《と遊ぼうとしたら異世界に飛ばされた件について》47話目 シャル、街へ行く
私は、とても幸運でした。
私は昔奴隷でした。優しい両親と共に村で暮らしていただけなのに、私は捕まり、暗い部屋に押し込められ、本來ならば一生消えない傷を負わされ、いずれみ者として死ぬ運命でした。い私には漠然としたことしかわかりませんでしたが、とても、とても恐ろしかったことだけは憶えています。
周りにいる人間はでも見るような目で私のことを見ていました。誰かに助けてしいのに、周りは知らない人だらけで、誰も私のことなど気にもせず、救いの手の代わりに向けられたのはいやらしい視線だけでした。
たまたま街中まちなかでエルフのを見かけた時、私はとても喜びました。これで助かるのだと、あの人に助けてもらえるのだと、私は喜びました。ですがそれは間違いでした。
彼の目は、死んでいました。
その目には何も映っておらず、何もかもを諦めており、絶のだけがそこにありました。
私は恐怖しました。
いつか私も、ああいう風になるのだと、そう誰かに言われた気がしたのです。
逃げなきゃ。ここから逃げ出さなきゃ。人間たちのところから遠くへ行かなきゃ。
魔の森にいるという魔法使いのことを思い出したのも、たまたま魔の森の近くにある街に來ていたことも、師匠が私のことを助けてくれたのも、ただただ私は運が良かっただけでした。それから私の生活は一変しました。誰からも叩かれることも、怒鳴られることも、水をかけられることもなくなりました。
私がしくてたまらなかった救いの手を差しべてくれた師匠は、その代わりに私のことを優しく抱きしめてくれて、私のことを思ってくれているからこそ厳しく叱ってくれて、暖かい食事を與えてくれました。
夢の、ようです。
私には師匠に返せるものなんて一つもなく、そのことに焦って『私のを使ってください』と言い出したりしたけど、師匠はそんなことしませんでした。
……今思えば、その時手を出してしかった気もします。
その後私は師匠から『教育』というものをけ、自分が何をしたのかを理解して大いに恥じました。そしてその言葉の意味を理解したからこそ、恐ろしくなりました。あの人間たちは私のを『使う』つもりで奴隷にしたのだと、理解したからです。
改めて恐怖し、が震えている私を見かねて師匠はそっと抱きしめて私の背中を優しく叩いてくれました。その時私は、この人の子を産むのだと、そう思いました。何故そう思ったのかはわかりません。でも、それが自然なことに思えました。
何も持たない私に魔法も、戦うも、住む場所も、食事も、親のように無償のも、未來への希も、何もかも師匠は與えてくれました。だから私も、師匠に恩を返す。私が今生きているのも、味しいご飯を食べているのも、暖かい場所で寢られるのも、幸せな気持ちで明日を迎えられるのも、全て師匠のおかげだから。
今の私には、大好きな師匠と、目の離せないドラ助がいる。鈍い師匠は私の気持ちに気付いていないけど、今はまだそれでもいい。私も師匠も死なないのだから、いつまででも一緒に居られる。
いつか私の気持ちに気付いてくれれば、それでいい。私はそう思っていた。
その日私は無理を言って街へ行くことを師匠に許可させました。
監視あの魔法は……、使われてないみたいね。
師匠が監視していないのを確認してから街へと行きます。凄い力を持っているのに心配な師匠は私のことを心配してばかりです。私が初めて森の中に食料を取ってきた時など、私が帰ってくるとあからさまにほっとした顔をしていました。
師匠ぐらいに強いという護衛が一いるだけでも過剰だというのに、それを山ほど持たされた時には『どれだけ心配なの』と呆れたものでした。
「それじゃあ、姿を変えないと」
これから私は人間の街へ向かうので、エルフということが知られればそれだけで大勢から狙われてしまいます。なのでエルフ特有の長い耳を、すら誤魔化す幻影を用いて人間の耳に見せかけます。
本當だったら師匠がかけてくれれば済む話なのですが、『何かあった時に幻影が解けてしまい、自でかけなおす必要が出るかもしれない』と言い張って私が使えるようになるまで許可してくれませんでした。
師匠がくれたお金を魔法で仕舞い、こっそり持ってきた森で採れる果実をリュックにれて街へと向かいます。森の果実は栄養が富で、魔の素材に比べれば容易に取ってこれることから、それなりの値段でそれなりの量が流通しているそうです。私が今日しいを買うのに師匠がくれたお金だけでは足りないかもしれないので、師匠には緒で果実を持ってきました。
森を抜け、街が見え、門へ向けて歩いていく。たまにすれ違う人たちは私を見て振り返ったりしていますが、エルフとばれている様子はないので大丈夫でしょう。
「こんにちわ! 街にりたいんですけど大丈夫ですか?」
門の近くにいた衛兵に私はそう問いかけます。
「あ、ああ。街にるなら銀貨一枚だ」
彼は何故か視線を泳がせながらそう答えてくれました。なんだかジロジロと見られている気もしますが、いやらしいものではないので我慢して、ポケットから出すふりをしながら銀貨を魔法で取り出して彼に渡します。
「それじゃあ、お勤め頑張ってくださいね!」
「は、はい!」
渡した後に無言で行くのも気が引け、とはいっても何と聲をかければよいのかわからなかったので適當に労ねぎらいの言葉をかけましたが、彼の反応からして失敗ではないようです。直立不でこちらに敬禮をしている彼に見送られて街にります。あの時からは十年も経っているせいか、街の印象が大分だいぶ変わりました。
かつては何もかも、誰も彼もが恐ろしかったですが、今では特に何の慨もありません。
何をされるかわからず、とても恐かった道行く人々よりも、何をしでかすかわからないドラ助の方が怖いです。巨大で不気味だった建よりも、師匠が作った研究室の方が余程危ないに溢れていると斷言できます。
こんな風に思えるのも師匠のおかげなのかな。
私は心の中で師匠に謝しつつ、まずは果実を換金できる場所を探すことにしました。
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