《異世界落ちたら古龍と邪龍の戦いに巻き込まれまして・・・》第33話 これでいいのだ!
これでいいのだ!
「ヒサさんとタケさんには、悪いことしちゃったかな?」とし思ってみたりするミキである。
(まぁ、普通の時代劇のノリなら、あそこで、『こちらにおわすお方をどなたと心得る』とか、『これにおわすは、上様の…あっ!ここは、僕の場合だと竜皇國陛下の…』とかってやっちゃうんだろうけど。まぁ ヒサさん、タケさんの方がきっと有名だろうしね。それに どうもまだ 表だって僕の名前は出さない方が良さそうな気がするんだよね。これから向かう『モンド・グラーナ』が なんとなくキナ臭いじがしてきたよ。なので これでいいのだ!)
と、々と回想しつつ歩いて行くとベルニーニの宿に到著する。ベルニーニの宿では、晝前から町長(まちおさ)たちと出かけたミキを心配して將自らが宿の前で待っていた。
「お帰りなさいまし、みなさん、ミキさん。よくご無事でお戻りになりました」
「あっ、將さん、ただいま~。」とミキ。
「「ベルちゃん」、「ベルさん」、「「「うんうん」」」
皆が笑顔で、宿の前のベルニーニ応える。
「ベルや、すべて解決したぞ。もう宿のことも心配ない、こちらのミキ殿、そして なんとミキ殿の店の従業員であるあの二人は、かつての『雷鳴の響鬼』のお二人じゃったんじゃよ」
「まぁ、そんなご高名な方が…うちのような宿のために」と驚きをわにするベルニーニ。
「そんな將さん、この宿のことを自分で卑下するようなこと言っちゃいけません」とミキ。
「將さんも、妹ちゃんもお二人ともとっても素晴らしい接客でしたし、料理もすっごく味しかったです。將が 量よしってのもありますけど、宿だって すっごく落ち著く 居心地のいい作りですしね。」
「そんな、ありがとうございます」
◇
結局、ベルニーニには 出かける前に事のあらましを おおざっぱではあったが話して出かけたのである。まぁ そうでないと一連の事件?の経緯やなんで、町長たちが そろい踏みで出かけるのか。とかね。で、ミキたち三人は、その町長たちの護衛としてついて行くじで話を通していたのである。
◇
ところ変わって、ベルニーニの宿の食堂にて…
和気藹々と食事をとりつつ、代館でのやりとりやあらましを話ている様子。
「いやぁ、この歳まで生きてきて 今日ほど面白いものを見せて貰ったことはないのぉ」
「そうだよねぇ、あのミキちゃんの臺詞」
「たしか……」
「『こちらにおわすお二方をなんと心得る、このお二方は、…』でしたっけ」
「ま・まぁ それはもういいじゃないですか」「そうですぜ、冷やかしなしで おねがいしやす」
「でも、ほんとうにお二人とも素晴らしいお方だったのですね」とベルニーニ。
「まぁ、顔は 強面ですけどね」
「だんなぁ~、そりゃ言いッこなしですぜ」「ダンナ…」
「でも、そんな有名な方々が どうしてミキちゃんの店の従業員?、護衛?をするようになったのかしら」
「うむ、それは わしも聞いてみたかったのじゃ」
「それはですね~」
「それは?」
「まぁ、なんだ。俺たちの傭兵仲間は、みんな なじみっつぅか、同じ村で、兄弟みたいにそだってたんだけど。もともと 傭兵になるってのは そんな強く考えてなくってなぁ。いまここにいないけど そいつは 村を出る前からの夢だった料理人になるって想いを皇都の食堂で 葉えることが出來てよ。んで、もう一人は、同じ食堂で ウェイター?にスカウトされたんだよ。んで、俺たち二人は どうしよっかって思ってたらこっちのミキ殿にスカウトされたってわけだな」
「まぁ 傭兵なんてのは いつまでも続けられるもんじゃないしな、それに 今回の奴等みたいに 食うに困っちまって 人の道を外れるようなことに手ぇ出しちまうこともあるしな」
「でも、まぁ そこは 傭兵だからっていうよりもその人、その人の資質?考えなんてのもあるって思いますしね。実際、皇都で出逢ったときの…ぷぷ(笑)」
「いま思い出しても すごいありさまでしたものね。あの格好。著てるものはもうボロボロでしたし、顔とかも土埃とかで ほんと見られたものじゃなかったですよね」
「そりゃないですぜ」
「まぁ それでも目だけは…を失ってなかったですよ。だからお願いしたんです。僕の護衛を、心配の母さまにしでも安心して貰うために」
「まぁ、なんていうか ダンナはすっげぇお人好しってこってす」
「そうだな。おれたちゃ、そのお人好しの旦那に拾われたみてぇなもんだ」
「そんな、拾っただなんて。第一、そんな大きなものを拾うような力、このか弱い僕には ありませんよ」
「!!!」
それまで うんうんって聞いてた他のメンバーだが ミキのか弱い発言に 何処が?と思ったのである。
「あれ、みんな どうしちゃったのです?」
ここにいるメンバーは ベルニーニ以外、皆そろって 今日のミキの戦いぶりを目にしたものばかりである。そして あのぶっ飛んだ口調、一瞬にして敵を屠ってしまう技、その何処が力がないと言うのであろうかと…。
「はぁ~」とため息一つつき
「そう言えば、ミキちゃんたちは いつまでこの町にいるの」とロビーナ。
「はい、名殘は惜しいのですが、明後日には旅立とうって思っています」
「そっか、それじゃ 今日が みんなそろっての最後の宴だね」
「そうなるのかの、わしももうしミキ殿と話してみたかったぞい」
「「わたしたちもね」」
「「「そうだな」」」
「みなさん…僕も 々ありましたけど この町の人のあったかさを知ることが出來てすっごく すっごく良かったです。困ってる人を見過ごさない、みんなで 助け合うって。それが知れたことが ほんと嬉しいです」
「「「ミキちゃん」」」
「「「「ミキ殿」」」」
「「だんな」」
「えへへ、さぁ みなさん、今日は じゃんじゃん飲みましょう」
「あっ!だんなは これな」とヒサに渡されたのは ライト・エールである。
「そんなぁ、僕だって本飲みたかったのに」
「えっと、ミキさまって おいくつなんでしょう?」
「今年で、十五だっけかな」
「もうすぐ十六ですよぉ」
「あの失禮ですが、十五なら人を迎えられているのでは?」
「あぁ、そうなんだけどな。こいつの保護者殿から十六になるまでは 絶対に飲ますでないと仰せつかっているのでな」
「うぅ~、母さまめ!」
「ずいぶんとお子さま想いのお母さまでいらっしゃるのですね」とベルニーニ。
「そういうことでしたらお勧めできませんわね」
「うぅ、ベルさんまで。酷いですよ」
そう、代館から戻ってきたミキは、ベルニーニからこれからは 將さんじゃなくて「ベル」と呼んでくださいと言われたのである。
まぁ、実際のところベルニーニも十八、か十九辺りの年頃。宿を一手に預かるとしては 落ち著いた雰囲気を醸し出しているが それでもまだ若い空である。それを 同い年くらいのミキから將さん呼ばわりされると一気に老け込んだ気がして気分が沈んでしまうということである。
「はいはい、そう悄気しょげてないで、どんどん飲んで、どんどんお食べ。明後日にゃぁ ベルの料理もたべられなくなるんだし」
「そう・ですね。うん、よーしいっぱい食べていっぱい騒ぎましょう」
その夜、ヴェスドラッヘの中央からし離れたベルニーニの店からは 遅くまで笑い聲が絶えなかったという。
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