と遊ぼうとしたら異世界に飛ばされた件について》140話目 歓迎

「そんじゃあ次の大陸に行くか」

獣人の観察をそれなりに済ませ、ドラゴンがこの大陸には居ないことも確認したので次の大陸へと向かうことにする。え? 現地住民との心溫まるエピソードは無かったのかって? 普通の旅人を裝って挨拶をしたら『オレサマ オマエ マルカジリ』って言われたエピソードならあるよ? おかしいなあ、まだ翻訳魔法を使ってないのにワイバーンの言葉が伝わってきたぞ?

その辺りも含めて千年後に期待することにして、次の大陸はマシであることを願いつつ飛行魔法で空を駆ける。風を切る覚を覚えながら飛んでいたが、ふとこれ・・が出來なくなったドラ助に思いを馳せてしまう。これまで出來て當然だったことが出來なくなる恐怖はどれくらいのものかと思い胃がしだけ痛くなったが、ちやほやされて緩み切った顔を思い出すとそれも吹き飛んだ。うん、罪悪とかそういったは覚えない方向でいこう。

極めて無駄な思考を繰り広げているとあっという間に目的地にたどり著いた。前回の反省を生かして平野に著地して周囲の気配を確認するが、どうやらすぐ近くには大きな気配は無いようだ。

「特に目立つ建も無し、っと。知的生命が何もいないってオチは勘弁してほしいが……」

誰も聞いていない獨り言が勝手に口をつく。一人でいる時間が最近多いせいか、めっきり獨り言が多くなってしまった。いかんな、しばらく休養を取って彼らと一緒に居るべきか。『獨り言が増えたな』と言いそうになったのを咄嗟に抑えてそう考えながら走っていると、前方に山岳地帯が見えてきた。

まだまだ遠目に確認できる程度だが、數秒後には到達するだろう。改めて思うがやっぱりこの速度は頭おかしいわ。いつもであれば山を飛び越える勢いで跳躍するところであり、今回もそうしようと思い切り地面を踏み込んだその時――。

「っ……!」

つんのめりそうになるのを必死にこらえて勢を保つ。ブレーキの際に地面と足のる音と砂埃が周囲に盛大に広がるが、そのような些事に意識を向ける余裕も無い。山岳の中腹か山頂のあたり、そこに確かにソレ・・は居る。ソレ・・はこちらに意識を向けている。

いや、それら・・・と言った方が正しい。

無數の視線、無數の警戒、否、威嚇をじる。『これより先に踏みる事は許さぬ』『ヒト如きが調子に乗るな』と、怒り、侮蔑、殺意が混じったがぶつけられる。常人ならばその気・をじ取っただけで竦み上がり、腰を抜かして逃げ帰るか、下手をすれば恐怖で死んでしまうだろう。それは最早単なる嫌な気配などというものではなく、明確な死を予させるものだ。そして今、それがただ一人、俺だけに向けられている。

だがそんな事はどうでもいい。

「見つけたぞ……! ドラゴン……!」

俺は口の端を釣り上げ、そう呟いた。

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