけなら山賊ですら 逃げ出すような強面なのだからしかたがない。とはいえ、今の二人は きちんとなりを整え、クラリッサ仕込みの禮儀作法をにつけているため初見では 解りにくいようである。
「じゃあ、今日は 本當にありがとうございました。ご足労いただきありがとうございました。では 明日よろしくお願い申し上げます。」
「何言ってんだよぉ。ホントならあたしたちが さっさとやらなきゃいけなかったんだ。それに あんな証拠件、あたしたちじゃ とうてい手にれられないよ」
「「じゃな」」
「ロビーなの言う通りじゃて、歳だけくってなんの役にもたてんようじゃ町長(まちおさ)失格じゃ」
「そんなことない。そんなことないです。町長(まちおさ)さんたちは、他に大切なお仕事がたくさんあります。そして この町が いままでこうして保っていたのも町長(まちおさ)さんたちが 町のみんなを出來うる限り守っていたからです、すみません。でも 僕は 心からそう思っています」
「あぁ、まぁ とにかくじゃ 明日は がんばろうぞ!」
「「「「「「「「「おぉ!」」」」」」」」」
◇
翌日、お晝前。ここは 件くだんの代が住む館である。その前に集結した町長(まちおさ)五人を含むミキ、ヒサ、タケ、そして真偽の二人の十名である。
何事かと駆け付ける代館の門番と門番に呼ばれて出てきた おそらくは 代館の執事。
「これはこれは、町長まちおさの皆さま方、今日は いったい如何様なご用件でしょう。それに 見慣れぬ方もいらっしゃいますな?」と、何気に ミキたちを窺う執事。
「はい、今日はお代様に 折りってご相談が ございまして立ち寄らせていただきました。お代様は いらっしゃいますでしょうか?」
「しばし お待ちを。お代様のご都合を確かめてまいりますので」
◇
「なに?ヴェスドラッヘの町長たちが 館の前に?」
「はい、さようで。」
「して用向きは、なんと申しておる」
「はい、お代様への相談事としか…」
「うーん、まぁ どうせ町の守備隊がかなかったとか、治安が悪くなったとか そんなことであろうが……よし、通せ。そうじゃな…謁見の間に通せ」
代は、謁見の間などと言ったがたかだか地方の町代の館にそんなご立派なものがある訳もなくただの応接間である。
◇
「さて 皆の者、表をあげい。ふむ 見知らぬ顔がおるが…そちは 何の権限があってこの場におるのじゃ?」
「はっ!お代様、このものは これより 我らの相談事をお聞き屆け頂く際の証人に ございまする」
「で、あるか。して そちらのさも兇悪そうな面構えの者どもは?」
「はっ!先のものの護衛にて…」
「…まぁ よかろう(何の用向きかは 解らぬがこの場には 私兵も忍ばせておる。仮に荒事になったとしても問題なかろう、あのような者、二人で同行できる筈もなかろうて)」
「では、要件を聞こうかの?相談事等と申しておるが どうせ昨日の守備隊の怠慢などを訴えに來ただけであろう。どれ 言ってみるが良い」
「はっ、では お言葉に甘えまして…」
「その前に、お代様にお尋ねしたいことが ございますのじゃ。およそ二年ほど前に あなたさまは、この町の代として就任なされたわけですがの」
「うむ、二年も経つかの。その通りじゃ。そちも その場におったであろうが」
「はい、その通りでございますじゃ。その時にですな、お代様は、代として著任する旨を記した『辭令』を わたくしどもにお見せ頂いたか否やをお聞かせ願いたいのですじゃ」
(はっ、何を言い出すかと思えば そんな昔のことを蒸し返す…何故じゃ『辭令』なんぞ そんなものわしも見たことないわ)
「『辭令』のぉ、はて そのようなものをわしは そなたらに披したかの。そもそも『辭令』とは 貴族であるわしに ありがたくも主君より預かり頂いたもの。それを 町長まちおさとは言え、一庶民であるそなたらに 見せる必要などありはせんのじゃ」
「さようで ございますか。いえ、皇都周辺の他の町や村では 代として就任されるときに 我らのようなものにも就任の祝儀代わりとして(ここは、町長の作り話である)、お披目いただけると聞き及びましてな」
「うむ、そうであったか。斯様かようなことが 祝儀代わりになるとは 安いものじゃの。まぁ よいわ。して そろそろ 本題に移らぬか」
「はっ!実を申しますと お代様には 大変申し上げにくいことなのでありますが、昨日、わたくしめが代表をつとめております、中央區にて とある宿に 暴漢が押しりまして その際、宿の備品等を破壊し、また當宿の將に対して さっさと宿を畳んでしまえなどの暴言を吐き幸いにしてこちらにおられる方々の協力を得まして取り押さえることが出來、宿および將は 難を逃れることができもうした。この件につきまして その場におりました こちらの者が 名をサウラと申しますが、守備隊に危急の知らせを告げたにもかかわらず 一向に対処して頂けなかったのですじゃ」
「なんと、我が町の守備隊員にそのような不屆き者がいると申すか!(なるほど、彼奴らめが 失敗しおたか)、して その件の宿とは?」
「はい、ベルニーニと申す者がいとなんでおる宿にてございますじゃ。」
(おお、倅せがれがもうしておった宿の將の事じゃな、無禮にも一庶民の分際で我が倅の申し出を斷りおったおなごのことじゃな)
「そうであったか、確か その宿においては 何度となく被害の屆けが 守備隊の方にっておるそうじゃの?その度に 守備隊員がかけつけておったと聞き及んでおるのじゃが、それが 昨日は かなかったということで 間違いないかの」
「いえ、昨日だけでは ありません。この三ヶ月ほどは、一度も守備隊が 來てくださることはございませんでした」
(それもその通りじゃ、何せ 我が倅の申し出を斷ったのじゃ。思う存分 困ればよいのじゃ)
とことん腐りきった人である。
(しかし あの馬鹿息子、いい加減諦めればよいものを、將を困らせて その弱ったところにつけ込もうなど、まどろっこしい)
「さようか、では この件については 守備隊にキツク申しておくことにする。じゃが その將の方に問題はないのか?聞けば 分あるものに際を申し込まれたにもかかわらず、何の敬意をはらうこともなく斷ったと聞いておるのじゃがの、どうせ その暴漢共もすげなくされた 腹いせに押しったのではないのか、宿を営んでおると言えば聞こえは よいが ふん、寂れ果てた場末の宿であろう」
ピキっ!その時、一瞬にしてそのばの空気が凍てついた。そう 文字通り凍てついたのである。そして 代の周りには 氷の結晶が…
「ダンナ!」、「若旦那、押さえてくだせぇ!」
「な・なんじゃ 何事じゃ、今すぐそこな無禮者をつまみだせ」と 本人は言ってるつもりなのだが、モゴモゴ、モゴモゴとしか聞こえず、控えの間とこの部屋を繋ぐ扉も凍てついてしまい開くことはなかったのである。
「あぁ、やめやめ、もうね。ほんと呆れてしまってモノが言えないってこのことですよ。こんな茶番、いますぐ止めです。終わりです。」
「ヒサさん、タケさんもすみません。町長のみなさんも ほんとごめんなさい。でも もう耐えられない。なんですか!あの素晴らしい宿、そして將の応対。味しい料理。客の心に安らぎと癒しを與えるそんな素敵な宿に対して…場末の宿だって?寂れ果てた宿だって!」
「ふざけてんじゃないよ!全部、てめぇんところの馬鹿息子がやったことだろうが、あとあの押しったにぃちゃんたちな、全部、まるっと吐いてくれたよ、おい、代!てめぇ 言うに事欠いて しらばっくれてんじゃないよ!てめぇとてめぇの倅が仕組んだことだろうよ。おまけに ベルニーニさんところの支援金、ビタ一文、払ってないじゃないか。確かに距離は ギリギリかもしれない。けどな、他の所へは 先代の代がちゃんと支援を行ったって証拠もあがってんだよ!!」
「お・おまっ、おまっ に・にゃにを い・いいってる」
「ダンナ、そろそろ落ち著いてくだせぇ」
まわりの人もびっくりです。普段とても丁寧に 穏やかに話をしているミキ。そのミキのべらんめぇな口調に 一同ドンビキというよりも 陣は?あれ、なんか頬を染めてる?なんで、そして お爺ちゃんズは、あっ、こちらは 呆然としていますね。
「ふぅ~、さて代さん、いや この代を騙ったならず者ですか、あなたは 知らなかったようですから教えて差し上げましょう。この皇國では、代が新しく赴任・就任する場合 『町長まちおさや村長むらおさが 存在する町や村の場合 そこに赴任するものは、民との折衝をスムーズに行うためにその町、村の代表者及び代表者によって選出された數名のものに挨拶を行う際に必ず辭令書を持參、雙方確認を行うこと』っていう皇國法があるんです。」
これには、代(騙?)も驚いたようで、
「知らん、知らんぞ。わしは、そのような『辭令』など見たこともない。わしは、そのようなこと一切知らされておらん。貴様、そのような作り話をしおって わしを誑かすつもりじゃな」
「そもそも、なんの権限があって わしに対してそのような暴言を吐いておる、えぇい 曲者じゃ。出逢え、であえ~!引っ捕らえろ……いや 斬ってもかまわん」
「やっぱ こうなったか」とヒサ
「やっぱ こうなったな」とタケ
と言う訳で、次回に続きます
平和の守護者(書籍版タイトル:創世のエブリオット・シード)
時は2010年。 第二次世界大戦末期に現れた『ES能力者』により、“本來”の歴史から大きく道を外れた世界。“本來”の世界から、異なる世界に変わってしまった世界。 人でありながら、人ならざる者とも呼ばれる『ES能力者』は、徐々にその數を増やしつつあった。世界各國で『ES能力者』の発掘、育成、保有が行われ、軍事バランスを大きく変動させていく。 そんな中、『空を飛びたい』と願う以外は普通の、一人の少年がいた。 だが、中學校生活も終わりに差し掛かった頃、國民の義務である『ES適性検査』を受けたことで“普通”の道から外れることとなる。 夢を追いかけ、様々な人々と出會い、時には笑い、時には爭う。 これは、“本來”は普通の世界で普通の人生を歩むはずだった少年――河原崎博孝の、普通ではなくなってしまった世界での道を歩む物語。 ※現実の歴史を辿っていたら、途中で現実とは異なる世界観へと変貌した現代ファンタジーです。ギャグとシリアスを半々ぐらいで描いていければと思います。 ※2015/5/30 訓練校編終了 2015/5/31 正規部隊編開始 2016/11/21 本編完結 ※「創世のエブリオット・シード 平和の守護者」というタイトルで書籍化いたしました。2015年2月28日より1巻が発売中です。 本編完結いたしました。 ご感想やご指摘、レビューや評価をいただきましてありがとうございました。
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